(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年8月4日03時35分
高知県高知港
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船第五えびす丸 |
総トン数 |
199トン |
全長 |
58.50メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
588キロワット |
3 事実の経過
第五えびす丸(以下「えびす丸」という。)は、鋼製貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、重量約150トンの荷役機械を積載し、船首1.2メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成14年8月3日12時10分香川県多度津港を発し、高知県高知港に向かった。
ところで、高知港は、港口が太平洋に面して東方に開き、その北側には、高知新港埋立地の護岸及び長さ約300メートルの仮防波堤が、南側には、いずれも長さ約540メートルの高知港口防波堤(以下「港口防波堤」という。)及び南防波堤が、西側には、長さ約250メートルの種崎防波堤がそれぞれ築造されており、港口防波堤、南防波堤及び種崎防波堤の各東端部に、高知港口防波堤灯台(以下「港口灯台」という。)、高知港南防波堤東仮設灯台(以下「東仮設灯台」という。)及び高知港種崎防波堤灯台(以下「種崎灯台」という。)がそれぞれ設置されていた。
A受審人は、3箇月ほど前にも高知港に入港したことがあったので、港口付近の各防波堤の配置や港口中央に工事作業区域が設定されていることなど、港内の水路事情を十分に承知していた。
A受審人は、23時40分高知県室戸岬沖合で、一等航海士から船橋当直を引き継いで単独で操船に当たり、翌4日03時13分高知港港域に至り、同時15分港口灯台から090度(真方位、以下同じ。)1,600メートルの地点で、船首目標を同灯台に定めて針路を270度とし、機関を極微速力前進にかけ、2.5ノットの対地速力で、港口灯台との距離が600メートルになったら針路を種崎灯台に向けて転じる予定で、手動操舵により進行した。
A受審人は、出航漁船に留意しながら入航していたところ、東仮設灯台に並航したとき、右舷前方に黄色点滅灯を点灯した操業中らしき漁船1隻を認め、これまで高知港内で操業中の漁船を見かけたことがなかったことから、その後同船の動向に気をとられ、船位の確認を十分に行わなかった。
こうして、A受審人は、03時27分半予定転針地点を通過したことに気付かず、港口防波堤に向首したまま続航中、同時35分少し前船首方至近に迫った同防波堤を認め、右舵一杯としたが及ばず、03時35分港口灯台から090度20メートルの地点において、えびす丸は、340度に向いたとき、原速力のまま、その左舷中央部が同防波堤東端の消波ブロックに衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期で視界は良好であった。
衝突の結果、船体中央部左舷側外板に亀裂などを生じたが、のち修理された。
(原因)
本件防波堤衝突は、夜間、高知県高知港に入航する際、船位の確認が不十分で、予定転針地点を通過して港口防波堤に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、高知県高知港に入航する場合、転針時機を失することのないよう、レーダーにより船首目標との距離を測定するなどして、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷前方の操業中らしき漁船の動向に気をとられ、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、予定転針地点を通過したことに気付かず、港口防波堤に向首したまま進行して同防波堤東端の消波ブロックへの衝突を招き、船体中央部左舷側外板に亀裂などを生じさせるに至った。