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平成15年神審第17号
件名

引船明星丸被引起重機船第2寄星灯浮標衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年6月5日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:明星丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
寄 星・・・前部左側に擦過傷
灯浮標・・・ハンドレールに曲損等

原因
明星丸・・・見張り不十分

裁決主文

 本件灯浮標衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年10月30日08時13分
 神戸港第2区
 
2 船舶の要目
船種船名 引船明星丸 起重機船第2寄星
総トン数 154トン  
全長 30.30メートル  
長さ   75.00メートル
  24.00メートル
深さ   4.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,764キロワット  

3 事実の経過
 明星丸は、船首船橋型の鋼製引船で、A受審人ほか4人が乗り組み、曳航作業の目的で、船首2.2メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成14年10月30日07時30分神戸港第2区のポートアイランド北岸の定係地を発し、同日07時40分同区第5防波堤の中央部に到着し、第2寄星(以下「寄星」という。)を引き出し、同港第5区の神戸空港連絡橋工事現場に向かうこととした。
 ところで、寄星は、前部に200トン吊りの旋回式クレーンを装備し、船首尾とも2.5メートルの等喫水の非自航式起重機船で、明星丸は、寄星の前部両舷ビットからそれぞれ伸ばされた直径60ミリメートル長さ30メートルのワイヤー2本を船首のビットにとり、船間距離を25メートルとして後ろ引きで曳航する態勢をとった。
 A受審人は、前示の態勢を準備したのち、08時05分第5防波堤中央部を離れ、寄星を後ろ引きで曳航して神戸空港連絡橋工事現場に向かったが、同様の作業は日頃から行っていたので、周辺海域の航路や灯浮標などの配置状況については十分承知していた。
 08時08分A受審人は、神戸港第6防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から325度(真方位、以下同じ。)1,500メートルに達したとき、西側を出航する他の引船列を認めたので、これを先航させるため、通常より東寄りを航行することとし、針路を110度に定め、機関を半速力後進にかけ、5.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で手動操舵によって進行した。
 A受審人は、針路を定めたとき、ほぼ正船尾770メートルに神戸港灘第1号灯浮標(以下「灯浮標」という。)を視認できる状況であったが、前示引船列の動静に気を奪われ、前路の見張りを十分に行っていなかったので、灯浮標に気付かず、同じ針路速力で続航し、08時13分少し前寄星を神戸中央航路に向けて右転させようとしたとき、明星丸の右舷船尾正横10メートルに灯浮標を視認し、さらに激右転させようとしたものの、08時13分防波堤灯台から353度1,040メートルの地点において、右転中の寄星が140度を向いたとき、原速力のまま、同船前部左側が灯浮標に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 衝突の結果、寄星の前部左側に擦過傷及び灯浮標のハンドレールに曲損等をそれぞれ生じさせたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件灯浮標衝突は、神戸港第2区において、起重機船を後ろ引きで曳航して出航する際、見張りが不十分で、灯浮標に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、神戸港第2区において、起重機船を後ろ引きで曳航して出航する場合、前路にある灯浮標を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、他の引船列の動静に気を奪われて、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、灯浮標に向かって進行して衝突を招き、起重機船前部左側に擦過傷及び灯浮標ハンドレールに曲損等をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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