(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年6月10日14時15分
明石海峡西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船ひので丸 |
漁船明石丸 |
総トン数 |
274トン |
4.8トン |
全長 |
57.72メートル |
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登録長 |
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11.80メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
735キロワット |
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漁船法馬力数 |
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15 |
3 事実の経過
ひので丸は、船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、大豆かす600トンを載せ、船首2.6メートル船尾3.7メートルの喫水をもって、平成14年6月10日11時30分神戸港を発し、鹿児島港に向かった。
単独で船橋当直に当たったA受審人は、13時57分少し過ぎ明石海峡西方沖合に当たる、江埼灯台から271.5度(真方位、以下同じ。)2.7海里の地点において、針路を播磨灘航路第6号灯浮標に向かう246度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの潮流に抗して8.8ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で自動操舵により進行した。
14時03分少し過ぎA受審人は、江埼灯台から265.5度3.5海里の地点に達したとき、左舷船首5.5度1.5海里のところに、西行中の明石丸を初めて視認したが、同船の速力模様や船体後部のやぐらにより、底びき網漁を行っている漁船と判断し、明石丸がごく遅い速力なので、その右舷方を無難に航過できるものと思い、衝突のおそれの有無を判断できるよう、動静監視を十分に行うことなく、同時05分操舵室左舷後部の海図台に赴き、備讃瀬戸や来島海峡の潮流などの調査を始めた。
こうして、A受審人は、その後明石丸に衝突のおそれがある追い越し態勢で接近していることに気付かず、同船を確実に追い越し、かつ、十分に遠ざかるまでその進路を避けずに続航中、14時15分江埼灯台から259度5.2海里の地点において、ひので丸は、原針路原速力のまま、その左舷船首部が、明石丸の右舷側中央部に後方から24度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風はなく、視界は良好で、衝突地点付近には約1.3ノットの東流があった。
また、明石丸は、底びき網漁業に従事する船体中央部に操舵室を備えたFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、かれい漁の目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、同日10時30分兵庫県明石港を発し、明石海峡西方沖合の漁場に至り、繰り返し操業を行った。
13時54分少し前B受審人は、江埼灯台から257.5度4.6海里の地点において、漁網を投入して引き索を180メートル延出し、船橋上部のマストに所定の形象物を掲げ、針路を270度に定め、主機の回転数を全速力前進の毎分2,900にかけ、折からの潮流に抗して1.7ノットのえい網速力で手動操舵により進行した。
B受審人は、漁獲した魚の選別整理作業を行ったのち、操舵室でいすに座り操舵に当たって続航し、14時03分少し過ぎ江埼灯台から258.5度4.9海里の地点に達したとき、右舷船尾29.5度1.5海里のところに、西行中のひので丸を視認し得る状況であったが、左舷前部に備えた魚群探知器で水深などを確かめることに気を取られ、後方から接近する同船を見落とさないよう、後方の見張りを十分に行わなかったので、ひので丸の存在に気付かなかった。
こうして、B受審人は、その後ひので丸が衝突のおそれがある追い越し態勢で避航動作をとらないまま接近したが、同船に対して警告信号を行うことも、間近に接近したとき、左転するなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく進行中、明石丸は、原針路原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、ひので丸は左舷船首部に擦過傷を生じ、明石丸は右舷側中央部外板に破口を生じて転覆し、僚船によって救助されたのち修理された。また、B受審人が全身打撲傷などを負った。
(原因)
本件衝突は、明石海峡西方沖合において、両船が共に西行中、明石丸を追い越すひので丸が、動静監視不十分で、明石丸の進路を避けなかったことによって発生したが、明石丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、単独で船橋当直に当たり、明石海峡西方沖合を西行中、左舷船首方近距離のところに、西行中の明石丸を初めて視認した場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、同船がごく遅い速力であるから、その右舷方を無難に航過できるものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、その後明石丸に衝突のおそれがある追い越し態勢で接近していることに気付かず、同船の進路を避けずに進行して衝突を招き、自船の左舷船首部に擦過傷を生じ、明石丸の右舷側中央部外板に破口を生じて転覆させ、また、B受審人に全身打撲傷などを負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、明石海峡西方沖合において、底びき網をえい網しながら西行する場合、後方から接近するひので丸を見落とさないよう、後方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、魚群探知器で水深などを確かめることに気を取られ、後方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、同船の存在と接近に気付かず、ひので丸が衝突のおそれがある追い越し態勢で避航動作をとらないまま間近に接近したとき、左転するなど衝突を避けるための協力動作をとることなく進行して衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせ、自らが負傷するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。