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平成14年門審第116号
件名

貨物船第十友昇丸漁船大成丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年2月27日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(長浜義昭、米原健一、橋本 學

理事官
畑中美秀

受審人
A 職名:第十友昇丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:大成丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
友昇丸・・・船首に擦過傷
大成丸・・・左舷側後部外板に破口、船長が軽度の腰椎捻挫等

原因
友昇丸・・・見張り不十分、各種船間の航法(避航動作)不遵守(主因)
大成丸・・・各種船間の航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第十友昇丸が、見張り不十分で、漁ろうに従事する大成丸の進路を避けなかったことによって発生したが、大成丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年8月23日22時40分
 伊予灘

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十友昇丸 漁船大成丸
総トン数 199トン 4.98トン
全長 49.58メートル 14.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 735キロワット  
漁船法馬力数   15

3 事実の経過
 第十友昇丸は、船尾船橋型の液体化学薬品ばら積船で、A受審人ほか2人が乗り組み、空倉のまま、船首0.60メートル船尾2.80メートルの喫水をもって、平成13年8月23日10時20分佐賀県伊万里港を発し、宮崎県延岡新港に向かった。
 22時00分A受審人は、大分県臼石鼻灯台から020度(真方位、以下同じ。)12.4海里の地点で、昇橋して単独の船橋当直につき、針路を153度に定め、機関を全速力前進にかけ、折からの北流に抗し10.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、航行中の動力船が掲げる灯火を表示し、自動操舵により進行した。
 22時30分半A受審人は、臼石鼻灯台から044度9.5海里の地点に達したとき、右舷船首7度2.0海里のところに、大成丸の、トロールにより漁ろうに従事している船舶が表示する緑、白2灯及び左舷灯を認めることができる状況となり、その後、その方位がほとんど変わらず衝突のおそれのある態勢で接近していたが、右舷側に認めた3隻ほどのトロール中の漁船がいずれも数個の作業灯を明るく点灯していたことから、前路に漁船がいれば作業灯によって容易にその存在がわかるものと思い、見張りを十分に行っていなかったので、このことに気付かず、大成丸の進路を避けないまま続航した。
 22時38分A受審人は、依然、見張り不十分で、同方位750メートルに接近して緑、白2灯の中間に黄色回転灯を点灯し、その後、更に後部甲板の作業灯4個を点灯した大成丸に気付かないまま進行し、同時40分わずか前至近に迫った同船の明かりを初めて認め、急ぎ左舵一杯としたものの、効なく、22時40分臼石鼻灯台から054度9.1海里の地点において、第十友昇丸は、原針路、原速力のまま、その船首が、大成丸の左舷側後部に、前方から39度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、付近海域には北方に流れる約1.5ノットの潮流があり、視界は良好であった。
 また、大成丸は、小型機船底びき網漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、汽笛を装備しないまま、船首0.15メートル船尾1.00メートルの喫水をもって、同月23日18時00分大分県守江港船だまりを発し、臼石鼻東方沖合の漁場に至って日没後に操業を開始した。
 20時40分B受審人は、臼石鼻灯台から085度6.3海里の地点で、針路を012度に定め、操舵室上部マスト頂部の緑色全周灯1個、その下部の白色全周灯1個、舷灯一対、船尾灯に代えて操舵室の屋根から船尾にかけて船体中央部付近に水平に渡した鉄パイプ製けた(以下「後部甲板上のけた」という。)後端上側に取り付けた白色灯1個をそれぞれ掲げ、2.5ノットのえい網速力でトロールにより漁ろうに従事し、自動操舵により進行した。
 22時26分少し前B受審人は、左舷前方3.0海里に南下する第十友昇丸の白、白2灯を初認した後、同時30分半臼石鼻灯台から055度8.8海里の地点において、左舷船首32度2.0海里のところに同船の白、白、緑3灯を視認し、その後、その方位にほとんど変化がなく、衝突のおそれのある態勢で接近することを認め、同時38分黄色回転灯を点灯したものの、避航の気配がなく更に接近したが、左舷側にトロール中の漁船が3隻ほど散在していたこともあり、同灯を点じた自船に気付いていて、そのうち避航するものと思い、後部甲板上のけたに取り付けた作業灯4個を更に点灯しただけで、行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとることなく続航中、大成丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、第十友昇丸は船首に擦過傷を生じ、大成丸は左舷側後部外板に破口を生じ、機関室に浸水したが、のち修理され、B受審人が軽度の腰椎捻挫等を負った。

(原因)
 本件衝突は、夜間、伊予灘において、南下する第十友昇丸が、見張り不十分で、トロールにより漁ろうに従事している大成丸の進路を避けなかったことによって発生したが、大成丸が、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、伊予灘を南下する場合、前路でトロールにより漁ろうに従事している大成丸を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右舷側に認めた3隻ほどのトロール中の漁船がいずれも数個の作業灯を明るく点灯していたことから、漁船がいれば作業灯によって容易にその存在がわかるものと思い、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で接近するトロールにより漁ろうに従事中の大成丸に気付かず、同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き、第十友昇丸の船首に擦過傷を、大成丸の左舷側後部外板に破口及び機関室に浸水をそれぞれ生じさせ、B受審人に軽度の腰椎捻挫等を負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 B受審人は、夜間、伊予灘において、トロールにより漁ろうに従事中、衝突のおそれのある態勢で来航する第十友昇丸が避航の気配を見せないまま間近に接近したのを認めた場合、行きあしを止めるなど衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、黄色回転灯を点灯したのでそのうち避航してくれるものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、第十友昇丸との衝突を招き、前示の損傷を生じさせ、自らも負傷するに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図





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