日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 運航阻害事件一覧 >  事件





平成14年那審第40号
件名

プレジャーボートコーヨーI運航阻害事件

事件区分
運航阻害事件
言渡年月日
平成15年3月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(平井 透、金城隆支、坂爪 靖)

理事官
濱本 宏

指定海難関係人
A 職名:コーヨーI機関長

損害
右舷側サービスタンクが空となり、航行不能

原因
油量管理不十分

主文

 本件運航阻害は、主機燃料油の油量管理が十分でなかったことによって発生したものである。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年12月10日15時15分
 沖縄県石垣港北西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートコーヨーI
総トン数 134.28トン
登録長 23.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,059キロワット

3 事実の経過
 コーヨーI(以下「コーヨー」という。)は、平成13年9月台湾で竣工した2機2軸を有するFRP製プレジャーボートで、主機としてキャタピラー社が製造した3412E型と称する、各シリンダが左右に6シリンダずつV字形に配列された12シリンダV型ディーゼル機関を備え、燃料油として軽油を使用するようになっていた。
 燃料油タンクは、機関室内に容量1,491リットルの主機燃料油サービスタンク(以下「サービスタンク」という。)が両舷に備えられるなど、計6タンクが設けられ合計10,879リットルの保有量を有していた。
 主機の燃料油系統は、右舷側及び左舷側のサービスタンクからそれぞれ燃料油一次こし器を経て右舷側主機(以下「右舷機」という。)及び左舷側主機(以下「左舷機」という。)に独立して燃料油が供給されるようになっていた。
 サービスタンクは、燃料油一次こし器を経て主機に至る外径25ミリメートル(以下「ミリ」という。)の燃料油供給管、マニホルドを介して他の貯蔵用タンクと繋がる外径40ミリの燃料油移送管、主機から外径25ミリの戻り油管、外径50ミリの燃料油補給管及び外径35ミリの空気抜き管が配管され、船横方向の断面が逆台形となっていたことから、油面の高さと残油量とが比例しない形状となっていた。また、同タンクの機関室側には油面計が取り付けられていたものの、目盛が刻まれていなかったことから、残油量が判断できず油面の高さだけが分かるようになっていた。
 ところで、燃料油供給管は、サービスタンクの底部から立ち上がり、同タンクの天井を貫通したのち、同タンクより低位に設置された主機まで逆U字形に配管されていたことから、同管に空気を吸引した場合、空気抜きに難儀するおそれがあった。
 A指定海難関係人は、漁師として漁業に従事するほか、パナマ共和国の海技免状を取得していたことから、コーヨーを台湾から愛知県豊橋市に回航する目的で機関長として臨時に雇用され、平成13年9月1日出国して台湾の造船所に向い、同月6日造船所からコーヨーを基隆市に回航し、同市で造船所が補油した燃料油に加え、タンクローリ車の流量計で計測して7,300リットルの燃料油を補油するなど発航準備を行った。
 その後、A指定海難関係人は、台風の影響などで発航できなかったことから同年10月1日一時帰国し、12月4日再度基隆市に向かった。
 こうして、コーヨーは、A指定海難関係人ほか2人が乗り組み、同月10日07時25分燃料油約9,600リットルを船首船室燃料油タンク以外の5タンクに満載した状態で基隆市を発し、燃料油、清水及び食料の補給並びに入国手続の目的で沖縄県石垣港に向った。
 A指定海難関係人は、航海中、08時30分、10時00分及び12時00分機関室に赴いて見回りを行い、12時00分に発航後4時間35分の航行で両舷のサービスタンク油面計の油面が6割の位置に低下していることを認めたものの、残航が3時間であることを船長から聞いていたことから、同タンクに燃料油を補給しないまま操舵室に戻り、船長とともに同室で見張りを続けていたところ、14時00分左舷機の回転が突然低下し始めたことに気付いた。
 A指定海難関係人は、直ちに機関室に赴き、両舷のサービスタンクの油面がタンク底近くになっていることを認め、左舷側サービスタンクに燃料油を補給する準備を行っているうちに同タンクが空となって燃料油系統に空気を吸引して左舷機が自停し、右舷側サービスタンクに油面計の油面が5割の位置となるまで燃料油を補給したものの、左舷機が停止した原因の究明に気を取られ、同タンクの形状、油面計の油面が6割の位置から2時間で空になった実績などを考慮して右舷側サービスタンクに余裕を持って燃料油を補給するなど、主機燃料油の油量管理を十分に行わないまま、右舷機の運転を続けた。
 コーヨーは、各部調査の結果、左舷機の自停した原因が燃料油系統の空気の吸引であると判断したA指定海難関係人が同系統の空気抜きに手間取っているうちに右舷側サービスタンクも空となり、15時15分石垣御神埼灯台から真方位246度4.8海里の地点において、燃料油系統に空気を吸引して右舷機も自停し、空気抜きに難儀する理由が分からないことから、燃料油の残量が約6,600リットルであったものの、主機の始動を断念して海の緊急電話に救助を求め、航行不能となった。
 当時、天候は晴で風力1の北東風が吹き、海上は穏やかであった。
 その結果、コーヨーは、16時25分来援した巡視船などに曳航されて18時15分沖縄県石垣港に引き付けられ、燃料油供給管が逆U字形に配管されていることに思い至ったA指定海難関係人が翌11日サービスタンクから燃料油一次こし器、燃料油移送ポンプ、マニホルド、サービスタンクと循環する配管を仮設して燃料油系統の空気抜きを行ったのち、航海を続けて回航業務を完了した。

(原因)
 本件運航阻害は、台湾基隆市と石垣港間を航行する際、主機燃料油の油量管理が不十分で、サービスタンクが空となり、燃料油系統に空気を吸引したことによって発生したものである。

(指定海難関係人の所為)
 A指定海難関係人が、台湾基隆市と石垣港間を航行する際、主機燃料油の油量管理を十分に行わなかったことは、本件発生の原因となる。
 A指定海難関係人に対しては、燃料油供給管が逆U字形に配管されていた点及びサービスタンクの油面計に目盛が刻まれていなかった点に徴し、勧告しない。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION