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1. はじめに
 この度、日本財団の助成を受け、自閉症・広汎性発達障害を把握するためのチェックリストを作成した。この研究は、日本自閉症協会が中心となり、日本の各所で活躍する気鋭の臨床家や自閉症研究者たちの協力で進められた。
 今回、行政的にも活用できるために、簡便な方法で、一般の人にも自閉症・広汎性発達障害のことを把握しやすい方法になるように取り組んだ。全部で58項目、幼児期、児童期、思春期(以降)という3つの年齢段階で把握することになっている。主として、幼児期の兆候を診断的、もしくはそれに近い目的で使用し、児童期と思春期を実際の支援必要性や生活困難度などの行政的な支援の必要性という観点で評価していくことになっている。
 自閉症・広汎性発達障害については、例えば、文部科学省がASSQというツールで通常学級に在籍する児童の中で0.8%が、傾向があるものとして担任教師の評価として報告している。しかし、行政的に考えると、高機能広汎性発達障害から知的障害を合併したり、二次的な精神障害を合併したり、支援の必要性が高い人までを、ある意味で同じ広汎性発達障害として把握できるということが重要になる。そうした点で考えると、現在の国内に存在するチェックリストでは不備が多く、尺度構成に必要な手順を踏んで、一定の標準化を行なったチェックリストが必要であると思われる。そうした意味では、今回のチェックリストは有用性が高いものであると考えられる。
 このような実践的な研究にご支援くださった、日本財団にこの場を借りてお礼申しあげたい。
2004年3月31日
社団法人 日本自閉症協会
 
 
 
 
1. はじめに
 今回の調査への御協力に感謝致します。この調査は、日本財団の助成のもと、自閉症児者の適切な支援や、行政上の適切な処遇の実現のために作成したものです。
 チェックリストへの記入に際して、以下のような注意事項がありますので、熟読いただいた上で実施いただけますようお願い致します。
 
2. 記入の際の一般的なお願い
(1)対象者の通し番号について:@NOには、分析上の通し番号を、事務局の方で付けますので、記入しないようにお願い致します。(記入の際の通し番号は、「評定者ごとのNo」に御記入いただくことになります。)
(2)評定については、個別の聞き取りによる調査をお願い致します。
 
3. 評定者について
(1)評定者名は必ずフルネームでお願いします。評定の付け落としなどへの問合せ等の場合に必ず必要です。別途、機関(施設)ごとでの評定者一覧に御記入の上、送付下さい。
(2)評定者一覧表には、評定者のお名前とともに、職種、キャリア(職務年数)、性別、年齢を御記入下さい。よろしくお願い致します。
 
4. 対象となる方について
(1)評定者ごとの通し番号をつける。
 その場合に、番号の頭に以下のようにIDをつけてください。(北海道 HK-1〜HK-60・HU-1〜HU-60)(神奈川 KA-1〜KA-120)(愛知 AH-1〜AH-120)(岡山 OK-1〜OK-120)(兵庫 HYO-1〜HYO-120)
(2)性別をつける。
(3)IQ欄の記入について
・ 基本的にビネーまたはウェクスラーで、両方の数値がある場合はウェクスラーの数値を記入する。
・ ビネーもウェクスラーもとれていない場合は、検査名を明記する。
・ PEPの場合はDQを記入する。
(4)診断名記入の際は、下記の分類から診断名を選んでください。
(1)自閉症(自閉性障害)
(2)広汎性発達障害
(3)自閉症スペクトラム
(4)高機能自閉症
(5)アスペルガー症候群(アスペルガー障害)
(6)高機能広汎性発達障害
(7)特定不能の広汎性発達障害
(8)非定型自閉症
(9)自閉傾向
(10)その他
(5)御協力いただけた対象者の方の数について別添の「割り振り表」に従い、<高機能(IQ70以上)とその他(IQ70未満)>という知能検査による2機能水準×3年齢期<幼児(就学前)、学齢期(小学生)、思春期以降(中学生以降)>の6カテゴリーについて、それぞれ20名を上限に(依頼標本数120の場合。60の場合はその1/2となります。)、データの収集をお願いします。北海道(60+60)、神奈川(120)、愛知(120)、岡山(120)、兵庫(120)とする。
 
5. 各項目について
 以下、評定において補足が必要と思われる項目です。
 
*項目4「見せたいものを持ってくることがない」
 注意を引くための行動や共感を得ようとする行動があるかどうかを評定する。要求行動は含まない。
 
*項目6「言葉の遅れがある」
 発語の遅れがあるかどうかを評定する。
 
*項目7「会話が続かない」、項目8「一方通行に自分の言いたいことだけを言う」、項目10「オウム返しの応答が目立つ」、項目11「CMなどをそのままの言葉で繰り返し言う」、項目25「同じ質問をしつこくする」
 発語自体がない対象者の場合、評定をしないで空欄のまま空けておいて下さい。
 
