日本財団 図書館




 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年神審第111号
件名

漁船栄晴丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年3月12日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充、阿部能正、内山欽郎)

理事官
加藤昌平

受審人
A 職名:栄晴丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
船底外板に損傷、転覆

原因
船位確認不十分

主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年5月20日03時45分
 京都府舞鶴港

2 船舶の要目
船種船名 漁船栄晴丸
総トン数 14トン
全長 19.93メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 199キロワット

3 事実の経過
 栄晴丸は、小型底びき網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか4人が乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾2.3メートルの喫水をもって、平成14年5月19日00時10分京都府舞鶴港を発し、同港北方沖合15海里ばかりの漁場に至って操業を行い、ささがれい等約300キログラムを漁獲し、翌20日01時50分操業を終えて帰途に就いた。
 A受審人は、舞鶴港への入航操船に当たり、03時38分少し過ぎ三本松鼻灯台から333度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点において、針路を舞鶴港アモ瀬灯浮標(以下「アモ瀬灯浮標」という。)を右舷船首目標とする152度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの対地速力で進行し、同灯浮標に並ぶころ、右転して港奥に向かう予定で南下した。
 しかしながら、A受審人は、アモ瀬灯浮標まで時間があるので、以前から不調であったレーダーの調整を思い立ち、同作業に取り掛かり、その後、レーダー画面の調整に気を取られ、転針時機を失しないよう、アモ瀬灯浮標の灯光を見て相対位置を把握するなど、船位の確認を行わなかった。
 こうして、A受審人は、03時43分転針目標のアモ瀬灯浮標を右舷側250メートルばかりに通過したことに気付かず、獅子鼻に向首したまま進行し、03時45分三本松鼻灯台から337度390メートルの地点において、栄晴丸は、その左舷船底部が海岸に原針路原速力のまま乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力2の北風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあたり、視界は良好であった。
 乗揚の結果、船底外板に損傷を生じ、右舷側に転覆して主機及び航海計器等に濡れ損を生じたが、来援したクレーン船により吊り上げられて離礁し、造船所に寄せられ、のち修理された。また、A受審人と乗組員4人は、船底を上にした栄晴丸にはい上がっていたところ、帰港中の僚船に救助された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、京都府舞鶴港において、港奥に向け南下する際、船位の確認が不十分で、転針時機を失し、獅子鼻に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、京都府舞鶴港において、港奥に向け南下する場合、転針時機を失しないよう、アモ瀬灯浮標の灯光を見て相対位置を把握するなど、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、不調であったレーダー画面の調整に気を取られ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、転針目標のアモ瀬灯浮標を右舷側に通過したことに気付かず、獅子鼻に向首したまま進行して乗揚を招き、船底外板に損傷を、右舷側に転覆して主機及び航海計器等に濡れ損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION