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平成14年横審第131号
件名

貨物船ラタナ チダ油送船ウー リョン衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年3月25日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(原 清澄、花原敏朗、甲斐賢一郎)

理事官
織戸孝治

損害
ラ 号・・・右舷船首部に凹損
ウ 号・・・左舷船尾部に破口等
乗組員2人が頭部打撲及び頚椎捻挫

原因
ラ 号・・・狭視界時の航法(信号、レーダー、速力)不遵守
ウ 号・・・狭視界時の航法(信号、レーダー、速力)不遵守

主文

 本件衝突は、ラタナ チダが、視界制限状態における運航が適切でなかったことと、ウー リョンが、視界制限状態における運航が適切でなかったこととによって発生したものである。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年7月5日02時15分
 三重県安乗埼東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船ラタナ チダ 油送船ウー リョン
総トン数 13,188トン 1,448トン
全長 151.20メートル 83.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 12,280キロワット 2,059キロワット

3 事実の経過
 ラタナ チダ(以下「ラ号」という。)は、船尾船橋型のコンテナ船で、船長A及び二等航海士Bほか17人が乗り組み、総重量が3,037トンとなったコンテナ359TEUを積載し、船首5.8メートル船尾7.4メートルの喫水をもって、平成14年7月4日22時23分名古屋港を発し、大阪港に向かった。
 翌5日02時00分B二等航海士は、安乗埼(あのりさき)灯台から054.5度(真方位、以下同じ。)7.5海里に達したとき、A船長から船橋当直を引き継ぎ、針路を192度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.4ノットの対地速力(以下「速力」という。)で自動操舵により進行した。
 B二等航海士は、定針時に4海里ばかりあった視界が霧のため徐々に狭められる状況であったので、自動衝突予防援助装置付のレーダーを使用して周囲の見張りにあたり、02時05分半安乗埼灯台から065度6.4海里の地点に達したとき、レーダーレンジを6マイルとしていたところ、右舷船首5度4.7海里に北上するウー リョン(以下「ウ号」という。)のレーダー映像を初めて探知した。
 B二等航海士は、ウ号を初認したとき、視程が約1,100メートルと著しく狭められた状況となっていたが、霧中信号を吹鳴することも、安全な速力に減じることもなく続航した。
 02時09分少し過ぎB二等航海士は、安乗埼灯台から073度5.8海里の地点に達したとき、右舷船首7度2.9海里にウ号のレーダー映像を探知することができ、その後、同船と著しく接近することを避けることができない状況となったが、同船と互いに右舷を対して航過できるものと思い、レーダープロッティングその他の系統的な観察を行うなど、レーダーによる動静監視を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、速やかに針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなく進行した。
 02時13分B二等航海士は、安乗埼灯台から084度5.5海里の地点に達したとき、ウ号が右転し、自船の前路を塞ぐ(ふさぐ)態勢で接近していることに気付かず続航し、同時15分少し前右舷船首至近にウ号の白、白、紅3灯を初めて視認し、衝突の危険を感じ、右舵一杯をとり、速力を減じたが、及ばず、02時15分安乗埼灯台から090度5.4海里の地点において、原針路、原速力のまま、ラ号の右舷船首部が、ウ号の左舷船尾部に後方から48度の角度をもって衝突した。
 当時、天候は霧で風はほとんどなく、視程は約1,100メートルで、潮候は下げ潮の初期であった。
 また、ウ号は、船尾船橋型の油送船で、船長E及び二等航海士Uほか10人が乗り組み、空倉のまま、船首2.2メートル船尾4.3メートルの喫水をもって、同月3日10時35分大韓民国釜山港を発し、三重県四日市港に向かった。
 翌々5日01時24分U二等航海士は、大王埼灯台から158度5.4海里の地点に達したとき、針路を018度に定め、機関を全速力前進にかけ、13.0ノットの速力で自動操舵により進行した。
 01時40分ころU二等航海士は、霧のため視程が2.0海里から1.5海里へと徐々に狭められる状況となったのを認めたが、霧中信号を吹鳴することも、安全な速力に減じることもなく続航し、02時04分安乗埼灯台から121.5度4.9海里の地点に達したとき、レーダーレンジを6マイルとしていたところ、左舷船首2度5.6海里にラ号のレーダー映像を初めて探知し、互いに左舷を対して航過するものと思い、針路及び速力を保ったまま進行した。
 02時09分少し過ぎU二等航海士は、安乗埼灯台から103度4.8海里の地点に至り、ラ号を右舷船首1度2.9海里に認めることができ、その後、同船と著しく接近することを避けることができない状況となったが、レーダープロッティングその他の系統的な観察を行うなど、レーダーによる動静監視を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、速やかに針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも、必要に応じて行きあしを止めることもなく続航した。
 02時13分U二等航海士は、安乗埼灯台から093.5度4.9海里に地点に至り、ラ号との航過距離を拡げようと右舵をとって針路を040度に転じ、同船のレーダー映像を左舷船首15度1.0海里に見る態勢となって進行し、同時14分少し前安乗埼灯台から092度5.0海里の地点に達したとき、左舷船首13度1,100メートルに迫ったラ号の白、白、緑3灯を初めて視認し、衝突の危険を感じ、汽笛による短音を連続して吹鳴するとともに、右舵一杯としたが、及ばず、船首が144度を向いたとき、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、ラ号は、右舷船首部に凹損を、ウ号は、左舷船尾部に破口等をそれぞれ生じた。また、ウ号の乗組員2人が頭部打撲及び頸椎捻挫などを負った。

(原因)
 本件衝突は、夜間、霧で視界制限状態となった三重県安乗埼東方沖合において、南下するラタナ チダが、霧中信号を吹鳴しなかったばかりか、安全な速力に減じて航行せず、レーダーによる動静監視が不十分で、前方に探知したウー リョンと著しく接近することを避けることができない状況となったとき、速やかに針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを止めなかったことと、北上するウー リョンが、霧中信号を吹鳴しなかったばかりか、安全な速力に減じて航行せず、レーダーによる動静監視が不十分で、前方に探知したラタナ チダと著しく接近することを避けることができない状況となったとき、速やかに針路を保つことができる最小限度の速力に減じず、必要に応じて行きあしを止めなかったこととによって発生したものである。

 よって主文のとおり裁決する。 


参考図





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