日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成15年神審第7号
件名

プレジャーボートアパッチプレジャーボートカワバタ衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年4月21日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充)

理事官
堀川康基

受審人
A 職名:アパッチ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
C 職名:カワバタ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名:アパッチ操縦者

損害
アパッチ・・・右舷外板に亀裂、操縦者及び同乗者1人が骨盤骨折等
カワバタ・・・損傷ない

原因
アパッチ・・・見張り不十分、船員の常務(前路進出)不遵守(主因)
カワバタ・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、両船が互いに進路を交差する態勢で遊走中、アパッチが、見張り不十分で、カワバタの前路に向け減速しながら進行して衝突のおそれを生じさせたことによって発生したが、カワバタが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Cを戒告する。 

適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月15日16時25分
 和歌山県日高港
 
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートアパッチ プレジャーボートカワバタ
登録長 2.64メートル 2.45メートル
機関の種類 電気点火機関 電気点火機関
出力 88キロワット 80キロワット

3 事実の経過
 アパッチは、川崎重工業株式会社が製造した、最大とう載人員3人のウォータージェット推進によるFRP製水上オートバイで、A受審人が座席後部に、子供2人が座席中央部にそれぞれ座り、B指定海難関係人が座席前部で操縦し、平成14年8月15日16時05分和歌山県日高港王子川河口の右岸を発し、同河口の西方海域で遊走を繰り返した。
 ところで、A受審人は、アパッチの操縦をB指定海難関係人に自ら教え、何回か操縦させていたので、今回も同指定海難関係人に操縦させながら遊走することにしたが、見張りについて特に指示するまでもないと思い、同指定海難関係人に対し、右舷方から接近するカワバタを見落とさないよう、右舷方の見張りを十分に行うよう指示しなかった。
 16時24分40秒B指定海難関係人は、紀伊塩屋港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)から341度(真方位、以下同じ。)730メートルの地点で、158度の針路及び40キロメートル毎時(以下「キロメートル毎時」を「キロ」という。)の速力(対地速力、以下同じ。)で進行していたとき、右舷正横後5度90メートルのところに接近するカワバタを認めうる状況であったが、右舷方の見張りを行っていなかったので同船に気付かなかった。
 B指定海難関係人は、16時24分42秒尿意を催したA受審人が下りられるように、速力を減じたところ、カワバタと衝突のおそれのある態勢となったが、依然右舷方の見張りを行っていなかったので、そのことに気付かず、同船の前路に向け進行し、同時25分わずか前、右舷至近にカワバタを認めたが、どうすることもできず、16時25分南防波堤灯台から341度650メートルの地点において、アパッチは、原針路のままほぼ行きあしが停止するころ、その右舷側中央部にカワバタの船首部が後方から55度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の南南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 また、カワバタは、ヤマハ発動機株式会社が製造した、最大とう載人員2人のウォータージェット推進によるFRP製水上オートバイで、座席後部に子供1人が座り、C受審人が座席前部で操縦し、同日15時55分王子川河口の右岸を発し、同河口の西方海域で遊走を繰り返した。
 16時24分40秒C受審人は、南防波堤灯台から332度730メートルの地点で、103度の針路及び20キロの速力で進行していたとき、左舷船首30度90メートルのところに自船の前路に向け南下中のアパッチを視認したが、一見して安全に替わっていくものと思い、減速模様を把握できるよう、動静監視を十分に行うことなく、座席後部の子供と話を始めた。
 こうして、C受審人は、アパッチが減速したことも、その後衝突のおそれのある態勢となったことにも気付かず、停止するなど、衝突を避けるための措置をとることなく進行中、カワバタは、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、カワバタは、損傷しなかったものの、アパッチは、右舷外板に亀裂を伴う損傷を生じた。また、B指定海難関係人が骨盤骨折等を、アパッチに同乗していた子供1人が肺挫傷等をそれぞれ負うに至った。

(原因)
 本件衝突は、和歌山県日高港において、両船が互いに進路を交差する態勢で遊走中、アパッチが、見張り不十分で、カワバタの前路に向け減速しながら進行して衝突のおそれを生じさせたことによって発生したが、カワバタが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 アパッチの運航が適切でなかったのは、船長が、無資格の操縦者に対し、右舷方の見張りを十分に行うよう指示しなかったことと、同操縦者が、右舷方の見張りを十分に行わなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、和歌山県日高港において、アパッチに子供2人を挟んでB指定海難関係人と4人で乗り、自らは座席後部に座り、座席前部の同指定海難関係人に操縦させながら遊走する場合、右舷方から接近するカワバタを見落とさないよう、B指定海難関係人に対して右舷方の見張りを十分に行うよう指示すべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、何回か操縦させていたので、見張りについて特に指示するまでもないと思い、右舷方の見張りを十分に行うよう指示しなかった職務上の過失により、B指定海難関係人がカワバタの接近に気付かず、同船の前路に向け減速しながら進行してカワバタとの衝突を招き、自船の右舷外板に亀裂を伴う損傷を生じさせ、B指定海難関係人に骨盤骨折等を、アパッチに同乗していた子供1人に肺挫傷等をそれぞれ負わせるに至った。
 C受審人は、和歌山県日高港において遊走中、左舷船首方に自船の前路に向け南下中のアパッチを視認した場合、同船の減速模様を把握できるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、一見して安全に替わっていくものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、アパッチが減速したことも、衝突のおそれのある態勢となったことにも気付かず、停止するなど、衝突を避けるための措置をとることなく進行して同船との衝突を招き、前示の損傷及び負傷を生じさせるに至った。
 B指定海難関係人が、和歌山県日高港において、アパッチを操縦して遊走する際、右舷方の見張りを十分に行わなかったことは本件発生の原因となる。 


参考図





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION