(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年12月20日23時20分
愛媛県今治港鳥生岸壁
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船ニッコウ6 |
総トン数 |
497トン |
全長 |
75.94メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,323キロワット |
3 事実の経過
ニッコウ6は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか3人が乗り組み、コンテナ32個を積載し、船首2.2メートル船尾3.6メートルの喫水をもって、平成13年12月20日11時40分神戸港を発し、関門港に向かった。
ところで、ニッコウ6は、主に神戸港でコンテナを積み、大阪港、香川県高松港、同県詫間港、愛媛県松山港、同県新居浜港、山口県岩国港、関門港、福岡県博多港等の各港でコンテナの揚げ積みを行う内航コンテナ輸送にあたり、月に1回ないし2回は横浜港、三重県四日市港等への比較的遠距離の航海にも従事し、瀬戸内海各港に寄港するときは、1日のうち複数の港に入出航することも稀ではなかった。
そして、A受審人は、船橋当直を自らと一等航海士による単独5時間または6時間の2直制とし、航海中においては、非番の間に短時間の休息しか取ることができず、また、入港中においては、入港時刻が早朝となり荷役までの待機時間が短いときや待機がないときは、概ね1時間の荷役が終了すれば直ちに出港することとなり、休息を十分に取ることができない状況であった。
A受審人は、出航操船に引き続き単独5時間の船橋当直に就き、17時00分香川県小豆島地蔵埼付近で一等航海士と交代して降橋し、夕食の後、18時30分目覚まし時計を次の当直交代時刻の13分前の21時47分にセットして就寝した。
ところが、22時05分A受審人は、高井神島灯台の西北西約2.0海里の地点で、一等航海士と交代して船橋当直に就いたとき、2日前の横浜港出航から神戸港の入出航と待機のない航海が続いて断続的に短時間の休息しか取ることができず、睡眠不足から予定の当直交代時刻を寝過ごし、当直中の一等航海士からの電話で呼び起こされて急ぎ昇橋するという状況で、そのまま単独で船橋当直に就くと居眠りに陥るおそれがあったが、機関部当直者を船橋に呼んで見張りの補佐にあてるなどして居眠り運航の防止措置をとることなく燧灘を西行した。
22時50分A受審人は、竜神島灯台から064度(真方位、以下同じ。)3.1海里の地点に達したとき、針路を来島海峡航路第8号灯浮標に向かう222度に定めて自動操舵とし、機関を回転数毎分227の全速力前進にかけ、折からの東流により左方に圧流されながら217度の針路となって、10.2ノットの対地速力で進行し、舵輪後方に置いた椅子に腰掛けて船橋当直を続けるうち、いつしか居眠りに陥った。
こうして、ニッコウ6は、来島海峡航路第8号灯浮標付近で予定の転針が行われず、愛媛県今治港鳥生岸壁に向かって続航し、23時20分今治港蔵敷防波堤灯台から161度700メートルの地点において、原針路、原速力のまま、同岸壁に衝突した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮のほぼ中央期で、来島海峡は南流の最強時にあたり、付近には約1ノットの東南東流があった。
衝突の衝撃で目覚めたA受審人は、昇橋した一等航海士とともに、バウスラスタと機関を使用してニッコウ6を回頭させ、沖出し投錨して事後の措置に当たった。
岸壁衝突の結果、ニッコウ6は船首部を圧壊し、鳥生岸壁は防舷材を損傷し、コンクリートスラブが一部欠損するとともに、鋼製矢板に凹損と破口を生じたが、のちいずれも修理された。
(原因)
本件岸壁衝突は、夜間、燧灘において、居眠り運航の防止措置が不十分で、愛媛県今治港鳥生岸壁に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、夜間、燧灘において、単独で船橋当直に就く場合、待機のない航海が続いて断続的に短時間の休息しか取ることができず、睡眠不足の状態のうえ、当直交代時刻を寝過ごし電話で呼び起こされて昇橋する状況であったから、当直中に居眠りに陥ることのないよう、機関部当直者を船橋に呼んで見張りを補佐させるなどして居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、睡眠不足の状態で椅子に腰掛けた姿勢のまま単独当直にあたり、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、今治港鳥生岸壁に向かって進行して岸壁衝突を招き、ニッコウ6の船首部を圧壊させ、鳥生岸壁の防舷材に損傷、コンクリートスラブに一部欠損及び鋼製矢板に凹損と破口をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
よって主文のとおり裁決する。