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平成15年門審第2号
件名

貨物船エイジアン オーキッド貨物船フェンシュン7衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年3月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(上野延之、西村敏和、米原健一)

理事官
伊東由人

指定海難関係人
A 職名:エイジアン オーキッド船長

損害
エ 号・・・左舷後部外板に亀裂を伴う凹損
フ 号・・・左舷船首部を圧壊

原因
フ 号・・・動静監視不十分、港則法の航法(避航動作)不遵守(主因)
エ 号・・・港則法の航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、航路から航路外に出ようとするフェンシュン7が、動静監視不十分で、航路を航行するエイジアン オーキッドの進路を避けなかったことによって発生したが、エイジアン オーキッドが、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年10月13日23時07分
 関門航路

2 船舶の要目
船種船名 貨物船エイジアン オーキッド 貨物船フェンシュン7
総トン数 7,355トン 2,875トン
長さ 136.42メートル 90.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 7,060キロワット 1,691キロワット

3 事実の経過
 エイジアン オーキッド(以下「エ号」という。)は、主にフィリピン共和国と日本諸港間の果物等輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A指定海難関係人ほか日本国籍の1人とフィリピン共和国籍の17人が乗り組み、バナナ1,523トンを積載し、船首4.25メートル船尾6.35メートルの喫水をもって、平成13年10月13日19時20分博多港を発し、神戸港に向かった。
 エ号は、船橋当直(以下「当直」という。)を0時から4時までを二等航海士が、4時から8時までを一等航海士が、8時から12時までを三等航海士がそれぞれ立直する4時間3直制として各直に甲板手1人を副直に付け、入出港時、狭水道通過時、視界制限状態時等には、船長が操船指揮を執ることとしていた。
 A指定海難関係人は、発航時から法定灯火を表示させ、21時50分福岡県男島西方5海里付近で、関門海峡通峡のために昇橋し、22時30分藍島北方1.4海里沖合で、三等航海士から当直を引き継ぎ、自らが操船指揮を執り、三等航海士を補佐に、甲板手を操舵にそれぞれ当たらせ、機関を港内速力として徐々に速力を落としながら、同時47分関門航路に入航し、同航路を航行した。
 22時55分A指定海難関係人は、台場鼻灯台から355.5度(真方位、以下同じ。)1,900メートルの地点で、針路を217度に定め、機関を極微速力前進に掛け、折からの北の潮流に抗して6.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行し、23時01分左舷船首方約2,600メートルにフェンシュン7(以下「フ号」という。)の白、白、緑3灯を初めて視認して続航した。
 23時02分A指定海難関係人は、関門航路第3号灯浮標(以下関門航路を冠する灯浮標は「関門航路」を省略する。)と並航する、台場鼻灯台から312度1,260メートルの地点に達したとき、針路を同航路に沿う、180度に転じて進行した。
 転針したとき、A指定海難関係人は、左舷船首24度2,260メートルのところにフ号の白、白、緑3灯を認めるようになり、同船が関門第2航路に向かって関門航路外に出ようと航路を航行する自船に対して衝突のおそれのある態勢で接近する状況になったが、汽笛で長音3声を吹鳴したものの、フ号はやがて右転して関門航路に沿う針路とするものと思い、フ号が避航動作の気配を見せないまま間近に接近しても直ちに機関を全速力後進に掛けて行きあしを止めるなど、衝突を避けるための協力動作をとることなく、そのまま続航した。
 23時06分A指定海難関係人は、台場鼻灯台から276度950メートルの地点に差し掛かったとき、左舷船首至近にフ号を認めるようになり、衝突の危険を感じ、右舵一杯、機関を微速力前進としたが及ばず、23時07分台場鼻灯台から265度950メートルの地点において、エ号は、船首が204度に向き、8.0ノットの速力になったとき、フ号の船首が、エ号の左舷後部に前方から44度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期で、衝突地点付近には0.4ノットの北流があった。
 また、フ号は、専ら中華人民共和国(以下「中国」という。)、大韓民国及び日本諸港間の雑貨輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、中国国籍の船長Tほか同国籍の15人が乗り組み、鉄屑3,844トンを積載し、船首5.40メートル船尾6.40メートルの喫水をもって、同日15時00分大分港を発し、中国泰州港に向かった。
 フ号は、当直を0時から4時までを二等航海士が、4時から8時までを一等航海士が、8時から12時までを三等航海士がそれぞれ立直する4時間3直制として各直に甲板手1人を副直に付け、入出港時、狭水道通過時、視界制限状態時等には、船長が操船指揮を執ることとしていた。
 T船長は、日没時から法定灯火を表示させ、21時22分下関南東水道第3号灯浮標付近を航過するころ、関門海峡通峡のために昇橋し、三等航海士から当直を引き継ぎ、自らが操船指揮を執り、三等航海士を補佐に、甲板手を操舵にそれぞれ当たらせ、機関を港内速力とし、同時58分関門航路に入航して同航路を航行し、23時00分台場鼻灯台から167度1,720メートルの地点で、針路を320度に定め、機関を全速力前進に掛け、折からの北の潮流に乗じて9.7ノットの速力で進行した。
 23時02分T船長は、台場鼻灯台から180度1,220メートルの地点に達したとき、右舷船首16度2,260メートルのところにエ号の白、白、紅3灯を初めて視認し、同船が関門航路に沿って左転したことから、自船が関門第2航路に向かって関門航路外に出ようと航路を航行するエ号に対して衝突のおそれのある態勢で接近する状況になったが、自船のはるか前方を横切る元の針路に戻るよう促すため、エ号に対して閃光5回の発光信号を発し、発光信号を行ったので、そのうち元の針路に戻すものと思い、その後左舷正横少し前至近のところの同航船に気を奪われて、エ号に対して動静監視を十分に行わず、同船が衝突のおそれのある態勢で接近する状況に気付かず、同船の進路を避けることなく、そのまま続航した。
 23時06分少し過ぎT船長は、台場鼻灯台から253.5度850メートルの地点に差し掛かったとき、右舷船首至近に迫ったエ号を認めるようになり、衝突の危険を感じ、閃光5回の発光信号を発し、右舵一杯、機関を全速力後進に掛けたが及ばず、フ号は、船首が340度に向き、5.0ノットの速力となったとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、エ号は左舷後部外板に亀裂を伴う凹損を生じ、フ号は左舷船首部を圧壊し、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、台場鼻付近の関門航路において、同航路から航路外に出ようとするフ号が、動静監視不十分で、同航路を航行するエ号の進路を避けなかったことによって発生したが、エ号が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(指定海難関係人の所為)
 A指定海難関係人が、夜間、台場鼻付近の関門航路において、同航路を航行中、同航路から航路外に出ようとするフ号が、衝突のおそれのある態勢で避航動作を見せないまま接近するのを認めた際、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことは、本件発生の原因となる。
 A指定海難関係人に対しては、勧告しないが、夜間、台場鼻付近の関門航路において、同航路から航路外に出ようとする他船が、衝突のおそれのある態勢で避航の動作を見せないまま接近するのを認めた際、衝突を避けるための協力動作をとるように努めなければならない。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図
(拡大画面:42KB)





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