(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年11月19日11時35分
宮崎県宮崎市白浜海岸
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船正義丸 |
総トン数 |
4.93トン |
登録長 |
9.90メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
213キロワット |
3 事実の経過
正義丸は、FRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、さわらの引き縄漁の目的で、船首0.5メートル船尾0.9メートルの喫水をもって、平成13年11月19日04時30分宮崎県川南漁港を発し、同県宮崎市戸崎鼻北東方4海里沖合の漁場に向かった。
ところで、A受審人は、3月から5月までかつおの一本釣り、5月から9月までしいらの延縄漁、9月から10月までいせえびの刺し網漁及び11月から翌年3月までさわらの引き縄漁に従事しており、連日早朝に出漁、午後遅く帰港していたので、疲労が蓄積し、操舵室内の椅子に腰を掛けて見張りに当たっているとき、しばしば眠気を催したが、水で顔を洗い、立って移動するなどして眠気を払拭していた。
A受審人は、発航後、操舵室の両舷窓及び後方の引き戸を開けて見張りに当たっていたとき、眠気を催したが、水で顔を洗うなどして眠気を払拭して南下し、06時50分漁場に至って操業を始め、漁場を南北方向に往復しながら操業を行い、11時11分日向青島灯台から029度(真方位、以下同じ。)1,220メートルの地点で、針路を190度に定め、機関を微速力前進に掛け、4.0ノットの対地速力で自動操舵により進行して操業を続けた。
その後A受審人は、操舵輪後方に設置した座高70センチメートルの自動車座席を転用した椅子に腰を掛け、各3本の釣り糸を付けた長さ8メートルのグラスファイバー製の各竿を両舷正横より少し前方に各々突き出し、時々それらの竿を見て前方の見張りに当たって操業していたところ、漁もなく、海上も穏やかで周囲に他船もいなかったので気が緩んでいたこと、長時間椅子に腰を掛けていたこと及び疲労の蓄積から居眠りに陥り易い状況であったが、居眠りに陥ることはないものと思い、立って移動するなど居眠り運航の防止措置を十分にとることなく進行し、いつしか居眠りに陥った。
11時27分A受審人は、戸崎鼻灯台から344度1,600メートルの地点に達したとき、白浜海岸まで1,100メートルに向首接近していたが、居眠りに陥っていたので、このことに気付かないで続航中、11時35分戸崎鼻灯台から312度850メートルの地点において、正義丸は、白浜海岸から沖合に拡延している岩礁に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、推進器翼、舵及び魚群探知器等に損傷を生じ、自力離礁できず、引船により引き下ろされ、川南漁港に引き付けられ、のち修理された。
(原因)
本件乗揚は、宮崎県宮崎市戸崎鼻沖合の日向灘で操業中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同市白浜海岸に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、宮崎県宮崎市戸崎鼻沖合の日向灘で操業する場合、漁もなく、海上も穏やかで周囲に他船もいなかったので気が緩んでいたこと、長時間椅子に腰を掛けていたこと及び疲労の蓄積から居眠りに陥り易い状況であったから、居眠り運航とならないよう、立って移動するなど居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠りに陥ることはないものと思い、居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により、いつしか居眠りに陥り、同市白浜海岸に向首進行して同海岸から拡延している岩礁への乗揚を招き、推進器翼、舵及び魚群探知器等に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して、同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。