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平成14年門審第94号
件名

貨物船第七有明丸貨物船デビ パンプローナ衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年2月13日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(長浜義昭、西村敏和、米原健一)

理事官
関 隆彰

受審人
A 職名:第七有明丸一等航海士 海技免状:三級海技士(航海)

損害
第七有明丸・・・右舷側船尾外板等に凹損
デ 号・・・左舷側後部外板等に凹損

原因
第七有明丸・・・見張り不十分、横切りの航法(避航動作)不遵守(主因)
デ 号・・・警告信号不履行、横切りの航法(協力動作)不遵守(一因)

主文

 本件衝突は、第七有明丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切るデビ パンプローナの進路を避けなかったことによって発生したが、デビ パンプローナが、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成13年10月13日05時05分
 大王埼沖合

2 船舶の要目
船種船名 貨物船第七有明丸 貨物船デビ パンプローナ
総トン数 3,692トン 37,237トン
全長 114.54メートル 176.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 7,060キロワット 11,060キロワット

3 事実の経過
 第七有明丸は、船首船橋型のロールオンロールオフ貨物船で、船長K、A受審人ほか9人が乗り組み、自動車等1,702トンを積載し、船首4.40メートル船尾5.20メートルの喫水をもって、平成13年10月12日19時30分大阪港を発し、千葉港に向かった。
 翌13日04時00分A受審人は、大王埼の南南西20海里付近で甲板手と2人で船橋当直につき、同時40分大王埼灯台から168度11.8海里(真方位、以下同じ。)の地点で、針路を048度に定め、機関を全速力前進にかけ、18.5ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で、法定灯火を表示して自動操舵により進行した。
 04時53分少し前A受審人は、大王埼灯台から149度10.4海里の地点に達したとき、右舷船首64度3.0海里のところに、前路を左方に横切るデビ パンプローナ(以下「デ号」という。)の白、白、紅3灯を視認することができ、その後、その方位がほとんど変わらず、衝突のおそれのある態勢で接近することを認めることができる状況であったが、反航船の多い海域であったことから、専ら前方を見張ることに気を取られ、側方の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、デ号の進路を避けないまま続航した。
 05時00分A受審人は、12海里レンジとしたレーダーで船位測定をしたときにも同方位1.2海里となったデ号の映像に気付かず、その後、船橋左舷側のカーテンで遮光された海図台の区画(以下「海図室」という。)に入り、GPSを見て海図や航海日誌への記入作業を行っていたところ、同時04分わずか過ぎ、前方を見張っていてふと右側方に目を移しデ号の船影を認めた甲板手に呼ばれ、急ぎ海図室から出たところ、右舷側間近に迫ったデ号の紅灯1個及び居住区の明かりを初認し、とりあえず自ら自動操舵のまま針路を038度に転じたのち、衝突の危険を感じ、甲板手に命じて左舵一杯とし、船首がデ号をかわって左転中、05時05分大王埼灯台から128度10.4海里の地点において、第七有明丸は、船首が345度に向き、原速力のまま、その右舷船尾が、デ号の左舷後部に、後方から15度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、視界は良好で、日出は05時54分であった。
 また、デ号は、船首船橋型の自動車専用船で、船長B、一等航海士Gほか19人が乗り組み、自動車2,075.40トンを積載し、船首6.75メートル船尾8.35メートルの喫水をもって、同月12日15時45分大阪港を発し、17時55分友ヶ島水道で大阪湾水先区水先人を下船させ、名古屋港に向かった。
 翌13日04時00分ごろG一等航海士は、大王埼の南南東方27海里付近で昇橋し、甲板手と2人で船橋当直につき、同時40分大王埼灯台から150度16.1海里の地点で、針路を000度に定め、機関を全速力前進にかけ、17.9ノットの速力で、法定灯火を表示して自動操舵により進行した。
 04時53分少し前G一等航海士は、大王埼灯台から141度12.9海里の地点に達したとき、左舷船首68度3.0海里のところに前路を右方に横切る第七有明丸の白、白、緑3灯を視認することができる状況で、同時57分少し前同方位2.0海里のところに同灯を初認し、その後、その方位にほとんど変化がなく、衝突のおそれのある態勢で接近していることを知ったが、そのうち避航してくれるものと思い、警告信号を行うことも、更に接近して右転するなど衝突を避けるための協力動作をとることもなく、原針路、原速力のまま続航中、デ号は、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、第七有明丸は右舷側船尾外板等に凹損を、デ号は左舷側後部外板等に凹損を生じたが、のちいずれも修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、大王埼東方沖合において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、第七有明丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切るデ号の進路を避けなかったことによって発生したが、デ号が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、大王埼東方沖合を東行する場合、側方より接近する他船を見落とすことのないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、反航船の多い海域であったことから、専ら前方を見張ることに気を取られ、見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近するデ号に気付かず、同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き、第七有明丸の右舷側船尾外板等に凹損を、デ号の左舷側後部外板等に凹損をそれぞれ生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。 


参考図





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