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平成14年那審第44号
件名

漁船リキマル漁船大信丸衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年1月23日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(金城隆支、坂爪 靖、平井 透)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:リキマル船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:大信丸船長 海技免状:二級小型船舶操縦士(5トン限定)

損害
リキマル・・・右舷船首外板に破口
大信丸・・・操舵室を大破

原因
大信丸・・・動静監視不十分、船員の常務(避航動作)不遵守

主文

 本件衝突は、大信丸が、動静監視不十分で、錨泊中のリキマルを避けなかったことによって発生したものである。
 受審人Bを戒告する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年6月27日05時00分
 沖縄県粟国島南方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船リキマル 漁船大信丸
総トン数 9.7トン 1.53トン
登録長 14.80メートル 7.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 411キロワット  
漁船法馬力数   40

3 事実の経過
 リキマルは、そでいか旗流し漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.7メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成14年6月26日10時00分沖縄県都屋漁港を発し、13時00分粟国島北西方のニライ13号浮魚礁に至って操業を開始し、18時45分操業を終えて粟国島沖合の錨泊予定地点に向かった。
 ところで、A受審人は、いつも3日間連続して日出時から日没時まで操業し、夜間は粟国島付近で錨泊して休息することにしており、当時北寄りの風が吹いていたことから、同島南方沖合で錨泊することにした。この錨泊地点付近は、同島南西端の筆ン岬から同島南岸東寄りの粟国港に出入りする船舶が航行するが、特に船舶が輻輳する海域ではなかった。
 19時30分A受審人は、粟国島灯台から114度(真方位、以下同じ。)1,000メートルの、水深30メートルの地点において、船首から錨を投入し、直径12ミリメートルのナイロンロープを約45メートル延出したうえ、錨泊灯として操舵室上部マスト頂部に白色全周灯を掲げ、機関を止めて錨泊を開始し、21時ごろから操舵室前方の部屋で休息した。
 リキマルは、錨泊を続けていたところ、翌27日05時00分粟国島灯台から114度1,000メートルの地点において、船首が074度に向いていたとき、大信丸の右舷船尾がリキマルの右舷船首に前方から20度の角度で衝突した。
 当時、天候は曇で風力3の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
 また、大信丸は、引き縄漁業に従事するFRP製漁船で、B受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.4メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、同月27日04時50分粟国港を発し、粟国島北西方の漁場に向かった。
 04時52分半B受審人は、粟国島灯台から090度2,400メートルの地点において、針路を254度に定め、機関を微速力前進にかけ、6.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 定針したときB受審人は、ほぼ正船首に白色全周灯を視認し、この灯火は1,400メートルのところにリキマルが掲げた錨泊灯であったが、一瞥して船首2,700メートルの筆ン岬南方で夜釣りを行っている船の錨泊灯と誤認し、筆ン岬までは距離があるので接近したら避けることとし、GPSの設定に取り掛かり、その後GPSの設定に気を取られ、引き続きリキマルに対する動静監視を十分に行わなかったので、衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、転舵するなど同船を避けないまま進行した。
 05時00分わずか前B受審人は、GPSの設定を終え、顔を上げたとき、正船首至近に迫ったリキマルの船体を認め、急ぎ左舵一杯を取ったが、及ばず、船首が234度に向いたとき、原速力のまま前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、リキマルは右舷船首外板に破口を生じ、大信丸は操舵室を大破したが、のち、それぞれ修理された。

(原因)
 本件衝突は、夜間、粟国島南方沖合において、西航中の大信丸が、動静監視不十分で、錨泊中のリキマルを避けなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、夜間、粟国島南方沖合において、漁場に向け西航中、前方にリキマルが掲げる錨泊灯を認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、引き続き同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、GPSの設定に気を取られ、リキマルに対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により、同船と衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、転舵するなど同船を避けずに進行して衝突を招き、リキマルの右舷船首外板に破口を生じさせ、大信丸の操舵室を大破させるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
 A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。 


参考図





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