(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成13年12月9日14時58分
大阪府阪南港南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 |
プレジャーボート |
プレジャーボート |
|
メイダス |
雄祥民1号 |
総トン数 |
19トン |
|
全長 |
16.33メートル |
8.67メートル |
機関の種類 |
ディーゼル機関 |
電気点火機関 |
出力 |
970キロワット |
128キロワット |
3 事実の経過
メイダスは、船体中央部左舷寄りに操縦席を有するFRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、同乗者2人を乗せ、魚釣りの目的で、船首尾共0.9メートルの喫水をもって、平成13年12月9日06時00分大阪府阪南港内のマリーナを発し、08時00分和歌山県日ノ御埼沖合の釣り場に至り、メジロ釣りを行っていたところ、風が強まりだしたため釣りを中止し、12時00分帰途に就いた。
A受審人は、操縦席に腰掛けて操舵と見張りに当たり、14時53分少し前大阪府岡田港波除堤灯台(以下「波除堤灯台」という。)から313度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点で、発航地の防波堤入口に向けて針路を074度に定め、機関を回転数毎分1,800にかけ、22.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
14時56分A受審人は、波除堤灯台から354度1.3海里の地点に達したとき、正船首方1,400メートルのところに雄祥民1号(以下「雄祥民」という。)を視認できる状況であったが、右前方の多数の刺網に気をとられ、前路の見張りを十分に行わなかったので、雄祥民の存在に気付かなかった。
こうしてA受審人は、船首を同一方向に向けて移動しない様子から、雄祥民が漂泊していることが分かる状況で、同船と衝突のおそれがある態勢で接近したが、これに気付かず、雄祥民を避けることなく続航中、14時58分波除堤灯台から022度1.6海里の地点において、メイダスは、原針路原速力のまま、その左舷船首部が雄祥民の右舷側前部に後方から61度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北風が吹き、潮候は上げ潮の末期にあたり、視界は良好であった。
また、雄祥民は、船体中央部右舷寄りに操縦席を有するFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、遊覧の目的で、船首尾共0.2メートルの喫水をもって、同日13時30分大阪府尾崎港内の係留地を発し、和歌山県友ケ島に向かった。
B受審人は、大阪府淡輪港沖合を南下中、時化模様になったため、予定を変更して関西国際空港に向けて反転し、その後同空港の給油桟橋付近に至り、航空機の離着陸の様子を見物したのち、14時53分衝突地点付近で、機関を中立とし、漂泊を開始した。
B受審人は、操縦席に腰掛け、同乗者をその左方の助手席に座らせ、14時56分135度に向首していたとき、右舷船尾61度1,400メートルのところにメイダスを視認できる状況であったが、左方の関空泉州沖連絡橋を通行する車両を見ながら同乗者との会話に夢中になり、周囲の見張りを十分に行わなかったので、同船の存在に気付かなかった。
こうしてB受審人は、メイダスが衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、機関を前進にかけるなど、衝突を避けるための措置をとることもなく漂泊中、雄祥民は、同方位に向首したまま、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、メイダスは、左舷船首部に擦過傷を生じたが、のち修理され、雄祥民は、右舷側前部に亀裂を生じ、修理費を考慮して廃船処分された。また、B受審人は、頭部打撲切創を負った。
(原因)
本件衝突は、大阪府阪南港南西方沖合において、メイダスが、見張り不十分で、漂泊中の雄祥民を避けなかったことによって発生したが、雄祥民が、見張り不十分で、有効な音響による注意喚起信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
(受審人の所為)
A受審人は、大阪府阪南港南西方沖合を航行する場合、漂泊中の雄祥民を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、右前方の多数の刺網に気をとられ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、漂泊中の雄祥民に気付かず、同船を避けないまま進行して雄祥民との衝突を招き、メイダスの左舷船首部に擦過傷を、雄祥民の右舷側前部に亀裂をそれぞれ生じさせるとともに、B受審人に頭部打撲切創を負わせるに至った。
B受審人は、大阪府阪南港南西方沖合で漂泊する場合、接近するメイダスを見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、左方の関空泉州沖連絡橋を通行する車両を見ながら同乗者との会話に夢中になり、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、衝突のおそれがある態勢で接近するメイダスに気付かず、有効な音響による注意喚起信号を行うことも、機関を前進にかけるなど、衝突を避けるための措置をとることもなく漂泊を続けてメイダスとの衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるとともに、自らも負傷するに至った。