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 海難審判庁裁決録 >  2003年度(平成15年) > 衝突事件一覧 >  事件





平成14年仙審第52号
件名

漁船第六十五漁進丸漁船第一幸栄丸衝突事件(簡易)

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成15年1月28日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(大山繁樹)

副理事官
宮川尚一

受審人
A 職名:第六十五漁進丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:第一幸栄丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士

損害
漁進丸・・・左舷船尾部に亀裂を伴う凹損
幸栄丸・・・船首部を圧壊

原因
幸栄丸・・・居眠り運航防止措置不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
漁進丸・・・見張り不十分、警告信号不履行、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

裁決主文

 本件衝突は、第一幸栄丸が、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路で漂泊中の第六十五漁進丸を避けなかったことによって発生したが、第六十五漁進丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 受審人Bを戒告する。
 受審人Aを戒告する。
 
適条

 海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成12年7月10日16時30分
 新潟県佐渡島北方沖合

2 船舶の要目
船種船名 漁船第六十五漁進丸 漁船第一幸栄丸
総トン数 19.00トン 9.10トン
全長   15.20メートル
登録長 19.38メートル  
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力   316キロワット
漁船法馬力数 180  

3 事実の経過
 第六十五漁進丸(以下「漁進丸」という。)は、FRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、いか一本釣り漁の目的で、船首1.0メートル船尾3.0メートルの喫水をもって、平成12年7月10日10時00分山形県酒田港を発し、新潟県佐渡島の弾埼北方沖合40海里ばかりの漁場に向かった。
 A受審人は、16時00分漁場に至り、弾埼灯台から013度(真方位、以下同じ。)43.7海里の地点で、船首を西方に向けて船首からパラシュート型シーアンカーを投じ、機関を中立として漂泊し、船首甲板に赴いていか釣り機の運転準備に取りかかった。
 16時18分A受審人は、左舷船尾42度2海里のところに自船に向首して接近してくる第一幸栄丸(以下「幸栄丸」という。)を認めることのできる状況であったが、釣り針の交換作業に気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかったので、同船に気付かなかった。
 16時24分A受審人は、幸栄丸が自船に向首したまま1海里に接近し、その後同船に避航の様子が認められないまま、更に接近してきたが、依然として周囲の見張りを十分に行わなかったので、このことに気付かず、同船に対し警告信号を行わず、また、機関を使用して移動をするなど衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続け、16時30分弾埼灯台から013度43.7海里の地点において、幸栄丸の船首部が、漁進丸の左舷船尾部に後方から42度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力2の西風が吹き、海上は穏やかであった。
 また、幸栄丸は、FRP製漁船で、B受審人ほか1人が乗り組み、いか一本釣り漁の目的で、船首0.4メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、同日11時30分新潟県寝屋漁港を発し、弾埼北方沖合40海里ばかりの漁場に向かった。
 B受審人は、単独で船橋当直に就き、11時35分弾埼灯台から078度47.8海里の地点で、針路を312度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、10.0ノットの対地速力で進行した。
 16時00分少し前B受審人は、弾埼灯台から017度41.5海里の地点に達したころ、操舵室左舷後部の床から一段高くなった腰掛けに、前方を向いて座っていたところ、眠気を感じたが、居眠りすることはあるまいと思い、立ち上がって外気に当たるなり、手動操舵に切り替えるなど居眠り運航の防止措置をとらないまま進行しているうち、いつしか居眠りに陥った。
 16時18分B受審人は、弾埼灯台から015度42.7海里の地点に達したとき、前路2海里に漁進丸が存在し、その後同船が西方を向いて漂泊していることを認めることができる状況であったが、居眠りに陥っていたので、このことに気付かずに進行した。
 16時24分B受審人は、弾埼灯台から014度43.1海里の地点に達したとき、漁進丸との距離が1海里となったが、居眠りに陥っていたので、依然としてこのことに気付かず、右転するなど同船を避けることなく進行し、16時30分幸栄丸は、原針路、原速力のまま、前示のとおり衝突した。
 衝突の結果、漁進丸は、左舷船尾部に亀裂を伴う凹損、幸栄丸は船首部に圧壊をそれぞれ生じたが、のち修理された。

(原因)
 本件衝突は、新潟県佐渡島北方沖合において、幸栄丸が漁場に向け航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、前路で漂泊している漁進丸を避けなかったことによって発生したが、漁進丸が、見張り不十分で、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
 B受審人は、新潟県佐渡島北方沖合を漁場に向けて自動操舵によって航行中、腰掛けに座った状態で眠気を覚えた場合、立ち上がって外気に当たるとか、手動操舵に切り替えるなどして、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。ところが、同人は、居眠りすることはあるまいと思い、立ち上がって外気に当たるなどの居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、腰掛けに座ったまま居眠りに陥り、前路で漂泊中の漁進丸を避けることなく進行して同船との衝突を招き、幸栄丸船首部を圧壊させ、漁進丸左舷船尾部に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
 A受審人は、新潟県佐渡島北方沖合において漂泊しながら、操業準備にあたる場合、自船に接近する他船を見落とさないよう、周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。ところが、同人は、釣り針の交換作業に気をとられ、周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、幸栄丸が避航動作をとることなく接近していることに気付かず、警告信号を行わず、衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊を続けて衝突を招き、両船に前示の損傷を生じさせるに至った。


参考図





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