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平成15年神審第21号
件名

漁船第五神宝丸プレジャーボート海極丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年6月25日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:第五神宝丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:海極丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
神宝丸・・・損傷ない
海極丸・・・左舷後部外板及び船橋を損壊、のち廃船

原因
神宝丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
海極丸・・・船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第五神宝丸が、見張り不十分で、錨泊中の海極丸を避けなかったことによって発生したが、海極丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年6月9日13時40分
 石川県金沢港北西方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五神宝丸 プレジャーボート海極丸
総トン数 14トン  
全長 19.28メートル 6.85メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 588キロワット 36キロワット

3 事実の経過
 第五神宝丸(以下「神宝丸」という。)は、小型いかつり漁業に従事するFRP製漁船で、一級小型船舶操縦士の資格を有したA受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首0.7メートル船尾2.5メートルの喫水をもって、平成14年6月9日13時00分石川県金沢港を発し、同港北西方沖合の漁場へ向かった。
 A受審人は、出港操船に引き続いて単独で船橋当直に就き、13時26分少し前金沢港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から341度(真方位、以下同じ。)2.1海里の地点で、針路を330度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力で自動操舵により進行した。
 定針時、A受審人は、自船より少し大型のいかつり漁船が、右舷船首40度1海里ばかりのところを北上していたので、同船の動向を注意しながら続航した。
 13時37分わずか前A受審人は、西防波堤灯台から336度4.1海里の地点に達したとき、正船首1,000メートルのところに錨泊中の海極丸を視認できる状況であったが、右舷方のいかつり漁船の動向に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかったので、海極丸の存在に気付かなかった。
 こうして、A受審人は、海極丸と衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、同船を避けることなく進行し、13時40分西防波堤灯台から335度4.6海里の地点において、神宝丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、海極丸の左舷後部に後方から60度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 また、海極丸は、FRP製プレジャーボートで、四級小型船舶操縦士の資格を有したB受審人が1人で乗り組み、魚釣りの目的で、船首尾0.25メートルの等喫水をもって、同日06時00分金沢港を発し、同港沖合の釣り場へ向かった。
 B受審人は、07時ごろ水深約55メートルの前示衝突地点で、機関を停止のうえ、船首部から重さ5キログラムの鋼製錨を投じ、直径10ミリメートルの合成繊維製の錨索を70メートル延出して錨泊し、錨泊中の形象物を掲げて6時間ばかり釣りを行ったのち、帰ることとして釣り道具を片付けながら錨泊を続けた。
 13時37分わずか前B受審人は、船首を270度に向けていたとき、左舷船尾60度1,000メートルのところに自船に向首した神宝丸を初認し、同時38分半衝突のおそれのある態勢で480メートルに接近した同船に対し、救命胴衣の笛を吹いたり、手を振ったりしたものの、依然、神宝丸が自船を避けないまま接近するのを認めたが、速やかに機関を始動するなど、衝突を避けるための措置をとらなかった。
 こうして、B受審人は、錨泊を続け、神宝丸が同じ態勢で至近に接近したとき、ようやく衝突の危険を感じて海中へ飛び込み、海極丸は、270度に向首したまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、神宝丸は、ほとんど損傷がなかったが、海極丸は、左舷後部外板及び船橋を損壊し、修理費等の関連で廃船処理された。

(原因)
 本件衝突は、石川県金沢港北西方沖合において、航行中の神宝丸が、見張り不十分で、前路で錨泊中の海極丸を避けなかったことによって発生したが、海極丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、金沢港北西方沖合を漁場に向け航行する場合、錨泊中の海極丸を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷方のいかつり漁船の動向に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、海極丸の存在に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、海極丸の左舷後部外板及び船橋を損壊させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、金沢港北西方沖合において、釣り道具を片付けながら錨泊中、衝突のおそれのある態勢で接近する神宝丸に対し、笛を吹いたり、手を振ったりしたものの、依然、同船が自船を避けないまま接近するのを認めた場合、速やかに機関を始動するなど、衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、錨泊を続けて衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


参考図





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