*項目9「友達とごっこ遊びをしない」
 同年代の子どもとのやり取りを含む遊びをしていた場合に評定する。
 
*項目12「感覚遊びに没頭する」
 くるくる回る、砂や水の触感、音などの感覚を楽しむ遊びを評定する。
 
*項目15「物を横目で見たり、極度に近付けて見たりする」、項目17「つま先で歩くことがある」
 
*項目18「多動で、手を離すとどこに行くかわからない」
 多動であれば評定する。
 
*項目21「ビデオの特定場面を繰り返し見る」
 絵本の特定ぺージを見ることでもよい。
 
*項目22「ページめくりや紙破りなど、物を同じやり方で繰り返しいじる」
 ぺージめくりや、紙破り以外にも、同じやり方で繰り返し物をいじっている場合に評定する。行動自体は例にあげたもの以外にもいろいろなバリエーションがある。
 
*項目27「生活習慣が乱れ。身辺自立ができなくなる」
 身辺自立ができていない場合には、評価しない。
 以前出来ていた身辺処理の水準ができなくなった場合に評定する。
 
*項目28「過去の嫌なことを思い出して不安定になる」
 思い出しているか不明の場合は、評定しない。
 
*項目31「痛みや熱さなどに鈍感であったり、敏感である」
 感覚が鈍感か敏感かどちらか極端な場合に評定する。
 
*項目32「何でもないものをひどく怖がる」
 何でもないものとは、一般的には怖がられないもの、周囲から見ると普通のものを指す。物の一定の形や色などへの反応も含む。
 
*項目33「急に泣いたり怒ったりする」
 パニックやかんしゃくなど、急激な強い不快反応、情動の変化を指す。特に理由が分かりにくいもの、一般的に理解しにくい場合に評定する。
 
*項目38「人から関れた時の対応が場にあっていない」
 場にあっていない行動とは、場面から考えて不自然な行動の場合に評定する。
 自分から相手に合わせていく行動をしない場合も含む。
 
*項目40「言われたことを場面に応じて理解することが難しい」
 応答や対応がちぐはぐで、適切な理解ができていないと判断できる場合に評定する。
 
*項目41「難しい言葉を使うが、その意味をよくわかっていない」
 難しい言葉を使わない場合は、評定しない。
 難しい言葉とは、その年齢では一般的に使わない言葉を指す。
 
*項目42「大勢の会話では、誰が誰に話しているのかがわからない」
 会話をする場合に、誰に話しているかの対人指向性が、一対一の場合や、指名されている場合などのように明確でないと、日常的な場面でもわからない場合に評定する。
 
*項目43「どのように、なぜ、といった説明ができない」
 どのように、とか、なぜという形式の質問をされても適切に回答ができない場合に評定する。
 
*項目47「地名や駅名など、特定のテーマに関する知識獲得に没頭する」
 没頭については、かなり好きである、または、熱中している程度でも評定する。
 
*項目48「よく知っているテレビのシーンを独りで再現する」
 「独りで再現」について、誰かの前で再現する場合も含む。
 
*項目49「相手が嫌がることをわざと執拗に繰り返す」
 わざとでなくても、繰り返して相手が嫌がる場合も含む。
 
*項目50「何かにつけ自分が一番でないと気がすまない」
 一番でなくても、負けることが著しく嫌いな場合も含む。
 
*項目52「場に不適切なほど、行動が落ち着かない」
 ごそごそが目立ち、落ち着きのなさが顕著である場合に評定する。
 
*項目53「不注意さがひどく、場に応じた行動がとれない」
 不注意で、注意集中の悪さが顕著な場合に評定する。
 
*項目54「行動が止まって次の行動に移れなくなったり、固まってしまったりする」
 動けなくなってしまう場合も含む。
 
*項目55「恥ずかしさを感じていないように思える」
 一般的に恥ずかしいと感じられるような行動をする場合に評定する。
 
*項目56「人にだまされやすい」
 信じ込みやすい、警戒心がない場合も含む。
 
*項目57「被害的あるいは猜疑的・攻撃的になりやすい」
 被害的な言動や、攻撃的な言葉などを含む。
 
*項目58「気分の波が激しく、落ち込みと興奮を繰り返す」
 落ち込み、興奮のどちらかだけが続く場合も含む。
 
 以上、御協力よろしくお願い致します。(文責:辻井正次)







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