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平成14年門審第37号
件名

油送船第十八東亜丸油送船みち丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年3月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(上野延之、米原健一、橋本 學)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:第十八東亜丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
B 職名:みち丸船長 海技免状:三級海技士(航海)

損害
東亜丸・・・球状船首部を圧壊及び右舷船首部外板に凹損
みち丸・・・右舷後部外板及び船橋構造物に凹損

原因
東亜丸・・・船員の常務(右側通行)不遵守
みち丸・・・船員の常務(衝突避航措置)不遵守

主文

 本件衝突は、第十八東亜丸が、掘下げ済水路の右側端に寄って航行しなかったばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、みち丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年6月29日19時31分
 宇部港

2 船舶の要目
船種船名 油送船第十八東亜丸 油送船みち丸
総トン数 699トン 484トン
全長 71.78メートル 59.96メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット 735キロワット

3 事実の経過
 第十八東亜丸(以下「東亜丸」という。)は、専ら本邦諸港間の精製油輸送に従事する船尾船橋型タンカーで、A受審人ほか6人が乗り組み、空倉のまま、船首0.90メートル船尾3.70メートルの喫水をもって、平成13年6月29日14時05分博多港を発し、宇部港に向かった。
 A受審人は、船橋当直(以下「当直」という。)を0時から4時までを甲板長が、4時から8時までを一等航海士が、8時から12時までを自らがそれぞれ立直する4時間3直制としていた。
 ところで、宇部港には、法定航路はないが、港内西端の西部石油専用桟橋及び西沖の桟橋に至る水路(以下「掘下げ済水路」という。)が設けられ、同水路は、山口県本山岬南東方1.6海里付近の沖合にその出入口(以下「南側出入口」という。)があり、南側出入口から北北西方向へ長さ約2,200メートル、可航幅約140メートル及び水深7.5メートルで、南側出入口に宇部港本山第1号灯浮標(以下、宇部港本山を冠する灯浮標については「宇部港本山」を省略する。)及び第2号灯浮標が設置され、第1号灯浮標から北北西方向約1,100メートルのところに第4号灯浮標、同灯浮標から同方向約1,100メートル付近に掘下げ済水路の桟橋側出入口(以下「北側出入口」という。)を示す第5号及び第6号両灯浮標がそれぞれ設置されていた。
 また、北側出入口から第4号灯浮標方向約500メートルまでの掘下げ済水路外東西両側は、水深が5メートル以下の浅い海域であった。
 18時30分A受審人は、部埼灯台から北方1,600メートルの沖合で昇橋し、一等航海士から引き継いで当直に就き、19時00分乗組員を入港及び荷役の準備に、同時19分少し前機関長を機関操縦装置後方で主機関操作にそれぞれ当たらせて東行した。
 19時20分A受審人は、沖ノ瀬灯浮標から197.5度(真方位、以下同じ。)870メートルの地点で、針路を069度に定めて手動操舵とし、機関を半速力前進に掛け、9.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で進行した。
 19時21分半A受審人は、北方の西部石油株式会社山口製油所第5号桟橋(以下「第5号桟橋」という。)付近に離桟作業をしているみち丸を認め、同時24分少し前機関を微速力前進に落として7.9ノットの速力とし、同時24分半第4号灯浮標300メートル手前の、沖ノ瀬灯浮標から111度1,010メートルの地点に達したとき、みち丸が第5号桟橋を離れ、回頭して北側出入口方向に向かいつつあるのを認め、平素、掘下げ済水路を航行する際には、同水路の右側端に寄って航行していたものの、みち丸より早く北側出入口を航過し、同船と掘下げ済水路外北側の広い海域で行き会うことができるものと思い、大きく迂回し、同水路の右側端に寄って航行することなく、針路を357度に転じ、同時26分少し前機関を極微速力前進に落として6.3ノットの速力で、同水路に対して斜航する態勢で、同水路外西側を北側出入口中央に向けて続航した。
