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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年門審第131号
件名

油送船宝勝丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年2月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(橋本 學、河本和夫、島 友二郎)

理事官
伊東由人

受審人
A 職名:宝勝丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
指定海難関係人
B 職名: 宝勝丸機関長

損害
左舷後部船底に凹損等

原因
針路選定不適切

主文

 本件乗揚は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年4月23日23時15分
 宮崎県戸崎鼻東方沖合小戸ノ瀬

2 船舶の要目
船種船名 油送船宝勝丸
総トン数 199トン
全長 49.585メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット

3 事実の経過
 宝勝丸は、専ら石油製品の輸送に従事する鋼製油送船で、A受審人及びB指定海難関係人ほか1人が乗り組み、灯油、軽油及びガソリン計560キロリットルを積載し、船首2.30メートル船尾3.60メートルの喫水をもって、平成14年4月22日19時00分山口県徳山下松港を発し、鹿児島県田之脇港へ向かった。
 23時00分A受審人は、田之脇港入港指定時刻まで十分な余裕があったことから、時間調整のため、一旦、大分県杵築湾で投錨して仮泊を行い、翌23日11時20分仮泊を終えて抜錨したのち、船橋当直を、同人、B指定海難関係人及び一等航海士の3人による4時間交替3直制に定め、豊後水道を経て日向灘を南下した。
 16時00分A受審人は、同県鶴御埼南南西方8海里付近で前直の一等航海士と交替して船橋当直に当たり、19時00分細島灯台から112度(真方位、以下同じ。)8.3海里の地点に至ったとき、小戸ノ瀬に向首する202度の針路に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進に掛け、9.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、所定の灯火を表示して進行した。
 ところで、小戸ノ瀬は、宮崎県戸崎鼻東方沖合3.5海里付近に在る浅礁であるが、同瀬と陸岸間の可航幅は約3海里であり、小型船が航行するには十分広い海域であるので、A受審人は、平素から、同瀬西側約1海里の安全な海域を航行していたものであった。
 定針したとき、A受審人は、風及びうねりが東寄りであったことから、やがて西方の戸崎鼻側へ流されて、平素のとおり、小戸ノ瀬の西側約1海里の安全な海域を航行できるものと思い、当該海域に向首する適切な針路とすることなく、リーウェイを勘案して前示小戸ノ瀬に向首する針路を選択するとともに、GPSにも同様の針路を入力して続航した。
 そして、20時00分A受審人は、細島灯台から159度12.4海里の地点に達し、次直のB指定海難関係人に船橋当直を命じたとき、同人が航海当直部員の認定を受けており、これまでも無難に船橋当直を遂行していたことから、東寄りの風及びうねりによる西方へのリーウェイを勘案して小戸ノ瀬に向首する針路としてあることを十分に引き継ぐことなく降橋した。
 こうして、B指定海難関係人は、A受審人の命を受けて船橋当直に当たり、GPSを監視しながら、適宜、当て舵を取り、同画面に入力された小戸ノ瀬に向首する針路上を進行中、23時15分戸崎鼻灯台から091度3.7海里の地点において、宝勝丸は、原針路、原速力で、同瀬の浅所に乗り揚げた。
 当時、天候は雨で風力5の南東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
 乗り揚げたとき、B指定海難関係人は、大波に船底をたたかれたような衝撃を感じたものの、特に不審を抱くこともなく、そのまま小戸ノ瀬を乗り切って進行し、24時00分次直の一等航海士に船橋当直を引き継いで降橋した。
 翌24日01時45分A受審人は、船橋当直の一等航海士からポンプルームのガス警報器が作動した旨の報告を受けて昇橋し、原因を調べたところ、ポンプルーム内に貨油タンクとの隔壁から軽油が漏洩しているのを認めて、乗揚の事実を知り、事後の措置に当たった。
 乗揚の結果、左舷後部船底に凹損、貨油タンク及びポンプルーム間の隔壁に亀裂を生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は、夜間、宮崎県戸崎鼻と小戸ノ瀬間の海域を航行する際、針路の選定が不適切で、同瀬の浅所へ向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、夜間、宮崎県戸崎鼻と小戸ノ瀬間の海域を航行する場合、同瀬西側約1海里の安全な海域を航行するよう適切な針路を選定すべき注意義務があった。ところが、同人は、風及びうねりが東寄りであったことから、やがて西方の戸崎鼻側へ流されて、平素のとおり、小戸ノ瀬の西側約1海里の安全な海域を航行できるものと思い、当該海域に向首する適切な針路とすることなく、リーウェイを勘案して小戸ノ瀬に向首する針路とした職務上の過失により、当直を引き継いだB指定海難関係人が、当て舵を取り、指示された針路のまま進行して同瀬の浅所への乗揚を招き、左舷後部船底に凹損並びに貨油タンク及びポンプルーム間の隔壁に亀裂を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B指定海難関係人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。





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