(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年11月25日19時15分
宮崎県目井津漁港
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボート喜福丸 |
プレジャーボート祥陽丸 |
総トン数 |
1.80トン |
1.30トン |
登録長 |
6.80メートル |
6.66メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
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26キロワット |
漁船法馬力数 |
50 |
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3 事実の経過
喜福丸は、一本釣り漁船として登録されたFRP製プレジャーボートで、平成11年6月17日交付の一級小型船舶操縦士免状を有するA受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.1メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年11月25日15時00分宮崎県目井津漁港を発し、同漁港南東方約3海里沖合にある水島付近の釣り場へ向かった。
ところで、目井津漁港は、東方の日向灘に面して、築造初期の防波堤が水揚げふ頭東端から北北東方向へ長さ約200メートルに渡り、港奥の船溜まりを囲うように構築されているうえ、同防波堤先端に設置されている目井津港新南防波堤灯台(以下、防波堤灯台については衝突地点の記載を除き「目井津港」を省略する。)の北方300メートル付近に、南東から北西方向へ延びる長さ約600メートルの北沖防波堤が、東方約400メートル付近に、北北東から南南西方向へ延びる長さ約700メートルの南沖防波堤がそれぞれ築堤されており、北沖防波堤東端と南沖防波堤北端間の北北東方へ開けた出入り口(以下「防波堤出入り口」という。)には、北沖防波堤灯台及び南沖防波堤灯台が設置されていることから、夜間における漁船などの主な出入り口となっているが、喜福丸及び同船と同じような大きさの船舶が、東方ないし南方から同出入り口に入航するときには、南沖防波堤の高さが水面から約6メートルあることから、同防波堤の陰となり、その内側を北上する他船を視認できない状況であった。
15時15分A受審人は、前示釣り場に到着して釣りを行い、釣果を獲たのち、19時00分ごろ発航地へ向けて帰途に就いたところ、既に日没時刻が過ぎて暗くなっていたことから、コズミ瀬等の浅瀬が存在するうえ、灯台が設置されていない南沖防波堤南端部を経由して帰航することを避け、前示防波堤出入り口へ向けて北上した。
19時07分わずか前A受審人は、鞍埼灯台から290度(真方位、以下同じ。)1,760メートルの地点で、針路を358度に定め、機関を回転数毎分2,200の半速力前進に掛け、13.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、法定灯火を表示して、舵柄による手動操舵によって進行した。
19時12分少し過ぎA受審人は、防波堤出入り口に近づいたことから、南沖防波堤灯台から151度500メートルの地点で、速力を8.0ノットに減じて同じ針路で続航した。
そして、19時14分わずか前A受審人は、南沖防波堤灯台から098度240メートルの地点で、防波堤出入り口へ向けて左転を開始し、同時14分少し過ぎ南沖防波堤北端から東方約140メートルの地点に達したとき、出航する祥陽丸が、同灯台から217度145メートルのところを、同防波堤の陰となり、その内側に沿って北上中であったが、これまで夕刻に出航する漁船などがいなかったことから、出航する他船はいないものと思い、その後、南沖防波堤北端からできるだけ遠ざかるなどして、防波堤出入り口付近における見通しの悪い状況を解消する措置をとることなく、同防波堤北端部をつけ回すようにして進行した。
こうして、A受審人は、南沖防波堤の陰となり、その内側を北上する祥陽丸が表示する灯火を視認できないまま、同防波堤北端を左舷側至近に替わしたのち、港奥へ向かって左転しながら続航中、祥陽丸の前路に進出することとなり、19時15分わずか前同船が表示する白1灯を船首間近に初認したものの、どうすることもできず、19時15分目井津港南沖防波堤灯台から239度35メートルの地点において、喜福丸は、船首が225度を向いたとき、原速力のまま、その右舷船首が、祥陽丸の右舷船首に前方から15度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
また、祥陽丸は、船体中央部やや後方に操縦席を有するFRP製プレジャーボートで、平成11年12月10日交付の四級小型船舶操縦士免状を有するB受審人が1人で乗り組み、釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成13年11月25日19時07分目井津漁港の港奥にある船溜まりを発し、前示防波堤出入り口を経由する予定で宮崎県鵜戸埼東方沖合の釣り場へ向かった。
B受審人は、新南防波堤灯台を替わし、南沖防波堤へ向けて直進したのち、19時14分少し過ぎ南沖防波堤灯台から217度145メートルの地点で、針路を030度に定め、防波堤出入り口近くであったことから機関を回転数毎分2,100の全速力前進より減じた同1,500の半速力前進に掛け、5.0ノットの速力で、法定灯火を表示して、舵柄による手動操舵によって進行した。
こうして、B受審人は、南沖防波堤の約10メートル内側をこれに沿って北上中、19時15分わずか前同防波堤北端から、突然、自船の前路至近に進出してきた喜福丸が表示する紅1灯を認め、衝突の危険を感じて機関を中立運転としたものの、効なく、祥陽丸は、原針路、ほぼ原速力で、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、喜福丸は、右舷船首外板に擦過傷を、祥陽丸は右舷中央部舷縁、操舵室及び船尾甲板のオーニングに損傷を生じた。
(原因)
本件衝突は、夜間、目井津漁港防波堤出入り口において、喜福丸が、同出入り口付近における見通しの悪い状況を解消する措置をとらず、祥陽丸の前路に進出したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、目井津漁港南方沖合の釣り場から帰航中、北北東方へ開けた同漁港防波堤出入り口に入航する場合、同出入り口南沖防波堤の高さが水面から約6メートルあり、見通しが悪い状況であることから、同防波堤の陰となり、その内側を北上する他船を余裕を持って視認できるよう、同防波堤北端からできるだけ遠ざかるなどして、防波堤出入り口の見通しの悪い状況を解消する措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、これまで夕刻に出航する漁船などがいなかったことから、出航する他船はいないものと思い、防波堤出入り口の見通しの悪い状況を解消する措置をとらなかった職務上の過失により、出航中の祥陽丸が表示する灯火を視認できないまま、同船の前路に進出して衝突を招き、自船の右舷船首外板に擦過傷、祥陽丸の右舷中央部舷縁、操舵室及び船尾甲板のオーニングに損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
B受審人の所為は、本件発生の原因とならない。
よって主文のとおり裁決する。