 19時28分少し前A受審人は、第4号灯浮標と北側出入口の中間付近の、沖ノ瀬灯浮標から070度960メートルの地点で掘下げ済水路に入ったとき、左舷19度910メートルのところに北側出入口に向かうみち丸を認めるようになり、その後同船と衝突のおそれのある態勢で接近する状況であったが、自船が依然としてみち丸より早く北側出入口を航過し、同船と掘下げ済水路外北側の広い海域で行き会うことができるものと思い、直ちに機関を全速力後進に掛けて行きあしを止めるなど、衝突を避けるための措置をとらないまま機関を停止して4.1ノットの前進惰力で、同船を注視しながら進行した。
 19時30分少し過ぎA受審人は、みち丸の汽笛の吹鳴を聞いたので、自船も汽笛で短音一声を吹鳴したが、右舷の掘下げ済水路外側が浅い海域なので右転しないまま続航し、同時31分少し前左舷船首至近に迫ったみち丸を認めるようになり、衝突の危険を感じ、左舵一杯としたが及ばず、19時31分沖ノ瀬灯浮標から050度1,140メートルの地点において、東亜丸は、船首が341度に向き、速力が3.0ノットになったとき、その船首がみち丸の右舷後部に前方から45度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力2の南西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で、日没時刻は19時31分であった。
 また、みち丸は、専ら本邦諸港間の精製油輸送に従事する船尾船橋型タンカーで、B受審人ほか5人が乗り組み、航空機用燃料1,000キロリットルを積載し、船首3.50メートル船尾4.50メートルの喫水をもって、同日19時20分第5号桟橋を発し、博多港に向かった。
 B受審人は、離桟操船をしたのち、19時25分沖ノ瀬灯浮標から011度1,580メートルの地点で、針路を北側出入口に向かう146度に定めて手動操舵とし、機関を半速力前進に掛け、5.4ノットの速力で進行した。
 定針したとき、B受審人は、右舷船首15度1,900メートルのところに北上する東亜丸を初めて視認し、19時28分少し前沖ノ瀬灯浮標から026度1,300メートルの地点に達したとき、右舷船首12度910メートルに同船を認めるようになり、その後同船が掘下げ済水路を斜航して北側出入口中央に向け、衝突のおそれのある態勢で接近する状況であったが、入航する東亜丸が出航する自船を避けるものと思い、直ちに機関を使用して行きあしを止めるなど、衝突を避けるための措置をとらないで、東亜丸を注視しながら続航した。
 19時30分少し過ぎB受審人は、汽笛による長音一声を吹鳴し、東亜丸から汽笛の短音一声の吹鳴を聞いたが、依然自船を避けないで接近する東亜丸と衝突の危険を感じ、機関を中立にし、左舵一杯としたが及ばず、みち丸は、船首が116度に向き、速力が4.5ノットになったとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、東亜丸は球状船首部を圧壊及び右舷船首部外板に凹損を、みち丸は右舷後部外板及び船橋構造物に凹損をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、宇部港において、東亜丸が、掘下げ済水路の右側端に寄って航行しなかったばかりか、衝突を避けるための措置をとらなかったことと、みち丸が、衝突を避けるための措置をとらなかったこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人が、宇部港において、港内西端の西部石油専用桟橋に着桟するため入航中、同桟橋を離れ、回頭して北側出入口方向に向かいつつあるみち丸を認めた場合、大きく迂回し、掘下げ済水路の右側端に寄って航行すべき注意義務があった。しかるに、同人は、みち丸より早く北側出入口を航過し、同船と掘下げ済水路外北側の広い海域で行き会うことができるものと思い、同水路の右側端に寄って航行しなかった職務上の過失により、同水路に対して斜航する態勢で航行してみち丸との衝突を招き、東亜丸の球状船首部を圧壊及び右舷船首部外板に凹損を生じさせ、みち丸の右舷後部外板及び船橋構造物に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人が、宇部港において、港内西端の西部石油専用桟橋から離れ、掘下げ済水路の北側出入口に向かって出航中、右舷船首方に衝突のおそれのある態勢の東亜丸が、避航の気配のないまま掘下げ済水路を斜航して間近に接近するのを認めた場合、同船と著しく接近しないよう、直ちに機関を使用して行きあしを止めるなど、衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、入航する東亜丸が出航する自船を避けるものと思い、機関を使用して行きあしを止めるなど、衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により、そのまま進行して東亜丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図





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