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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年神審第94号
件名

プレジャーボート千鳥丸プレジャーボート(船名なし)衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年2月26日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(小金沢重充)

理事官
野村昌志

受審人
A 職名:千鳥丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
指定海難関係人
B 職名プレジャーボート(船名なし)乗組員

損害
千鳥丸・・・船首部外板に擦過傷
鈴木号・・・左舷前部外板に亀裂を伴う損傷
同乗者が落水し、肺水腫及び右膝打撲傷等

原因
千鳥丸・・・見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
鈴木号・・・見張り不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、千鳥丸が、見張り不十分で、漂泊中のプレジャーボート(船名なし)を避けなかったことによって発生したが、プレジャーボート(船名なし)が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年6月3日09時55分
 高知県宇佐港

2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート千鳥丸 プレジャーボート(船名なし)
全長 5.42メートル 5.62メートル
機関の種類 電気点火機関  
出力 7キロワット  

3 事実の経過
 千鳥丸は、船外機装備のFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成14年6月3日09時50分高知県宇佐港浦ノ内湾の定係地を発し、同湾南部の釣り場へ向かった。
 ところで、千鳥丸は、全速力前進で航走すると船首が浮上し、船尾で座って操船に当たると、正船首から左右各舷10度の間に死角を生じる状況であった。
 A受審人は、離岸して徐々に増速し、09時53分半灰方崎東方約550メートルの148.6メートル頂三角点(以下「三角点」という。)から301度(真方位、以下同じ。)800メートルの地点に達したとき、針路を180度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力とし、右舷船尾に座って船外機を操作しながら進行した。
 定針したとき、A受審人は、正船首450メートルのところに、プレジャーボート(船名なし、以下「鈴木号」という。)を視認することができ、その後同船の様子から漂泊中であることも、同船に向首接近していることも分かる状況であった。しかし、A受審人は、離岸時付近を一瞥して他船を見掛けなかったことから、前路に支障となる船舶はいないと思い、減速して船首の浮上を抑えるなど、死角を補う見張りを十分に行わなかったので、鈴木号に気付かず、同船を避けることなく続航中、09時55分三角点から267度700メートルの地点において、千鳥丸は、原針路原速力のまま、その船首部が、鈴木号の左舷前部に直角に衝突した。
 当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の末期であった。
 また、鈴木号は、木製の櫓漕ぎボートで、B指定海難関係人が同県須崎市浦ノ内灰方所在の貸舟店から借りて1人で乗り組み、知人1人を同乗させ、きす釣りの目的で、同日09時00分同店前の浜辺を発し、沖合の釣り場へ向かった。
 B指定海難関係人は、同浜辺の西方200ないし300メートル沖合に至り、時々ポイントを移動して魚釣りを行い、09時50分前示衝突地点で漂泊し、右舷船首部に同乗者を座らせ、自身は右舷船尾部に座り、ともに右舷方を向き竿釣りを再開した。
 09時53分半B指定海難関係人は、船首が090度に向いていたとき、左舷正横450メートルのところに千鳥丸を視認することができ、その後自船に向首接近していることが分かる状況であったが、釣りに専念していて、周囲の見張りを十分に行わなかったので、千鳥丸に気付かず、櫓を漕いで前進するなど、衝突を避けるための措置をとることなく漂泊中、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、千鳥丸は、船首部外板に擦過傷を生じたのみであったが、鈴木号は、左舷前部外板に亀裂を伴う損傷を生じ、同乗者が落水し、肺水腫及び右膝打撲傷等を負った。

(原因)
 本件衝突は、高知県宇佐港において、南下中の千鳥丸が、見張り不十分で、前路で漂泊中の鈴木号を避けなかったことによって発生したが、鈴木号が、見張り不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人等の所為)
 A受審人は、宇佐港において、単独で操船に当たって釣り場に向け南下する場合、全速力で航走すると船首が浮上して船首方に死角が生じるから、前路で漂泊中の鈴木号を見落とすことのないよう、減速して船首の浮上を抑えるなど、死角を補う見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、離岸時付近を一瞥して他船を見掛けなかったことから、前路に支障となる船舶はいないと思い、死角を補う見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漂泊中の鈴木号に気付かず、同船を避けることなく進行して衝突を招き、自船の船首部外板に擦過傷を、鈴木号の左舷前部外板に亀裂を伴う損傷をそれぞれ生じさせ、鈴木号の同乗者に肺水腫及び右膝打撲傷等を負わせるに至った。
 B指定海難関係人が、宇佐港において、魚釣りをしながら漂泊中、周囲の見張りを十分に行わなかったことは、本件発生の原因となる。


参考図





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