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平成15年横審第11号
件名

遊漁船第十八美江丸プレジャーボートペスカ衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年3月20日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(甲斐賢一郎)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:第十八美江丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:ペスカ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士

損害
美江丸・・・右舷船首外板に破口を伴う亀裂
ペスカ・・・左舷船尾ガンネル及び甲板上の操縦台等を圧壊

原因
美江丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
ペスカ・・・動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第十八美江丸が、見張り不十分で、前路で漂泊するペスカを避けなかったことによって発生したが、ペスカが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月6日06時10分
 神奈川県江ノ島南西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第十八美江丸 プレジャーボートペスカ
全長 17.63メートル 6.44メートル
総トン数 13トン  
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 496キロワット 53キロワット

3 事実の経過
 第十八美江丸(以下「美江丸」という。)は、フライングブリッジを有するFRP製遊漁船で、A受審人が単独で乗り組み、釣り客4人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.6メートル船尾1.6メートルの喫水をもって、平成13年7月6日05時35分神奈川県湘南港の係留地を発し、神奈川県江ノ島南西方約3海里の釣り場に向かった。
 A受審人は、05時57分江ノ島灯台から103度(真方位、以下同じ。)1,200メートルの地点に達したとき、機関を回転数毎分1,600にかけ、15.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で、江ノ島南方沖合に設置された定置網の南端の標識を右舷側に見て航過するよう、船首を216度方向に定め、折からの南からのうねりの影響で右方に偏しがちであるのをフライングブリッジの操縦席で手動操舵により修正していたが、右方に3度落とされながら実効針路219度で進行した。
 06時02分少し前A受審人は、江ノ島灯台から181度1,760メートルの地点に至って前示定置網の南端の標識を右舷側100メートルに航過し、その後もうねりの影響で船首が右方に偏しがちであるのを修正していたものの、向首目標がなかったので、さらに右方に落とされ、予定針路線より14度右方に偏しながら、実効針路230度で続航した。
 06時05分A受審人は、江ノ島灯台から206度1.75海里の地点に達したとき、右舷船首14度1.25海里にペスカを視認でき、その後その方位に変化がなく、スパンカを展張している様子から同船が漂泊していることが分かる状況であったが、定置網を航過したとき、周囲を一瞥(いちべつ)して他船を見かけなかったことから、前路に他船はいないものと思い、見張りを十分に行うことなく進行した。
 06時08分A受審人は、江ノ島灯台から213度2.45海里の地点で、右舷船首14度920メートルのところにペスカを視認することができ、衝突のおそれのある態勢で接近していたが、依然として、前路の見張りを十分に行っていなかったので、この状況に気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま続航した。
 A受審人は、06時10分少し前予定の釣り場に接近したことから遊漁の準備を始めるため、フライングブリッジから下の操舵室に降りて魚群探知器の電源を入れようとし、同時10分わずか前同人は、船首ブルワーク越しにペスカの船尾部を至近に認め、急いで機関を後進にかけたが、及ばず、06時10分美江丸は、原針路、原速力のまま、江ノ島灯台から216度2.95海里の地点において、その船首がペスカの左舷船尾部に後方から36度の角度で衝突し、同船の甲板上に乗り揚げた。
 当時、天候は薄曇で風力1の南南東の風が吹き、視界は良好であった。
 また、ペスカは、船体中央やや前部に操縦台が設置されたFRP製プレジャーボートで、B受審人が単独で乗り組み、友人1人を同乗させ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって、同日05時30分神奈川県逗子市田越(たごえ)川左岸の係留地を発し、江ノ島南西方約3海里の釣り場に向かった。
 B受審人は、06時ごろ前示衝突地点付近の釣り場に至り、機関を中立運転とし、船尾にスパンカを展張し、船首を180度に向けて、船首部にボートコントローラーと称する電気モーター駆動の推進装置を取り付け、同装置をコード先端のフットスイッチで操作しながら漂泊して操縦台後方のシートに腰掛け、左舷側に竿を出して釣りを始めた。
 06時05分B受審人は、船首を180度に向けているとき、左舷船尾50度1.25海里に自船に接近する美江丸を初めて視認したが、いずれ同船が避航動作をとるものと思い、その後同船に対する動静監視を十分に行わず、漂泊して釣りを続けた。
 06時08分B受審人は、美江丸が方位の変化がなく920メートルのところに衝突のおそれのある態勢で接近していたが、依然美江丸に対する動静監視を行っていなかったので、この状況に気付かず、機関を使用するなど衝突を避けるための措置をとらないまま釣りを続けた。
 06時10分少し前B受審人は、100メートルに迫った美江丸に気付いたが、どうすることもできず、同乗者とともに、海中に飛び込んだ直後、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、美江丸は、右舷船首外板に破口を伴う亀裂を生じ、ペスカは左舷船尾ガンネル及び甲板上の操縦台等を圧壊したが、その後いずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、江ノ島南西方沖合において、南西進中の第十八美江丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中のペスカを避けなかったことによって発生したが、ペスカが、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、江ノ島南西方沖合において、釣り場に向かう場合、前路で漂泊中のペスカを見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、周囲を一瞥したとき他船を認めなかったことから、前路に他船はいないものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路で漂泊中のペスカに気付かず、同船を避けないまま向首進行して衝突を招き、第十八美江丸の右舷船首外板に破口を伴う亀裂を生じさせ、ペスカの左舷船尾ガンネル及び甲板上の操縦台等を圧壊させるに至った。
 B受審人は、江ノ島南西方沖合において、釣りをしながら漂泊中、第十八美江丸が自船に向かって接近するのを認めた場合、同船が避航動作をとるかどうか判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、第十八美江丸がいずれ避航動作をとるものと思い、同船に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、機関を使用するなど衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続けて、第十八美江丸との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。 


参考図





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