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平成15年神審第14号
件名

プレジャーボートトゥルー フレンド岸壁衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年4月22日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(竹内伸二)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:トゥルー フレンド船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
左舷船首部を大破、同乗者が右橈骨骨折等

原因
進路選定不適切

裁決主文

 本件岸壁衝突は、他船の航走波が残る狭い水路を通航する際、進路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

  海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年9月10日16時00分
 京都府久美浜港 

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートトゥルー フレンド
登録長 2.45メ―トル
機関の種類 電気点火機関
出力 62キロワット

3 事実の経過
 トゥルー フレンドは、2人乗りのウォータージェット推進式FRP製水上オートバイで、A受審人が、休日に主として京都府久美浜港付近でマリンレジャーの目的で運航していたところ、平成14年9月10日早朝同人が、兵庫県西脇市日野町の自宅から久美浜湾内の久美浜かずらの港葛野の海岸にトレーラーで運搬し、09時ごろから友人の水上オートバイとともに適宜休憩をとりながら、同港及び久見浜湾外の海岸沖合で遊走を繰り返していた。
 ところで、久美浜湾は、久美浜港の主要部分で、同湾北西部に位置するほぼ南北方向にS字状に屈曲した狭い水路で日本海と結ばれ、同水路は外海への出口近くで北方に出る水路と西方に出る長さ約160メートルの水路(以下「西水路」という。)とに分岐し、西水路は幅14メートル長さ約160メートルの直線水路で、同水路南岸は東口付近が高さ約1メートルのコンクリート岸壁となっており、同岸壁から外海への出口まで約140メートルにわたってコンクリート製テトラポッドが敷設されていた。そして、水路航行についての特別な規則はなく、入出港船舶は任意の水路を通航することができた。
 A受審人は、それまでに十数回の水上オートバイ操縦経験があり、久美浜湾から外海に出る水路の通航には慣れており、経験により同水路内を通航中、他船の航走波を受けると、波に乗って船首が振れるとともに船体が流されることを知っていた。
 A受審人は、帰宅する前にもう一度久美浜湾の外に出て遊走することとし、同人が単独で乗り組み、操縦席後方の座席に救命胴衣を着けた知人を乗せ、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、15時55分久美浜港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から117度(真方位、以下同じ。)1.3海里の久美浜湾内の海岸を発進し、友人2人が乗った水上オートバイとともに水路に向かった。
 発進後A受審人は、久美浜町湊宮地区海岸の南方約400メートル沖合を32.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で西行し、15時57分水路南口に達して速力を9.7ノットに減じ、先行する友人の水上オートバイから50メートル離れて水路を北上した。
 15時59分少し前A受審人は、みなと小橋下を通過し、その後左に曲がりながら水路に沿って通航し、16時00分少し前水路の分岐点に近い、南防波堤灯台から190度210メートルの地点に達し、先行する友人の水上オートバイにしたがって西水路に入ろうとしたとき、同水上オートバイとその前方を航行していた小型船の航走波が水路内に残り、西水路北岸で反射して右方から押し寄せる状況であることを認めたが、それほど大きい波ではなかったので航走波に抗して直進することができると思い、西水路の中央を通航する適切な進路とすることなく、西水路南岸に2メートルばかりに近寄って通航する313度の針路とし、9.7ノットの速力で進行中、トゥルー フレンドは、右舷側から押し寄せた波高約30センチメートルの航走波により、船首が左に振れるとともに左方に流され、危険を感じたA受審人がステアリングハンドルを右に曲げたものの効なく、16時00分南防波堤灯台から212度180メートルの地点において、298度に向首したとき、左舷船首が西水路南岸のコンクリート岸壁に約15度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期であった。
 A受審人は、同乗者とともに海中に転落し、間もなく同人を近くの岸に引き上げ、衝突を知って引き返してきた友人の水上オートバイに乗せて病院に搬送させるなど事後の措置にあたった。
 衝突の結果、トゥルー フレンドは左舷船首部が大破し、同乗者が右橈骨骨折、左母趾骨折及び左顔面挫創などを負った。

(原因)
 本件岸壁衝突は、京都府久美浜港において、先行する他船の航走波が残る狭い水路を通航中、進路の選定が不適切で、水路の中央を航行しないで南岸に近寄って進行し、水路北岸で反射した航走波により南方に流されたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、京都府久美浜港において、久美浜湾から外海に出るため、先行する他船の航走波が残る同港北西部の狭い水路を通航する際、水路北岸で反射した航走波が右方から押し寄せる状況を認めた場合、航走波により左方に流されて南岸の岸壁に衝突しないよう、水路中央を航行する適切な進路を選定すべき注意義務があった。しかし、同人は、それほど大きい波ではなかったので航走波に抗して直進することができると思い、水路中央を航行する適切な進路を選定しなかった職務上の過失により、南岸に近寄って進行中に航走波に流されて岸壁との衝突を招き、左舷船首部を大破させるとともに、同乗者に右橈骨骨折、左母趾骨折及び左顔面挫創などを負わせるに至った。





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