(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年8月2日15時00分
宮崎県目井津漁港南方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船港丸 |
総トン数 |
4.53トン |
全長 |
13.22メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
36キロワット |
3 事実の経過
港丸は、鮪延縄漁(まぐろはえなわりょう)に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、翌日の出漁に備え、生き餌を積み込む目的で、船首0.6メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成14年8月2日14時30分宮崎県油津港を発し、同県外浦港(とのうらこう)に向かった。
ところで、A受審人は、通年、油津港を基地として同県南東方沖合の漁場で操業しており、本件発生前の7月31日朝同港から出漁し、夜、漁場に至って休息し、翌8月1日早朝から操業を始め、夕方に操業を止め、休息をとって同日22時帰途に就き、2日06時30分油津港に入港して水揚げを終え、次の操業のために燃料の積込み等、出港準備を行ったのちに休息するなど、断続的な睡眠しかとれず、睡眠不足で、疲労が蓄積した状況であった。
発航したのち、A受審人は、操舵室の前面及び両舷の窓を開け、自動車用のものを転用した椅子に座って手動操舵に当たり、14時50分半目井津港南沖防波堤灯台(以下「南灯台」という。)から098度(真方位、以下同じ。)290メートルの地点で、針路を外浦港港口付近にある黒島の中央に向く191度に定め、機関を全速力前進に掛け、6.2ノットの対地速力で進行した。
14時55分少し前A受審人は、南灯台から170度800メートルの地点に達したとき、疲れを感じ、椅子に腰掛けたまま操舵を続けると睡眠不足と疲労の蓄積から居眠りに陥り易い状況であったが、外浦港まで近いので居眠りに陥ることはあるまいと思い、立って操舵するなど居眠り運航の防止措置を十分にとることなく続航し、その後いつしか居眠りに陥り、添えていた左手で舵輪が少し右に回り、徐々に右回頭を始めて進行した。
14時58分A受審人は、南灯台から188度1,350メートルの地点に差し掛かったとき、このまま徐々に右回頭すると宮崎県目井津漁港南方沖合にある筏碆(いかだばえ)に乗り揚げるおそれがあったが、居眠りに陥っていたので、このことに気付かないまま続航中、15時00分南灯台から202度1,550メートルの地点において、港丸は、船首が270度に向いたとき、原速力のまま筏碆に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力1の西南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
A受審人は、乗揚の衝撃を感じて目覚め、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船底に破口及び主機関に濡れ損を生じたが、その後船体は波浪により筏碆から引き下ろされ、来援した僚船により外浦港に引き付けられ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、目井津漁港南方沖合において、外浦港に向かって南下中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同沖合にある筏碆に向かって徐々に右回頭をしながら進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、目井津漁港南方沖合において、外浦港に向かって南下中、疲れを感じた場合、睡眠不足と疲労の蓄積から居眠りに陥り易い状況であったから、居眠り運航とならないよう、立って操舵するなど居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、外浦港まで近いので居眠りに陥ることはあるまいと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、同沖合にある筏碆に向かって徐々に右回頭をしながら進行し、同碆への乗揚を招き、船底に破口及び主機関に濡れ損を生じさせるに至った。