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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年那審第51号
件名

漁船大久丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年2月20日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、坂爪 靖、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:大久丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
右舷船首から船尾船底にかけて多数の破口、のち廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年8月5日23時20分
 沖縄県名護市辺野古埼東南東方沖

2 船舶の要目
船種船名 漁船大久丸
総トン数 9.7トン
登録長 14.32メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 257キロワット

3 事実の経過
 大久丸は、まぐろ旗流し漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか甲板員1人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成14年8月3日17時00分沖縄県汀間漁港を発し、翌4日02時ごろ鹿児島県与論島東方約25海里沖の漁場に至り、漂泊して休息した。
 A受審人は、05時ごろから夕刻まで操業を行い、夜間は漁場付近で漂泊して休息したが、大型船が航行する海域であることから、レーダーの警報装置を作動させていた。
 A受審人は、翌々5日05時ごろ操業を開始し、16時15分操業を終えて帰途に就き、有資格者の甲板員に船橋当直を委ねて休息し、19時30分甲板員と当直を交替して単独の船橋当直に就いたが、漂泊中に何度かレーダーの警報装置の警報音により目覚めて熟睡できなかったことから、睡眠不足の状態であった。
 A受審人は、操舵室内左舷側後方の横板に腰掛けて見張りを行い、22時45分半長島灯台から081度(真方位、以下同じ。)5.1海里の地点に達したとき、針路を259度に定め、機関を全速力前進にかけて8.5ノットの速力で、自動操舵により進行した。
 定針後間もなくA受審人は、眠気を催すようになったが、沖縄県名護市大浦湾大北口の転針予定地点までは近いので、居眠りに陥ることはあるまいと思い、休息中の甲板員と船橋当直を交替するなど居眠り運航の防止措置をとることなく、横板に腰掛けて見張りを続けているうち、いつしか居眠りに陥った。
 大久丸は、転針予定地点を航過して長島南東方のさんご礁に向けて進行し、23時20分長島灯台から125度300メートルの地点において、原針路、原速力のままさんご礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の南南東風が吹き、潮候はほぼ低潮時であった。
 乗揚の結果、右舷船首から船尾船底にかけて多数の破口を生じて浸水し、のち廃船とされた。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、与論島東方沖から、操業を終えて汀間漁港に向けて帰航中、居眠り運航の防止措置が不十分で、長島南東方のさんご礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、与論島東方沖から、操業を終えて汀間漁港に向けて帰航中、眠気を催した場合、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員と船橋当直を交替するなど居眠り運航防止の措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、大浦湾大北口の転針予定地点までは近いので、居眠りに陥ることはあるまいと思い、休息中の甲板員と船橋当直を交替するなど居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、長島南東方のさんご礁に向首進行して乗揚を招き、右舷船首から船尾船底にかけて多数の破口を生じさせ、のち廃船に至らしめた。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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