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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成15年函審第8号
件名

漁船二十八宗丸漁船晴丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年6月13日

審判庁区分
函館地方海難審判庁(黒岩 貢、古川隆一、野村昌志)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:二十八宗丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士
B 職名:晴丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
宗 丸・・・右舷船首外板に亀裂を伴う凹損
晴 丸・・・右舷船首ブルワークに損傷

原因
宗 丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守
晴 丸・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守

主文

 本件衝突は、二十八宗丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、晴丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年10月16日00時03分
 北海道チキウ岬南東方沖合
 
2 船舶の要目
船種船名 漁船二十八宗丸 漁船晴丸
総トン数 19トン 7.3トン
全長 23.25メートル 16.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 481キロワット 382キロワット

3 事実の経過
 二十八宗丸(以下「宗丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗組み、操業の目的で、船首0.8メートル船尾2.7メートルの喫水をもって、平成13年10月15日14時30分北海道臼尻漁港を発し、15時30分チキウ岬の南東方11海里付近の漁場に至って操業を開始した。
 ところで、いか漁には、夜間、シーアンカーを展張して集魚灯により魚群を集めて釣る漁法(以下「夜いか漁」という。)と、昼夜の区別なくソナーと魚群探知機により魚群を探索し、船体が常に魚影の真上に来るように操船して釣る通称かんどりと呼ばれる漁法(以下「かんどり漁」という。)とがあり、チキウ岬南東方の前示漁場を含む広い海域で、多数のいか釣り漁船が両漁法を適宜使い分けながら操業していた。
 また、それらの漁船が一箇所に集中し、漁船群を形成した場合、各船の船体や漁具に加え、それらが点灯する多数の灯火が妨げとなって漁船群の内側からその周囲の様子を見ることはもちろん、遠方から漁船群内側の様子を見ることも難しい状況となり、とりわけ、かんどり漁の漁船群に接近する際には見張りを厳重に行い、魚群を求めて移動する漁船に注意する必要があった。
 A受審人は、漁場到着時からかんどり漁を行い、夕方になって所定の灯火のほか数個の作業灯及び集魚灯を点灯したうえシーアンカーを投入し、夜いか漁に切り替えて操業を続けていたところ、自船の南東方2海里に認めたかんどり漁と思われる10隻ばかりの漁船群の東側に移動することとし、シーアンカーを揚収したのち、23時50分チキウ岬灯台から130度(真方位、以下同じ。)10.6海里の地点において集魚灯のみを消灯して発進し、同漁船群の明かりを船首わずか右舷側に見るよう、針路を150度に定め、機関を半速力前進にかけ、8.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)でソナーと魚群探知機による魚群探索を行いながら進行した。
 A受審人は、漁船群に接近するうち、その操業模様が徐々に見え始め、翌16日00時01分半チキウ岬灯台から132.5度12.1海里の地点に達したとき、自船の針路に最も近い、前示漁船群の東端にいた漁船(以下「第三船」という。)を右舷船首15度400メートルに認めるようになった。
 このときA受審人は、第三船のわずか左方となる右舷船首12度500メートルのところに、漁船群の中から出て自船の前路に向け移動中の晴丸の左舷灯、集魚灯、探照灯などを認めることができ、自船がこのまま続航すると衝突のおそれのあることが分かる状況となったが、第三船の釣り上げたいかの水を吐き出す様子が見えてその操業模様が気になり、前路の見張りを十分に行わなかったので、この状況に気付かず、機関を停止するなど衝突を避けるための措置をとることなく進行した。
 00時03分少し前A受審人は、依然、第三船の操業模様に気をとられ、自船の正船首方至近で停船した晴丸に気付かないまま続航中、00時03分チキウ岬灯台から133度12.3海里の地点において、宗丸は、原針路、原速力のまま、その船首が晴丸の右舷船首にほぼ平行に衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、海上は穏やかであった。
 また、晴丸は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人ほか1人が乗組み、操業の目的で、船首0.7メートル船尾1.9メートルの喫水をもって、同月15日14時00分北海道恵山漁港を発し、同時40分恵山岬灯台の北方9海里付近の漁場に至って操業を開始した。
 B受審人は、かんどり漁を行いながら徐々に北方に移動し、夕方には所定の灯火のほか、集魚灯、作業灯を点灯して操業を続け、22時ごろ前示衝突地点付近の海域に至ったとき、魚影が濃くなって自船の周囲に10隻ばかりの漁船が数十メートルから100メートルの間隔で輻輳する状況となった。
 翌16日00時01分B受審人は、チキウ岬灯台から133.5度12.3海里の地点において120度を向首していたとき、漁船群の外側に移動することとして釣り針を上げ、機関を極微速前進にかけ、4.5ノットの速力で手動操舵により発進し、操舵スタンド左舷側に備えられたソナー及び魚群探知機により魚影の確認をしつつ、自船の船首両舷数十メートルのところで操業する2隻の漁船の間を抜けるように大きく左回頭しながら進行した。
 00時01分半B受審人は、チキウ岬灯台から133.5度12.4海里の地点に至り、左舷側で操業中の第三船を含む2隻の漁船を後方に替わし、漁船群の外側に出て072度を向首したとき、左舷正横500メートルのところに南東進する宗丸の右舷灯や作業灯を認めることができ、自船がこのまま回頭を続けると衝突のおそれのあることが分かる状況となったが、魚群探索に気をとられ、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、この状況に気付かず、機関を停止するなど衝突を避けるための措置をとることなく回頭を続けた。
 00時03分少し前B受審人は、前示衝突地点付近において330度を向首して停船し、直ちに釣り針を降ろし始めたとき、船首方至近に宗丸の灯火を初めて認めたが、どうすることもできず、晴丸は前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、宗丸は、右舷船首外板に亀裂を伴う凹損を、晴丸は、右舷船首ブルワークに損傷をそれぞれ生じたが、のち両船とも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、北海道チキウ岬南東方沖合において、漁船群の近くに移動中の宗丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、漁船群の中からその外側に移動中の晴丸が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、北海道チキウ岬南東方沖合において、いか一本釣り漁業に従事中、2海里ばかり離れた漁船群の近くに移動する場合、漁船群の中からその外側に移動中の晴丸の灯火を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、漁船群に接近するうち、その操業模様に気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、晴丸の灯火に気付かないまま進行して同船との衝突を招き、自船の右舷船首外板に亀裂を伴う凹損を、晴丸の右舷船首ブルワークに損傷をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、夜間、北海道チキウ岬南東方沖合において、10隻ばかりの漁船群の中でいか一本釣り漁業に従事中、漁船群の外側に移動する場合、漁船群に向け来航する宗丸の灯火を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚群探索に気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、宗丸の接近に気付かないまま進行し、その直前で停船して同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 


参考図1


参考図2





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