(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年9月23日14時10分
瀬戸内海西部 興居島
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボートマギージョー |
総トン数 |
6.6トン |
全長 |
11.06メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
264キロワット |
3 事実の経過
マギージョーは、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人等8人を同乗させ、釣りなどを兼ねたクルージングの目的で、船首1.0メートル船尾1.7メートルの喫水をもって、平成14年9月23日11時45分愛媛県松山港三津浜を発し、高浜瀬戸を北上して同県北条港沖に至って釣りなどを行って昼食後、同瀬戸を引き返し松山港九十九島沖にレジャーポイントを変えて錨泊し、さらに14時ころ興居島西側に位置する鷲ケ巣湾にレジャーポイントを変えることとし、反時計回りに同島北側を西行する予定で発進した。
ところで、A受審人は、それまで父親に同乗して興居島及び由利島周辺水域にしばしばクルージングに出かけ、その都度同人から同水域の水路事情について口頭で指導を受け、例えば興居島北東部琴引鼻沖合には干潮時などに露出する干出岩を含む険礁域が約200メートル沖まで延出していることなどを教えられ、また自らも操船して同鼻沖を航行した際にその存在を認めていた。そして父親から険礁域付近を航行する際には、レーダー等の航海機器を備えていないので、船位の確認を目測に頼らざるを得ないことから、目測による誤差を考慮して暗岩や険礁域など航行に支障となるところからは十分に離した針路の選定を行うように教えられていた。
ところが、A受審人は、高浜瀬戸を北上して興居島北東端を付け回して同島北岸沿いに西行するにあたり、14時07分頭埼灯台から049度(真方位、以下同じ。)320メートルの地点で、同島に接航しさらに琴引鼻を付け回そうとする余り、目測による離岸距離の誤差を考慮して同鼻を十分に離した針路の選定を行うことなく、針路を269度に定めた。その結果、同鼻沖の険礁域北端付近に向首する状況となったが、これに気付かず、機関を港内全速力にかけ16.0ノットの速力で手動操舵により進行し、14時10分マギージョーは、頭埼灯台から280度1,100メートルの地点において、琴引鼻から延出した険礁域北端付近の暗岩に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はなく、潮候は下げ潮の中央期で、視界は良好であった。
乗揚の結果、マギージョーは、右舷アウトドライブユニットの脱落及び機関室浸水による機関の濡損を生じたが、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、愛媛県興居島北岸沖合において、クルージングを兼ねて同島東側から反時計回りに同島西側に位置する鷲ケ巣湾のレジャーポイントに移動する際、針路の選定が不適切で、同島北側の琴引鼻に近づき過ぎて同鼻沖の険礁域北端付近の暗岩に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、愛媛県興居島北岸沖合において、クルージングを兼ねて同島東側から反時計回りに同島西側に位置する鷲ケ巣湾のレジャーポイントに移動する場合、同島北東部琴引鼻沖には険礁域が約200メートル沖まで延出しており、レーダー等の航海機器もなく船位の確認を目測に頼らざるを得なかったから、目測による琴引鼻からの離岸距離の誤差を考慮して同鼻を十分に離した針路の選定を行うべき注意義務があった。しかし、同人は、興居島に接航しさらに琴引鼻を付け回そうとする余り、同鼻を十分に離した針路の選定を行わなかった職務上の過失により、同険礁域北端付近の暗岩に向け進行して乗揚を招き、右舷アウトドライブユニットの脱落及び機関室浸水による機関濡損を生じさせるに至った。