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平成14年横審第105号
件名

押船白鴎被押はしけ鵬防波堤衝突事件

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年1月31日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(小須田 敏、原 清澄、花原敏朗)

理事官
供田仁男

受審人
A 職名:白鴎船長 海技免状:三級海技士(航海)

損害
白鴎・・・損傷ない
鵬・・・船首部外板に破口を伴う凹損
消波ブロック、防波堤・・・破損

原因
白鴎・・・見張り不十分

主文

 本件防波堤衝突は、見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 
理由

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成14年2月24日06時00分
 高知県高知港

2 船舶の要目
船種船名 押船白鴎 はしけ鵬
総トン数 271トン 4,382トン
全長 31.50メートル 117.50メートル
  23.50メートル
深さ   6.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 2,942キロワット

3 事実の経過
 白鴎は、専ら土砂運搬用はしけ鵬を押航する押船で、A受審人ほか7人が乗り組み、回航の目的で、空船状態の鵬の船尾ノッチ部に白鴎の船首部をかん合して全長123.10メートルの押船列(以下「白鴎押船列」という。)を構成し、船首1.0メートル船尾4.4メートルの喫水をもって、平成14年2月22日20時00分三重県津港を発して山口県徳山下松港に向かったものの、翌23日正午ごろ、運航管理会社である新和土木海運株式会社からの指示で、ジブクレーンのグラブを交換するために高知県高知港に寄港することとなった。
 ところで、鵬は、船体中央部の船首寄りにジブクレーンを備え、その船首側に長さ18メートル幅22メートルの1番船倉及び船尾側に長さ30メートル幅22メートルの2番船倉を配し、それぞれに甲板上高さ6.5メートルのハッチコーミングを有していたうえに、2番船倉の船尾側に甲板上高さ12.5メートル長さ9メートルのサクションポンプ式土砂浚渫(しゅんせつ)装置を設けていたものの、風力6程度の横風を受けても保針することができる性能を有していた。
 また、高知港は、土佐湾に面して東方に開口した港口を有しており、その港口付近では、高知港口防波堤(以下「港口防波堤」という。)の東端部に設置された高知港口防波堤灯台(以下「港口防波堤灯台」という。)から092度(真方位、以下同じ。)743メートルの地点及び同地点から097度410メートルの地点をそれぞれ北西端及び北東端とする防波堤(南)延長工事水域並びに同灯台から049度426メートルの地点及び同地点から097度605メートルの地点をそれぞれ南西端及び南東端とする防波堤(東第一)築造工事水域がそれぞれ設定され、両工事水域間には、幅約260メートルの水路(以下「港口水路」という。)が設けられていた。
 国土交通省四国地方整備局高知港湾空港工事事務所は、前示両工事の実施にあたり、関係機関などに「高知新港建設に伴う防波堤(東第一)及び(南)築造工事のお知らせ」と題するパンフレットを配布するとともに、海上保安庁発行の水路通報でその周知を図っていた。
 高知水路は、港口防波堤灯台の西北西方600メートルのところにその入口があり、同水路を航行する総トン数1,000トン以上の船舶は、同水路に達する予定時刻を高知港港長に通報するよう定められていた。
 A受審人は、高知港への寄港指示を受けたとき、同港入港が10年ぶりであったうえに、船内に備えた海図(第110号)も古いものであったことから、セメント運搬船の船長として3年前まで高知港に数多く入港していた一等航海士や同業船などから同港に関する情報の収集に努め、高知港港口付近で防波堤(南)延長工事などが行われており、工事用灯浮標が同工事水域の四隅に設置されていることなどを知っていた。
 同月24日03時30分A受審人は、昇橋して高知港港長に高知水路入口付近に達する予定時刻を06時00分と連絡したのち、当直中の一等航海士を操舵に就け、自らが操船の指揮を執って進行し、05時41分わずか過ぎ港口防波堤灯台から116度1.7海里の地点に至ったとき、針路を港口水路東口沖に向かう327度に定め、機関を全速力前進にかけて7.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で続航した。
 05時50分半A受審人は、港口水路東口沖にあたる港口防波堤灯台から085度1,790メートルの地点で、港口水路を航行して高知水路入口に向かう270度の針路に転じたところ、折からの風潮流により5度左方に圧流されながら6.0ノットの速力となって進行した。
 05時56分わずか過ぎA受審人は、港口防波堤灯台から085度750メートルの地点に達したとき、防波堤(南)延長工事水域の北西端を示す緑色の工事用灯浮標を左舷正横約100メートルのところに視認し、圧流されていることを知ったが、そのころから自船の両舷方近距離のところを反航する数隻の出漁漁船に気を取られ、前路の見張りを十分に行っていなかったので港口防波堤灯台に気付かず、針路を右に転じて高知水路入口南側から東方沖に延びる港口防波堤を避けることなく続航した。
 こうしてA受審人は、同じ針路、速力のまま進行し、06時00分白鴎押船列は、港口防波堤灯台から085度40メートルの地点において、港口防波堤東端に付設された消波ブロックに鵬の船首が衝突した。
 当時、天候は晴で風力5の北北西風が吹き、潮候は下げ潮の初期であった。
 A受審人は、直ちに機関を後進にかけ、その後港口防波堤の北東方で左転して沖出しし、事後の措置に当たった。
 衝突の結果、白鴎に損傷はなかったものの、鵬の船首部外板に破口を伴う凹損を生じたが、のち修理され、港口防波堤東端に付設された消波ブロック及び同防波堤東端部にそれぞれ破損を生じた。

(原因)
 本件防波堤衝突は、夜間、高知県高知港において、高知水路入口に向けて港口付近を航行する際、見張り不十分で、同水路入口沖の港口防波堤東端に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は、夜間、高知県高知港において、高知水路入口に向けて港口付近を航行する場合、同水路入口沖の港口防波堤東端部に設置された港口防波堤灯台を見落とすことのないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同受審人は、自船の両舷方近距離のところを反航する数隻の出漁漁船に気を取られ、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、港口防波堤灯台に気付かないまま進行して港口防波堤東端に付設された消波ブロックへの衝突を招き、鵬の船首部外板に破口を伴う凹損を、同消波ブロック及び同防波堤東端部にそれぞれ破損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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