(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年11月21日04時30分
山口県萩市相島
2 船舶の要目
船種船名 |
漁船相漁丸 |
総トン数 |
4.0トン |
登録長 |
11.03メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
235キロワット |
3 事実の経過
相漁丸は、刺し網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって、平成13年11月21日03時00分山口県相島漁港を発し、同県相島北側200メートル沖合の漁場に向かった。
ところで、相島は、周辺に岩礁が沿布し、小型漁船による刺し網漁などが盛んであり、同島北西岸の通ヶ鼻に萩相島灯台が設置されており、北東岸端から岩礁が北東方向に150メートル拡延し、その岩礁北東端から北東方約80メートルのところに蛎磯が存在していた。
また、A受審人は、相島周辺海域の漁場で通年刺し網漁に従事しており、平素、夕方、漁場に刺し網を設置してその両端に発泡スチロール製俵形の白色浮標(以下「刺し網浮標」という。)を取り付け、一旦帰港し、翌朝、自船にレーダーなどの船位測定装置を装備していなかったものの、再び萩相島灯台の灯光等を目標にして漁場に向かい、漁場に至って低速力で前進し、操舵室上に装備した300ワットで300ないし400メートルを照らすことのできる旋回式探照灯(以下「探照灯」という。)により刺し網浮標を見つけて操業を行い、操業を終えて発航前、月明かりもなく、萩相島灯台以外何も見えない状況となったときには、その海域については良く知っていたので、探照灯で周囲を照らし、蛎磯や相島の海岸を視認し、船位の確認を十分に行って帰航していた。
03時15分A受審人は、漁場に至って操業を始め、04時29分操業を止め、蛎磯の沖合を航行して帰途に就くこととし、操舵室右舷側操舵輪後方で左手に舵輪を持って立ち、乗組員1人を自らの左側に、残りの乗組員1人を同室後方の甲板上にそれぞれ立たせ、同時29分半わずか過ぎ、萩相島灯台から099度(真方位、以下同じ。)1,800メートルの地点を発進したとき、自船の南方180メートルのところに蛎磯が存在していたが、操業中蛎磯上にちらちら見えていた釣人の明かりが見えなくなったことから、自船が潮により蛎磯の北東方沖合に大分流され、南方向に蛎磯が存在しないものと思い、探照灯で周囲を照らし、蛎磯や相島の海岸を視認して船位の確認を十分に行うことなく、針路を172度に定め、機関を全速力前進に掛け、14.0ノットの対地速力で進行した。
その後A受審人は、依然探照灯で周囲を照らして船位の確認を十分に行わないで蛎磯に気付かず、同磯に向首したまま続航中、04時30分萩相島灯台から104度1,850メートルの地点において、相漁丸は、原針路、原速力のまま蛎磯に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力1の南東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、月齢は5.5で月没時刻は22時23分であった。
乗揚の結果、船底に亀裂を伴う凹損、舵及び推進器翼に損傷を生じた。
(原因)
本件乗揚は、夜間、山口県萩市相島北側の漁場から帰航する際、船位の確認が不十分で、同島北東方沖合の蛎磯に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、山口県萩市相島北側の漁場から帰航する場合、蛎磯を安全に替わすことができるよう、探照灯で周囲を照らし、蛎磯や相島の海岸を視認して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、操業中蛎磯上にちらちら見えていた釣人の明かりが見えなくなったことから、自船が潮により蛎磯の北東方沖合に大分流され、南方向に蛎磯が存在しないものと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、蛎磯に向首進行して同磯への乗揚を招き、船底に亀裂を伴う凹損、舵及び推進器翼に損傷を生じさせるに至った。