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吟剣詩舞の若人に聞く 第56回
 
長岡加奈さん
 
長岡加奈さん(十八歳)●岡山県津山市在住
(平成十四年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞少年の部優勝)
母:長岡順子さん
師:藤上翔山さん
宗家:藤上南山さん(菊水流剣詩舞道本部)
人を魅了する表現力の向上に、もっと努力したい
 着実な歩みで平成十四年度剣詩舞コンクール決勝大会詩舞少年の部で栄冠をつかんだ長岡加奈さん。これからさらなる飛躍が期待される彼女に、母、師、宗家を交えて、いろいろなお話をお聞きしました。
 
―本日はよろしくお願いします。長岡加奈さんは、いまおいくつになられました?
加奈「十八歳です」
―高校三年生ですか?
加奈「いいえ、大学一年生です」
―何を専攻されているのですか?
加奈「英語文化学科です」
―昨年のことになってしまいますが、優勝された感想はいかがですか?
加奈「もう涙が出るくらい嬉しかったです」
―少年の部はどれくらい挑戦されたのですか?
順子「六年です。でも一度、予選落ちがありますので、実質は五年間挑戦しました」
―五年ということは、五回は全国大会に出場したわけですね?
順子「一回決勝大会に行けなかったので、四回です。最初の頃は、先輩がたくさんいてなかなか出場できませんでした」(笑)
―その四回の挑戦の結果はどうでしたか?
加奈「最初の年が四位でその次が三位、次の年が二位だったと思います」(笑)
順子「そう、四、三、二、一ときたわね」(大笑)
―どんどんステップアップしたわけですね?
加奈「そうなりますね」(笑)
―ところで、いつから踊りはじめられたのですか?
加奈「九歳の終わり頃からです」
―どういうきっかけで始められたのですか?
加奈「きっかけは叔父が詩吟をやっていたからです。叔父さんの舞台を何度か見に行きまして、私もやってみたいな、というのがきっかけです」
―吟詠を見て、詩舞の方に行ったのはどういうことですか?
加奈「なんとなくですか」(笑)
―お母さんは、詩舞をやっていらっしゃるのですか?
順子「いいえ」(笑)
南山「お母さんはやっていないね。お父さんが詩吟をやっています」
―初めて詩舞を見たときの印象はどうでしたか?
加奈「剣舞を見たのですけど、女の方が髪を高く括って(くくって)ひとつに束ね、その姿がかっこいいなと思ったので、やってみることにしました」(笑)
―入るときには詩舞と決めていたのですか?
加奈「いいえ、とくには決めていませんでした」
―詩舞を習うのは、最初からこちらのご宗家にお世話になったのですか?
加奈「はい、そうです」
―そのときから、翔山先生に教わっていたのですか?
翔山「いいえ、初めは父である宗家が教えていました」
―どんな生徒さんでしたか?
南山「もう甘えん坊でしたね(笑)。小学校五年生になってもお母さんの膝の上に腰掛けて抱っこされていました。甘えん坊な子供でしたよ」
―その甘えん坊さんを、どう指導していこうと思われましたか?
南山「特にどうこうしようとは思いませんでした」
―初めて稽古場へいった感想は?
加奈「毎週、緊張して通っていたのを覚えています」
南山「あの頃は、理恵ちゃん(平成九年度、詩舞少年の部で優勝した岡本理恵さん)というライバルもおりましたし、緊張していたかもしれませんね」
―その頃、ライバル意識はありましたか?
加奈「その頃はありませんでしたが、少年の部になってからは、私にとって大きな存在だなと思いました」
 
インタビューに答える写真左より師の藤上翔山さん、母の長岡順子さん、長岡加奈さん、藤上南山宗家
 
―翔山先生はいつ頃から教えているのですか?
翔山「五年前ぐらいから直接教えるようになりました。父が津山のほうへ行かなくなったものですから、逆にこちらに稽古にきてもらっています」
―先生は、中学校ぐらいから指導されてるわけですね。その頃の印象はどうでした。
翔山「努力家でしたね。勘がいいほうではなかったですから(笑)、こつこつ努力するタイプです。でも、覚えは早いですよ」
―特徴的なところはありますか?
翔山「比較的のびのびと踊れることですね。踊りがおおらかです」
―指導していくうえで、最初何を一番注意されましたか?
翔山「踊りはおおらかなのですが、本人が持っている悪い癖がありまして、その癖を何年かかけて直さないといけないなと思いました」
―具体的にはどういうことですか
翔山「バウンドが強いのが、いちばん私の目につきました」
―バウンドというのは何ですか?
翔山「バウンドですか、ぴょんぴょん跳ねるような感じのことです」(笑)
南山「洋舞的な感じで踊っているということです」
翔山「でも今はバウンドの癖は、ほとんど無くなりました」
―どう、先生に教わっていることについては?
加奈「言われたときには分かるのですが、踊っているうちにだんだん自分の中から飛んでいってしまう。だから何度も何度も同じことを注意されてしまいます」(笑)
 
演技指導を受ける長岡加奈さん、左は藤上南山宗家
 
―自分の踊りで自信のあるところはありますか?
加奈「難しいですね。まだよく分かりません」
―先ほどお話に出たライバルと比べて、この点については学ばないといけないな、みたいなことはありますか?
加奈「岡本理恵ちゃんの踊りは、表情が豊かです。私の踊りは表情がありません(笑)。無表情で踊っている感じです。その点が羨ましいなと思います」
翔山「岡本理恵が先に少年の部で優勝しているのです。だからよけいにライバルになったのでしょう」
―理恵さんの優勝を、どう思いましたか?
加奈「おめでとうと思った半面、少し悔しいなと思いました」(笑)
―同じ頃に始めたのですか?
加奈「いいえ。理恵ちゃんのほうがずいぶん先に始めていました」
―けっこう負けず嫌い?
翔山「たぶん、そうだと思います」(大笑)
―最後の質問となりますが、これで少年の部は優勝しましたが、今度は青年の部ですね、今後の抱負は?
加奈「はい、青年の部でも優勝したいと思っています」
―そのためにはどういう努力が必要だと思いますか?
加奈「とにかく、もっと自分を磨かないといけないです。本当に青年の部は幅広いですし、うまい人がたくさんいますので、頑張るしかありません」
―先生はいかがですか?
翔山「さっき本人も話していましたが、自分の踊りに表情がないということが分かっているので、つまり感情表現がうまくないということが、今日のインタビューで加奈もそのことが分かっているのだということを、私も初めてわかりました(笑)。そのことが良かったですね。これから大学生になって踊り以外にも見聞を広めてもらいたいと思っています」
―感情表現についてはいかがですか?.
翔山「いちばん難しいところですね。私たちは型やテクニックは教えることができますが、感情表現は本人の中から湧いて出てくるものですから、やはり自分を豊かにするしか方法はないですね」
南山「加奈も自覚しているみたいだしね」(笑)
加奈「はい、頑張ります」(笑)
―本日はお忙しい中、ありがとうございました。今後の皆様のご活躍を期待しております。







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