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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 乗揚事件一覧 >  事件





平成14年門審第121号
件名

プレジャーボートプレステージ2乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成15年1月23日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(長浜義昭)

副理事官
小俣幸伸

受審人
A 職名:プレステージ2船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
バラストキール取付部に亀裂等

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年11月17日12時59分
 福岡県倉良瀬戸

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートプレステージ2
総トン数 9.7トン
登録長 11.27メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 36キロワット

3 事実の経過
 プレステージ2は、船体中央部にバラストキールを有するFRP製ヨットで、九州を周航する目的で、A受審人ほか2人が乗り組み、最大1.6メートルの喫水をもって、平成13年11月17日09時00分関門港を発し、博多港に向かった。
 A受審人は、九州沿岸を航行するのは今回が初めてであり、倉良瀬戸を経由せずに福岡県大島の西側海域を航行する予定で、響灘を西行していたところ、11時00分半妙見埼灯台から049度(真方位、以下同じ。)4.0海里の地点において、折からの北西風を正横方から受けて機帆走するために、九州北岸の鐘ノ岬と地ノ島との間の水域を経て倉良瀬戸を通航することとし、保有していた海図第201号(倉良瀬戸至角島)を一見しただけで、針路を鐘ノ岬に向く243度に定め、ジブ及びメインセールをアビーム状態に展張し、機関を全速力前進にかけ、機帆走により6.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。
 12時03分半A受審人は、鐘崎港西防波堤灯台から059度5.5海里の地点に達したとき、定針時に海図第201号を一見しているので大丈夫と思い、同海図上で倉良瀬戸の水深の状況を精査するなど水路調査を十分に行わなかったので、地ノ島南端から南東方に約800メートル拡延する浅礁の存在に気付かず、自らが手動操舵と操船につき、針路を鐘ノ岬と地ノ島との中間に向く247度に転じたところ、同浅礁に向首する状況となったことにも気付かないまま、乗組員2人を見張りにあてて続航した。
 12時43分A受審人は、鐘ノ岬まで1.1海里となったとき、再び海図第201号を一見したものの、鐘ノ岬と地ノ島との間の水域に向かう小型漁船を見かけたこともあって、依然、地ノ島南端から拡延する浅礁に向首進行していることに気付かず、同時48分半折からの北東流を受け始め、原針路のまま3度ほど右方に圧流されながら、6.1ノットの速力で同浅礁に向首したまま続航し、12時59分鐘崎港西防波堤灯台から306度1,800メートルの地点において、地ノ島南端から拡延する浅礁に乗り揚げた。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期で、乗揚地点付近には030度方向に流れる0.5ノットの潮流があった。
 乗揚の結果、プレステージ2はバラストキール取付部に亀裂を、及び舵に破損をそれぞれ生じたが、救助船によって引き下ろされ、鐘崎漁港に引き付けられて修理された。

(原因)
 本件乗揚は、関門港から博多港へ向け西行中、倉良瀬戸を初めて航行する際、水路調査が不十分で、地ノ島南端から拡延する浅礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、関門港から博多港へ向け西行中、倉良瀬戸を初めて航行する場合、同瀬戸の水深の状況を保有していた海図第201号により精査するなど水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同海図を一見しているので大丈夫と思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、地ノ島南端から拡延する浅礁の存在に気付かず、同浅礁に向首進行して乗揚を招き、バラストキール取付部に亀裂を、及び舵に破損をそれぞれ生じさせるに至った。





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