日本財団 図書館


北海道
□室蘭市〜白老町
 
監視艇 みさご
 
■実施日:平成15年(2003年)8月2日(土)曇り
■コース:北海道室蘭港〜地球岬〜鷲別〜白老港
■主催:NPO羅針盤
■使用艇:国土交通省監視艇 みさご(19t、安原征二船長)
 
平13総使、第10号Copyright (c) 2001 ZENRIN CO., LTD.
 
■経過
 北海道室蘭地域における海交流は、当地で活動するNPO羅針盤を中心に動き出した。NPO羅針盤は近隣の北海道白老町で活動するNPO蔵(くら)との交流を求めていたため、交渉の結果、当地の海交流は「室蘭市〜登別市〜白老町」のルートと決まった。船は、国土交通省が監視船を出して協力してくれることとなった。そして、海交流関係者の熱心な働きかけにより、実施日時は、白老町で町一番のイベントである「白老げんき祭り」の日と決まり、当日の祭りのプログラムに歓迎セレモニーを加えてくださることになった。
 当日は、室蘭市役所のNPO担当や国土交通省の方も交え、監視船で数時間の心地よいクルージングを楽しんだ。そして、「白老げんき祭り」の歓迎セレモニーも予定通りに遂行された。
 海交流、ならびに歓迎セレモニーを通して、お互い交流を深めた後は、白老町にある「まちの駅」を視察し、皆、「まちの駅」や「海・島の駅」の有用性を実感していた。
 
■行程
8:00〜9:30 日本ぐるっと一周・海交流
11:00〜11:40 白老げんき祭りオープニングセレモニーあいさつ
11:45〜12:45 NPOしらおい創造空間『蔵』との意見交換会
13:00〜14:00 「まちの駅蔵」の視察・ヒアリング
 
■室蘭港の概況
 室蘭市は北海道の南西部、内浦湾に面し、西に向かって突出した馬蹄型の半島にあります。市の南東側が太平洋岸に開けており、外海14kmにつながる金・銀屏風などの断崖は、自然の美観をあらわしています。市北部は隆起性の海岸段丘の台地を形成して、北隅には本地域の最高峰である海抜900m余に達する室蘭岳があります。気候は比較的温暖で雪も少なく、周囲が海である関係で夏季でも過ごしやすくなっています。
 室蘭は寛政8年(1796年)、英国船プロビデンス号が絵柄港に入港し、港湾条件の良好なことから、“天然の良港”として世界にその名が知れわたるようになりました。
 明治5年(1872年)、開拓計画の第一歩として「函館−室蘭−札幌」を結ぶ札幌本道の開削に着手し、この事業の一環である森−室蘭間の定期航路の開設によって開発が進められました。そして、明治の中期には、炭鉱汽船会社による鉄道敷設により海陸の吉として発展し、」明治後期に製鋼、製鉄両工場の建設によって、工業港湾都市としての性格を形成するに至りました。
 大正11年(1992年)に市制を施行し、その当時の人口は5万2000人でありました。そして、第2次世界大戦突入までには、市内にあった日本製鋼所、日本製鐵(現在の新日本製鉄)の二大工場が鉄鋼需要増加に対応して大幅な拡張を行い、室蘭は日本の中核軍需都市として使命を担うこととなります。
 第二次世界大戦後は日本石油精製(株)の進出を得て、重化学工業、港湾都市として進展してきましたが、その後の2次にわたるオイルショックや円高等によって、鉄鋼、造船等の基幹産業の操業規模の縮小・合理化という深刻な事態に直面することとなりました。そこで室蘭では、大手企業の新分野展開、先端企業等の誘致、室蘭テクノセンターの中小企業の育成などによる工業の多角化・高度化と港湾機能の拡充を図るなどの対応に追われました。
 室蘭港には東日本最大の吊り橋・白鳥大橋が架かっており、市は「海と科学技術のサークル都市むろらん」としてまちづくりを進めています。「道の駅」に指定されている白鳥大橋記念館(愛称:みたら)は白鳥大橋建設にかかる特殊工法や技術を資料やパネルで紹介しているほか、胆振地方の特産品の紹介なども行っています。
 室蘭は自然景観に恵まれ、特に室蘭半島の外海沿いは100m前後の断崖絶壁が約14kmにわたって連なり、中でも地球岬は室蘭を代表する景勝地となっています。語源は、「ポロ・チケウエ」(大きな断崖)で、120m余りの断崖の上に白亜の灯台がそびえ立っており、展望台から遠く沖合に目をやると、水平線がゆるやかな弧を描き、地球が丸いことを実感させられます。
 
 
 
■白老港の概況
 白老町は北海道の南西部、胆振管内の中央に位置し、東は苫小牧市、西は登別市に隣接、南は太平洋に面しています。海岸線の全長は約28kmで、苫小牧市との境を流れる「別々川」をはじめ、7本の水量豊かな河川が太平洋に注いでおり、その流域の平野部に市街地が形成されています。一方、町の北西から北東にかけては山岳地帯が広がっており、そのほとんどが支笏洞爺国立公園区域に属し、海岸に沿っては豊富な温泉が湧出しています。このような自然状況は、当地の温暖な気候と相まって、極めて恵まれた観光資源となっています。
 さて、白老港は北海道南西部の太平洋岸に面し、苫小牧港と室蘭港のほぼ中間に位置しています。本港の位置する白老町は、工業都市を指向した街作りを進めており積極的な誘致活動により、新規企業の立地が順調に進んできています。また、周辺地域は支笏・洞爺国立公園に指定されており、北海道縦貫自動車道などの高速幹線道路網や、平成10年(1998年)6月の道道白老大滝線の供用に伴い、物流・観光需要の増大が期待されています。
 港湾整備に関しては、平成2年(1990年)に漁港区の一部、平成7年(1995年)には商港区の一部が供用開始され、地元企業による原材料、製品等を中心とした内貿貨物が急激な伸びを見せています。また、平成13年(2001年)4月からは-7.5m岸壁1バースと-5.5m岸壁2バースを有する第2商港区が供用されており、地域産業を支える地方港湾として、沿岸漁業の基地として重要な役割を果たすことが期待されています。
 
