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4.2 特徴
 新マイクロ波標識として考えられる遅延合成方式レーダービーコンの特徴は、どのようなレーダー方式の波形に対しても応答できる可能性があり、なおかつレーダービーコン局を表す識別符号が挿入できる可能性を持っていることである。そこで、遅延合成方式の原理ブロックに種々の方式のレーダー送信波形を入力した場合の応答波形についてシミュレーションにより検討した。図4-7はシミュレーションのための基本構成であり、動作としては図4-3に示した遅延合成方式の概念ブロックと等価である。
 図4-8は、既存船舶レーダーで使用されている単純パルスの入力波形に対する応答波形である。このシミュレーションでは、レーダーの送信パルスは0.5μsとし、単位遅延ブロックも0.5μsとしている。また、応答符号は長線3μs、短点1μsの符号「K」を想定して遅延を合成した。同図の結果からわかるように、入力波形のパルス幅と単位遅延ブロックの遅延量が一致している場合は、理想的な応答符号が得られることがわかる。
 次に、同じ回路にパルス圧縮レーダーのリニアFMチャープパルス波が入力された場合について検討した。入力波形としての、レーダーからの送信パルスを図4-9に示す。パルス幅15μs、周波数掃引幅2MHzのチャープ波を想定し、レーダーの圧縮処理によって1/30の0.5μsに圧縮されることを想定している。図4-10は、遅延合成による出力波形である。まだレーダーによる圧縮処理が行われていない状態であるため、波形は符号の形を成しているわけではない。この応答波がレーダー側で圧縮処理された段階での波形を図4-11に示す。同図のように、符号「K」(「−・−」)の形状が発生できていることがわかる。なお、サイドローブレベルが高くなっているのは、レーダーの仮定をリニアチャープ方式として何らサイドローブ抑圧処理を行っていないためであり、レーダービーコン側の問題ではなく、レーダー側の問題である。
 さらに、同じ回路にFM-CWレーダーの送信波を入力した場合についても検討した。図4-12は、レーダービーコンからの応答波である。これをFM-CWレーダーでFFT処理した場合の波形を図4-13に示す。同図は、FM-CWレーダーにおいて距離を意味するビート周波数を横軸にとっており、パルスレーダーにおける時間軸と等価である。この結果から解るように、遅延合成方式のレーダービーコンは、FM-CWレーダーに対しても符号を生成出来ていることがわかる。なお、この波形にサイドローブが表れていないのは、レーダーの仮定として、FFT処理にはブラックマンウィンドウ処理を施してレンジサイドローブ抑圧を行っている場合を想定しているためで、あくまでレーダー側の問題である。
 以上の検討結果より、遅延合成方式の特徴であるところの符号挿入について、その可能性があることを確認できた。
 
図4-7 遅延合成方式シミュレーションの基本構成
 
図4-8 遅延合成方式レーダービーコンの単純パルス入力に対する応答
 
図4-9 遅延合成方式レーダービーコンへのパルス圧縮レーダー波の入力
 
図4-10 パルス圧縮波による遅延合成方式レーダービーコンの出力波形
 
図4-11 
遅延合成方式レーダービーコン出力のパルス圧縮レーダーでの処理後応答波形
 
図4-12 FM-CWレーダー波による遅延合成方式レーダービーコンの出力波形
 
図4-13 遅延合成方式レーダービーコン出力のFM-CWレーダーでの処理後応答波形







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