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2 整理・分類に当たっての考え方
 普通会計の将来的な財政負担となる事象等は、前述のとおり普通会計に限らず発生主体は様々であり、また、それぞれの事象は既に債務として確定しているもの、将来負担することが明らかなもの、負担するか個別に判断が必要なものなど多岐にわたるため、法令や契約関係等に基づき次のような区分を設けて発生主体別に事象ごとの具体的な内容、分類に当たっての考え方、具体的に把握する金額について以下のとおり整理・分類を行った。
 
区分 内容(普通会計との関係)
確定債務 基準日までに普通会計の債務として確定しているもの
A分類(実質債務) 基準日までに普通会計の債務として確定はしていないが、将来的に債務を確定させる原因となる法令や契約関係等が存在するもの
A'分類 A分類のうち、偶発的なもの
B分類 普通会計の将来負担とすべきか否かは、独立採算の原則等に照らし、個別に判断が必要なもの
C分類 法令上の根拠はないが、出資の範囲内で普通会計の将来負担となることが懸念されるもの
注:「基準日」は、会計年度の最終日とする。
 
 普通会計内における将来的な財政負担となる事象等としては次のようなものが考えられ、事象ごとに区分に基づき整理・分類した。
 
普通会計内
<地方債の発行等>
(1)地方債(普通会計債)
ア. 元金
イ. 支払予定利息額
 
(2)他会計等からの長期借入金
ア. 元金
イ. 支払予定利息額
 
<債務負担行為の設定>
(3)物件の購入等に係る債務負担行為額
(4)債務保証又は損失補償に係る債務負担行為額
(5)利子補給等に係る債務負担行為額
 
<継続費の設定>
(6)継続費の未執行額
 
<実質収支赤字の発生>
(7)実質収支赤字額
 
<退職手当支給確定額>
(8)退職手当支給確定額
 
〈地方債の発行等〉
(1)地方債(普通会計債)
[ア 元金]
【内容】
 基準日における地方債の元金をいう。
【分類】
 既に債務が確定していることから、確定債務とする。
【金額】
 基準日における地方債残高とする。
 
[イ 支払予定利息額]
【内容】
 基準日における地方債の元金に係る将来支払う予定の利息をいう。
【分類】
 支払利息は、一定期間の借入れというサービスの提供を受けた時点で「費用」として認識されるものであり、いわゆるバランスシート上の「負債」ではないが借入れに付随して必然的に後年度に負担することとなるものであること、また、借換等の変動要因があるが、利率と期間があらかじめ定められ金額もほぼ確定していることから、A分類とする。
【金額】
 基準日における地方債の元金について将来支払う予定の利息の総額とする。
 
(2)他会計等からの長期借入金
[ア 元金]
【内容】
 基準日における公営事業会計、基金等からの長期借入金の元金をいう。
【分類】
 上記(1)アと同様、確定債務とする。
【金額】
 基準日における公営事業会計、基金等からの長期借入金の残高とする。
 
[イ 支払予定利息額]
【内容】
 基準日における他会計等からの長期借入金の元金に係る将来支払う予定の利息をいう。
【分類】
 上記(1)イと同様、A分類とする。
【金額】
 基準日における他会計等からの長期借入金の元金について将来支払う予定の利息の総額とする。
 
〈債務負担行為の設定〉
(3)物件の購入等に係る債務負担行為額
[ア 確定分]
【内容】
 物件の購入等に係る債務負担行為のうち、基準日までに物件の引渡し等を受けているが、支払いが未済のもの(五省協定、PFIのBTO形式、国営事業又は県営事業に対する負担金、地方公務員等共済組合が建設した職員住宅等の無償譲渡を受けるために支払う賃借料など。)をいう。
【分類】
 物件の引渡し等を受けており、既に債務が確定していることから、確定債務とする。
【金額】
 基準日までに物件の引渡し等を受けたものに係る基準日の翌日以降の支出予定額とする。
 
[イ 未確定分]
【内容】
 物件の購入等に係る債務負担行為のうち、基準日までに物件の引渡し等を受けていないもの(土地開発公社からの土地の再取得予定額やPFIのBOT形式など)をいう。
【分類】
 物件の引渡し等を受けていないため債務は確定していないが、物件購入の契約等に基づき、将来、普通会計の負担となることが明らかなものであることから、A分類とする。
【金額】
 基準日までに物件の引渡し等を受けていないものに係る基準日の翌日以降の支出予定額とする。
 
(4)債務保証又は損失補償に係る債務負担行為額
[ア 確定分]
【内容】
 債務保証又は損失補償に係る債務負担行為のうち、基準日までに、債務保証契約の主たる債務者の債務不履行又は損失補償契約の相手方である金融機関等における損害の発生により、当該団体の弁済義務又は補てん義務が発生しているが、支払いが未済のものをいう。
【分類】
 既に弁済義務又は補てん義務が発生していることから、確定債務とする。
【金額】
 基準日までに弁済義務又は補てん義務が発生したものに係る基準日の翌日以降の支出予定額とする。
 
[イ 未確定分]
【内容】
 債務保証又は損失補償に係る債務負担行為のうち、弁済義務又は補てん義務が発生していないものをいう。
【分類】
 弁済義務又は補てん義務が発生しておらず、債務は確定していないが、債務保証契約の主たる債務者の債務不履行又は損失補償契約の相手方である金融機関等における損害の発生により、直ちに普通会計の債務が確定することから、A’分類とする。
【金額】
 基準日における債務保証の対象である主たる債務の残高又は損失補償の対象である金融機関等に対する債務の残高から、基準日までに弁済義務又は補てん義務が発生したもの(支払済みのものを含む)を除いた額とする。
 なお、地方三公社及び第三セクターに対する債務保証額又は損失補償額については、「(5)地方三公社」及び「(6)第三セクター」の項を参照のこと。
 
(5)利子補給等に係る債務負担行為額
【内容】
 利子補給等に係る債務負担行為のうち、特定の者が金融機関等から特定の資金の融資を受ける場合に、地方公共団体が当該融資額の利子分の全部又は一部を補給するもの及び上記(3)、(4)以外に係るものをいう。
【分類】
 金融機関等から貸付期間に応じて発生するもの等であり、債務は確定していないが、利子補給条例等に基づき、将来的に普通会計の負担となることが明らかなことから、A分類とする。
【金額】
 基準日の翌日以降の支出予定額とする。
 
〈継続費の設定〉
(6)継続費の未執行額
【内容】
 継続費の総額として予算に定められたもののうち、基準日において事業が未執行のものをいう。
【分類】
 金額がほぼ確定しており、事業の実施に伴い将来的に普通会計の負担となることが明らかなものであることから、A分類とする。
【金額】
 継続費の総額から基準日までに執行済みの事業に係る経費の額を控除した額とする。
 
〈実質収支赤字の発生〉
(7)実質収支赤字額
【内容】
 基準日における実質収支赤字をいう。
【分類】
 翌年度における財政負担となることから、確定債務とする。
【金額】
 基準日における実質収支赤字額とする。
 
〈退職手当支給確定額〉
(8)退職手当支給確定額
【内容】
 退職手当支給確定額とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に職員に支給される給付のうち基準日までに発生していると認められるものをいう。
【分類】
 退職手当に対応するために計算される退職手当支給確定額は、すでに職員に対して債務が確定していると認められるものであるから、確定債務とする。
【金額】
 退職手当支給確定額は、基準日時点で職員全員が普通退職したと想定し、その要支給額とする。







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