(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成14年3月30日13時59分
播磨灘
2 船舶の要目
船種船名 |
貨物船北斗丸 |
貨物船第五住福丸 |
総トン数 |
499トン |
497トン |
全長 |
71.00メートル |
50.99メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
ディーゼル機関 |
出力 |
1,029キロワット |
735キロワット |
3 事実の経過
北斗丸は、船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、鋼材1,688トンを積載し、船首3.95メートル船尾5.05メートルの喫水をもって、平成14年3月30日00時45分広島県呉港を発し、大阪港堺泉北区に向かった。
A受審人は、12時25分香川県小豆島南方沖合で単独の船橋当直に就き、同時30分大角鼻灯台から165度(真方位、以下同じ。)2.2海里の地点で、針路を069度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.4ノットの速力(対地速力、以下同じ。)で進行した。
13時49分A受審人は、左舷船首30度3.0海里のところに、南下中の第五住福丸(以下「住福丸」という。)を初めて視認し、その動静を監視するうち、同時52分半松島灯台から133度9.7海里の地点に達したとき、住福丸が同方位のまま2.0海里となり、その後前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したものの、警告信号を行わずに東行し、やがて同船が自船の進路を避けずに間近に接近したのを認めたが、そのうちに住福丸が避けるものと思い、速やかに行きあしを止めるなど、衝突を避けるための協力動作をとることなく続航した。
こうして、A受審人は、住福丸が至近に迫ったとき、ようやく衝突の危険を感じ、手動操舵に切り換えて右舵一杯としたが及ばず、13時59分松島灯台から127度10.2海里の地点において、北斗丸は、130度に向首したとき、原速力のまま、その左舷中央部に住福丸の船首が後方から40度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力1の南風が吹き、潮候は下げ潮の中央期にあたり、視界は良好であった。
また、住福丸は、船尾船橋型貨物船で、B受審人ほか3人が乗り組み、空倉のまま、船首0.65メートル船尾2.60メートルの喫水をもって、同日12時25分兵庫県姫路港を発し、徳島県撫養港に向かった。
B受審人は、発航時から単独で操船にあたり、播磨灘航路第4号灯浮標の北方3.5海里付近で西行中の第3船を替わしたのち、13時40分松島灯台から108度9.2海里の地点で、針路を同灯浮標のわずか右に向く190度に定め、機関を全速力前進にかけ、10.5ノットの速力で自動操舵により進行した。
13時52分半B受審人は、松島灯台から121度9.8海里の地点に達したとき、右舷船首29度2.0海里のところに東行中の北斗丸を視認できる状況であったが、定針前に西行中の第3船を替わしたことから付近に他船はいないと思い、右舷方の見張りを十分に行わなかったので、北斗丸の存在に気付かず、操舵輪後方のいすに寄り掛かった姿勢で船首方を向いたまま南下した。
こうして、B受審人は、その後北斗丸が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近したが、その進路を避けることなく続航中、13時59分少し前ふと右舷前方を向いたとき、至近に北斗丸を認め、手動操舵に切り換えて左舵一杯としたが及ばず、住福丸は、170度に向首したとき、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、北斗丸は、左舷中央部外板に、住福丸は、球状船首に、それぞれ亀裂を生じたが、のちいずれも修理された。
(原因)
本件衝突は、播磨灘において、両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中、南下する住福丸が、見張り不十分で、前路を左方に横切る北斗丸の進路を避けなかったことによって発生したが、東行する北斗丸が、警告信号を行わず、衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
B受審人は、播磨灘を南下する場合、東行中の北斗丸を見落とさないよう、右舷方の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、定針前に西行中の第3船を替わしたので付近に他船はいないと思い、右舷方の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、北斗丸の存在と接近に気付かず、その進路を避けることなく進行して同船との衝突を招き、北斗丸の左舷中央部外板及び住福丸の球状船首にそれぞれ亀裂を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、播磨灘を東行中、住福丸が前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢のまま、自船の進路を避けずに間近に接近するのを認めた場合、速やかに行きあしを止めるなど、衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、そのうちに住福丸が避けるものと思い、衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により、そのまま進行して同船との衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
よって主文のとおり裁決する。