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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年長審第59号
件名

貨物船第七松寿丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年2月28日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(平田照彦、半間俊士、寺戸和夫)

理事官
向山裕則

受審人
A 職名:第七松寿丸船長 海技免状:五級海技士(航海)

損害
船底に凹損、推進器翼に曲損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年4月28日02時10分
 上関海峡

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第七松寿丸
総トン数 199トン
登録長 54.53メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 第七松寿丸は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、空倉のまま、船首1.5メートル船尾2.5メートルの喫水で、平成13年4月27日09時40分大阪港を発し、山口県徳山下松港に向かった。
 A受審人は、船橋当直を機関長、甲板員との3人で4時間交代で行っており、23時50分ころクダコ水道を航過したところで前直の機関長から当直を引き継ぎ、機関を全速力前進にかけ、平郡水道に至る推薦航路に沿って西行し、翌28日01時53分ころ平郡水道第2号灯浮標を左舷に見て航過し、02時05分少し前舵掛岩灯標から233度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの地点において、針路を279度に定めて自動操舵とし、11.0ノットの対地速力で進行した。
 これより先A受審人は、4月19日千葉県君津港から仙台、釜石、室蘭に北航し、23日室蘭港から大阪港に直航して26日入港後から27日朝方にかけて揚荷役を行ったのち直ちに出航するなど、この2週間ばかりは昼夜をとわず航海当直と荷役作業に従事していたので、いくぶんの疲労と睡眠不足気味であり、定針してから付近に航行船はおらず、海上は平穏であり、気持ちが緩むと居眠りに陥るおそれがあったから、窓を開けて外気に当たり、気を引き締めて当直を行うべき状況にあった。
 針路を定めたころA受審人は、GPSで船位と針路を確認したところ上関大橋の中央部に向首する予定針路より100メートルばかり南に偏位し、長島灯篭ノ鼻(とうろうのはな)に向首していたことから、5度ばかり右転して上関大橋に向けるつもりで02時07分ころ手動操舵に切り替えて続航中、舵を持ったまま間もなく居眠りに陥り、第七松寿丸は同一針路で灯篭ノ鼻に向けて続航し、同時10分少し前A受審人はふと我にかえり、迫ってきた島影を視認し、右舵一杯をとったが、効なく02時10分室津灯台から157度190メートルの浅瀬に乗り揚げた。
 当時、天候は曇で風力1の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果、船底に凹損、推進器翼に曲損を生じ、引船によって離礁し、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、上関海峡向け西行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、長島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人が、夜間、航海当直や荷役作業で十分な休養がとれず、いくぶん疲労がたまるとともに睡眠不足の状態で船橋当直に就いた場合、居眠りに陥るおそれがあったから、窓を開けて外気に当たり、気持ちを引き締めて当直を行うなど居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、外気に当たって気持ちを引き締めるなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、長島に乗り揚げ、船底外板に凹損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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