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平成15年広審第12号
件名

旅客船進光丸漁船鷹吉丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年5月22日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(道前洋志、供田仁男、佐野映一)

理事官
平野浩三

受審人
A 職名:進光丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:進光丸次席一等航海士 海技免状:三級海技士(航海)(履歴限定)
C 職名:鷹吉丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
進光丸・・・損傷ない
鷹吉丸・・・船尾部を切断、廃船

原因
進光丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
鷹吉丸・・・見張り不十分、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、進光丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る鷹吉丸の進路を避けなかったことによって発生したが、鷹吉丸が、見張り不十分で、避航を促すための有効な音響による信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する
 受審人Cを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年10月24日16時37分
 徳山湾南口
 
2 船舶の要目
船種船名 旅客船進光丸 漁船鷹吉丸
総トン数 1,253.73トン 2.1トン
全長 71.35メートル
登録長   8.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 2,999キロワット  
漁船法馬力数 15  

3 事実の経過
 進光丸は、山口県徳山下松港と大分県竹田津港との間を定期運航する船首船橋型旅客船兼自動車渡船で、A及びB両受審人ほか7人が乗り組み、車両13台及び旅客25人を乗せ、船首2.7メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、平成14年10月24日15時00分竹田津港を発し、徳山下松港に向かった。
 15時15分B受審人は、出港配置から昇橋して甲板手とともに船橋当直に就き、同時34分周防野島灯台から205度(真方位、以下同じ。)10.1海里の地点で、針路を032度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて13.0ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。
 16時29分B受審人は、岩島灯台から204度2海里の地点に達したころ、右舷正横2海里ばかりのところに徳山湾南口に向かう総トン数5,000トンばかりの貨物船を認め、同船に先航するため予定より早く左転して同南口に向かうこととし、同時31分岩島灯台から201度1.6海里の地点で、甲板手を手動操舵に当たらせて岩島と洲島との間の中央に向首する007度に転じたところ、右舷船首37度1.2海里のところに鷹吉丸を認めることができ、その後同船が前路を左方に横切り衝突するおそれがある態勢で接近する状況であったが、転針により前示貨物船に先航する態勢になったことに安心し、右方に対する見張りを十分に行わなかったので、これに気付かず、間もなく昇橋したA受審人に針路及び気象を引き継いだだけで、鷹吉丸について引き継ぐことができないまま当直を交替し、入港配置が間近であったところからその後も在橋した。
 16時33分A受審人は、昇橋して当直を交替し、そのころ同方位0.8海里のところに鷹吉丸を認めることができたが、交替直後でB受審人から他船について特に引継ぎを受けなかったので、付近に他船はいないものと思い、左舷側に置いてあるいすに腰掛けて当直に当たり、右方に対する見張りを十分に行わなかったので、同船に気付かず、同時35分同船が同方位0.4海里に接近していたものの、機関を使用するなど同船の進路を避けないまま、引き続き甲板手を手動操舵に当たらせて進行した。
 16時36分A受審人は、立ち上がって前方に移動したとき、右舷船首近距離に鷹吉丸を初めて認め、その状況をうかがっているうち、同時37分少し前危険を感じて左舵一杯、機関を中立としたが及ばず、16時37分岩島灯台から249度830メートルの地点において、原針路、原速力のまま、進光丸の船首が、鷹吉丸の左舷側船尾部に後方から67度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力4の北西風が吹き、視界は良好であった。
 また、鷹吉丸は、一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、C受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同日07時00分周南市大津島漁港を発し、同市大島半島南方の下コーズ瀬の漁場に向かい、同時30分漁場に至って操業を開始した。
 16時22分C受審人は、操業を終えて岩島灯台から131度1.8海里の漁場を発し、針路を馬島北端に向首する300度に定め、機関を全速力前進にかけて8.0ノットの速力で、手動操舵によって帰途についた。
 16時31分C受審人は、岩島灯台から153度0.6海里の地点に達したころ、左舷船首76度1.2海里のところに進光丸を認めることができ、その後同船が前路を右方に横切り衝突するおそれがある態勢で接近する状況であったが、波がやや高かったことから保針に気をとられ、左方に対する見張りを十分に行わなかったので、これに気付かず進行した。
 16時36分C受審人は、進光丸が同方位0.2海里に接近し、避航の気配がなかったが、依然としてこれに気付かず、避航を促すための有効な音響による信号を行わず、その後右転するなど衝突を避けるための協力動作をとらないまま、原針路、原速力で続航中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、進光丸には損傷はなく、鷹吉丸は船尾部を切断して廃船となった。

(原因)
 本件衝突は、徳山湾南口において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、北上中の進光丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る鷹吉丸の進路を避けなかったことによって発生したが、北西進中の鷹吉丸が、見張り不十分で、避航を促すための有効な音響による信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、船橋当直を引き継いで徳山湾南口に向けて北上する場合、右舷船首方の鷹吉丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、当直交替直後で前直者から他船について特に引継ぎを受けなかったので、付近に他船はいないものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する鷹吉丸に気付かず、同船の進路を避けないまま進行して衝突を招き、鷹吉丸の船尾部を切断して後廃船させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 B受審人は、徳山湾南口に向けて転針した場合、間もなく船橋当直を交替する時期であったから、右舷船首方の鷹吉丸について次直者に引き継ぐことができるよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、当直交替を前にして同南口に向かう右舷側の貨物船を早めに左転して替わしたことから安心し、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、鷹吉丸に気付かず、同船について次直者に引き継ぐことができないで衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 C受審人は、徳山湾南口に向けて北西進する場合、左舷船首方の進光丸を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、保針に気をとられ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する進光丸に気付かず、避航を促すための有効な音響による信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらないまま進行して衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のC受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 


参考図





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