 
■実施当日の様子■
 
[当日の模様]
 当日はどんよりとした曇り空。風も強い。
 室蘭はこの夏は記録的な冷夏で、7月の平均気温は16度とか。今日の室蘭から白老までの「日本ぐるっと一周・海交流」はどうなるのだろうといささか不安を抱きつつ、待ち合わせ場所の、祝津町は白鳥大橋たもとの、国土交通省室蘭港湾建設事務所へと向かう。
 待ち合わせ場所には、既にNPO羅針盤のメンバーと国土交通省のスタッフが待っていた。出発時間の8時に室蘭港を出航。船は、国土交通省の監視船「みさご」だ。クルーザーを小振りにしたような形で、600馬力のエンジン二基を搭載し定員は25名。線室は差ながら観光バスの要で、さすがは国土交通省の監視船と感心。ちなみに、船員は5名である。
 船は室蘭港を出ると徐々に速度を上げ、おおよそ28ノットで海上を快適に飛ばす。最高速は30ノットというから、ほぼ最高速度に近いスピードである。時速にすると約60km/hというところか。もちろん、マストには、高らかと、「日本ぐるっと一周・海交流」フラッグが掲げられている。
 途中、北海道百景の第一位である「地球岬」を望みつつ白老に向かうが、あいにくの曇天で、陸地はぼやけている。しかしながら、乗船メンバーは口々に「海から見る室蘭はいいなあ」「港は室蘭の大きな資源だよなあ」と言いながら、わらわらと室外に出てきて、海を眺めている。船の速度と強風で、あやうく足元がふらつくが、そこはしっかりと手すりに巻きつき、風に飛ばされそうになりながらも、記録写真を撮る一同。NPO羅針盤のメンバーは、国関係者と、海や港を活かしたまちづくりについて、船上で議論をしている。
 快調に飛ばして1時間ほどが経過しただろうか。鷲別に差し掛かる頃、船長の安原さんが船の速度を緩め、停止させた。なにごとだろうといぶかしむ一同だが、「みさご」船員の説明で納得。なんとイルカのお出迎えだ。室蘭市は、鯨イルカウオッチングのできるところであるが、まさか、実際にお目にかかるとは。船の周りを、あちらこちらで、三角形の背びれが見えている。しばし、イルカを眺めたところで船は再スタート。イルカも後を追うかの如く、併走している。
 幌別あたりで、小雨がぱらつき出した。そのなかで、「みさご」は、予定通り、1時間半の航海で白老港に到着した。浮き桟橋にゆるゆると近づき停泊する「みさご」。こうして、室蘭から白老までの「日本ぐるっと一周・海交流」は終了した。
 しかし、イベントはまだ続く。白老港では、町民がこぞって楽しみにしている「白老げんき祭」が催されるのである。そのオープニングセレモニーの一環で、「日本ぐるっと一周・海交流」の意義や海の駅について説明する時間が設けられているのだ。これはプログラムに正規に入っており、NPO羅針盤のメンバーが働きかけて実現したものである。
 会場を見物しながら時間をつぶし、オープニングを待つ一同。小雨はいつしか本降りに変わり、テントを叩く雨音がやかましくなった頃、祭の開始だ。ステージ前には来賓の方々が着席して待っている。地元選出の国会議員や道議会議長の姿も見える。そのなかで、「日本ぐるっと一周・海交流」の提唱者であるNPO地域交流センターが呼ばれ、挨拶をする。10分程度時間をいただいている間、海交流の意義や海の駅づくりを呼びかけた後、NPO羅針盤のメンバーからNPOしらおい創造空間『蔵』のメンバーに対し、親書が手渡された。これで「日本ぐるっと一周・海交流」の室蘭版の完成だ。一同、雨の降るなかでステージに上がり、感激の面持ちである。もちろん、全員、『蔵』のメンバーも含め、オレンジ色の「日本ぐるっと一周・海交流」特製Tシャツを着ている。雨の中、ひときわ目を引く色である。フラッグも誇らしげにメンバーの手により、披露されている。
 オープニングセレモニー終了後は、会場の一角で、室蘭市のNPO羅針盤と白老町のNPOしらおい創造空間『蔵』のメンバー、国土交通省、室蘭市の職員も交えて、海の町同士、今後の連携に対し、意見交換が始まった。今日がきっかけで、お互いの交流が始まるのだ。必ずや、室蘭市と白老町とは固い絆で結ばれ、交流が本格化して行くであろう。そして、「海の駅」もできるに違いない。すでに、白老町には、「海の駅」の雛型である「まちの駅」がある。
 意見交換の後は、実際に、しらおい創造空間『蔵』の活動の拠点である、白老まちの駅『蔵』を視察することとなり、期待に胸を膨らませ、全員で向かった。『蔵』は、自慢の通り、とても良い施設である。「海の駅」も、これに負けずに、定着してくれることを祈りながら、無事、すべてのプログラムを追えた一同であった。
(地域交流センター 水昭仁)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION