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平成14年横審第138号
件名

漁船第八福一丸漁船第八福洋丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年3月13日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(小須田 敏)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:第八福一丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第八福洋丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
福一丸・・・右舷中央部外板及び燃料油槽に亀裂、燃料油が流出
福洋丸・・・船首部外板に亀裂を伴う凹損

原因
福洋丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
福一丸・・・見張り不十分、注意喚起信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第八福洋丸が、動静監視不十分で、漂泊中の第八福一丸を避けなかったことによって発生したが、第八福一丸が、見張り不十分で、避航を促すための注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年7月31日22時30分
 伊豆諸島ベヨネース列岩南東方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第八福一丸 漁船第八福洋丸
総トン数 14トン 9.7トン
全長   15.80メートル
登録長 13.90メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 478キロワット 250キロワット

3 事実の経過
 第八福一丸(以下「福一丸」という。)は、一本釣り漁業に従事する船体中央部船尾寄りに船室と操舵室からなるキャビンを設けたFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、きはだまぐろ漁の目的で、船首0.6メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成13年7月28日22時00分静岡県焼津港を発し、翌々30日05時00分伊豆諸島ベヨネース列岩の東北東方約5海里の漁場に到着して操業を始め、その後同列岩の南東方約4海里の漁場に移動して操業を繰り返し、翌31日19時30分操業を中断して漂泊を開始した。
 A受審人は、漂泊していることを示すつもりでマスト上に黄色回転灯を掲げ、マスト灯、両舷灯及び船尾灯を消したのち、翌日の操業に備えて乗組員ともども休息をとることとしたが、自船が同回転灯を掲げて漂泊していることから、航行中の他船が避けてくれるものと思い、レーダーに備えた衝突予防援助装置を利用して自船に接近する他船の存在を事前に探知する手段を講じるなど、周囲の見張りを十分に行うことなく、操舵室内に設けた寝台に横たわった。
 こうしてA受審人は、折からの風潮流により船首を315度(真方位、以下同じ。)に向け、北方に圧流されながら漂泊を続け、21時00分ベヨネース列岩中央部から158度3.8海里の地点に差し掛かったとき、右舷船首67度2.4海里のところに第八福洋丸(以下「福洋丸」という。)の存在及びその灯火を認め得る状況であったものの、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かなかった。
 A受審人は、前示方位に船首を向けたまま、22時24分ベヨネース列岩中央部から146.5度2.6海里の地点に達したとき、右舷船首86度1,000メートルのところに、福洋丸が自船に向けて右転しながら衝突のおそれのある態勢となって接近していたが、休息していて避航を促すための注意喚起信号を行うことも、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとることもできないまま漂泊を続け、22時30分福一丸は、ベヨネース列岩中央部から144.5度2.5海里の地点において、その船首が315度に向いていたとき、右舷中央部に福洋丸の船首が直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、付近には北方に流れる1.0ノットの海潮流があった。
 A受審人は、船体の衝撃で衝突に気付き、事後の措置に当たった。
 また、福洋丸は、一本釣り漁業に従事する船体中央部船尾寄りに操舵室を設けたFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、きんめだい漁の目的で、船首0.4メートル船尾2.0メートルの喫水をもって、同年7月30日08時00分静岡県下田港を発し、翌31日04時00分伊豆諸島青ヶ島周辺の漁場に至って操業を始めたものの、芳しい(かんばしい)釣果が得られなかったので、15時00分ベヨネース列岩南東方沖合の漁場に移動することとした。
 21時00分B受審人は、ベヨネース列岩中央部から120度2.7海里の地点に至ったとき、翌日03時からの操業再開に備えて潮上り(しおのぼり)しておくこととし、それまでの圧流量を見定めるために、一旦機関を止めて漂泊を始めた。このとき、同受審人は、自船の南南西方2.4海里のところに福一丸の黄色回転灯を視認し、その後同船の方位及び距離が変わらないことから、福一丸が漂泊していることを知った。
 22時00分B受審人は、ベヨネース列岩中央部から098度2.4海里の地点に至り、北方に1海里圧流されたことから、6海里ほど潮上りするつもりで針路を180度に定め、機関を毎分回転数800にかけて発進した。このとき、同受審人は、福一丸の東方を無難に航過する態勢であったことから、右舷前方で漂泊中の同船と衝突のおそれを生じることはないものと思い、その後その針路で自動操舵に切り替えることを失念したまま、操舵室内の天井灯を点け、操業記録を開いて翌日の操業予定について検討を始めるなど、福一丸に対する動静監視を十分に行うことなく、わずかに右舵をとった状態のまま5.0ノットの対地速力で進行した。
 B受審人は、22時24分ベヨネース列岩中央部から134度2.5海里の地点に達し、船首が215度に向いていたとき、右舷船首6度1,000メートルとなった福一丸に向け、右転しながら衝突のおそれのある態勢となって接近していたが、依然として操業予定を検討することに気をとられ、動静監視不十分でこのことに気付かず、同船を避けることなく続航し、22時30分福洋丸は、その船首が225度に向いたとき、同じ速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、福一丸は、右舷中央部外板及び燃料油槽に亀裂を生じて約200リットルの燃料油が流出し、福洋丸は、船首部外板に亀裂を伴う凹損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、伊豆諸島ベヨネース列岩南東方沖合の漁場において、福洋丸が、動静監視不十分で、漂泊中の福一丸を避けなかったことによって発生したが、福一丸が、見張り不十分で、避航を促すための注意喚起信号を行わず、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、伊豆諸島ベヨネース列岩南東方沖合の漁場において、南下する場合、右舷前方で漂泊中の福一丸と衝突のおそれの有無が判断できるよう、同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、発進時に福一丸の東方を無難に航過する態勢であったことから、同船と衝突のおそれを生じることはないものと思い、動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、わずかな右舵のため、福一丸に向けて右転しながら衝突のおそれのある態勢となって接近していることに気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、福一丸の右舷中央部外板及び燃料油槽に亀裂を生じて燃料油を流出させ、福洋丸の船首部外板に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
 A受審人は、夜間、伊豆諸島ベヨネース列岩南東方沖合の漁場において、漂泊して休息する場合、衝突のおそれのある態勢となって接近する福洋丸を見落とすことがないよう、レーダーに備えた衝突予防援助装置を利用して自船に接近する他船の存在を事前に探知する手段を講じるなど、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、自船が黄色回転灯を掲げて漂泊していることから、航行中の他船が避けてくれるものと思い、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、福洋丸の存在に気付かず、避航を促すための注意喚起信号を行うことも、機関を使用するなどして衝突を避けるための措置をとることもなく漂泊を続けて衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図





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