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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年仙審第53号
件名

油送船伸興丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年3月13日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(上中拓治)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:伸興丸船長 海技免状:四級海技士(航海)

損害
船底外板に広範囲の凹損及び擦過傷

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年2月1日14時40分
 香川県豊島北岸

2 船舶の要目
船種船名 油送船伸興丸
総トン数 919トン
全長 77.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,618キロワット

3 事実の経過
 伸興丸は、船尾船橋型の油送船で、A受審人ほか7人が乗り組み、空船で、船首1.6メートル船尾3.9メートルの喫水をもって、平成14年2月1日11時45分姫路港を出港し、徳山下松港に向かった。
 A受審人は、出港後まもなく機関を約12ノットの全速力前進にかけ、引き続き自ら単独で船橋当直に従事し、播磨灘北航路から団子瀬の南側海域を経て井島水道に向かう航路計画に沿って西航した。
 ところで、本船では、船橋当直を通常2人で行っていたが、この日は天候が良かったので、午後から全員で甲板機器やバルブ類のグリスアップ作業をすることになり、A受審人が単独で船橋当直を行うことになったものであった。
 13時50分A受審人は、讃岐千振島灯台から049度(真方位、以下同じ。)5.7海里の地点で、団子瀬の南側海域に向かうべく、針路を香川県豊島の虻埼に向首する235度に定め、11.7ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は、団子瀬東灯浮標を右舷側に見て250度に転針するつもりで当直を続けているうち、14時04分ごろ、周囲に船舶がなく、転針予定地点まで20分以上あると思われたことから、この時間を利用して会社に提出する書類を作成しておこうと思い立ち、操舵室後部の海図台に赴いて書類作成作業を開始した。
 14時29分A受審人は、唐櫃港2号防波堤西灯台(以下「唐櫃港灯台」という。)から034度2.1海里の地点で、団子瀬東灯浮標を右舷側0.7海里ばかりに航過し、転針予定地点に達したが、書類作成作業に没頭していて一度も船位の確認を行わなかったので、そのことに気付かなかった。
 伸興丸は、A受審人がその後も書類作成作業に没頭していて予定の転針がなされず、豊島虻埼に向首する針路のまま続航し、14時39分ふと前方を見た同人が至近距離に迫った島影を認めて急いで機関を反転したが及ばず、14時40分唐櫃港灯台から311度0.8海里の地点において、原針路のまま、速力が5ノットばかりに落ちたところで浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力1の南東風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果、本船は船底外板に広範囲の凹損及び擦過傷を生じた。

(原因)
 本件乗揚は、瀬戸内海播磨灘北西部を航行中、船位の確認が不十分で、予定地点での転針が行われず、豊島の虻埼付近に向首する針路で進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、播磨灘北西部を航行中、単独で船橋当直に従事する場合、転針予定地点で確実に転針できるよう、船位の確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、書類作成作業に没頭していて、船位の確認を行わなかった職務上の過失により、転針予定地点で転針せずに進行して乗揚を招き、自船の船底外板に広範囲の凹損を生じさせるに至った。





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