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日本ナショナルトラスト報 2004年3月号
Japan National Trust Magazine Mar 2004
 
特集(1)
日本鉄道保存協会
平成15年度総会及びシンポジウム報告
 平成15年度の日本鉄道保存協会の総会を9月18・19日に西日本旅客鉄道(株)の「交通科学博物館」で開催した。開催地の西日本旅客鉄道(株)では、大阪・弁天町の交通科学博物館や京都の梅小路蒸気機関車館などでC62形2号をはじめ、数多くの歴史的車両を動態及び静態保存をしているほか、営業路線である山口線では「SL山口号」を、北陸線では「SL琵琶湖号」を動態保存している。一昨年は、O形新幹線の先頭部分を、姉妹提携した英国・ヨーク国立鉄道博物館に寄贈しており、昨年7月には敦賀第2機関区で展示保存されていた交流用電気機関車ED70を完全修復し、末永く保存することを目的に財団法人日本ナショナルトラストへ寄贈するなど社をあげて積極的に歴史的車両の保存に取り組んでいる。また、社内報で身近にある駅舎や橋梁、トンネルなどを取り上げ、社員の鉄道文化財への意識を高める活動も推進している。
 まず、「交通科学博物館」に集合した参加者は、館内の野外展示場のD51形2号・C62形26号・キハ81形3号や湘南形80系電車、戦前型の貴重な寝台車・食堂車などを案内付きで見学をおこなった。昨年、野外展示スペースの改修がおこなわれ、車両は大きな屋根に覆われて、雨・風から守られて展示されている。静態保存の理想ともいえる形での保存に、鉄道車両の保存へのなみなみならぬ意気込みが感じられた。
 その後、ホールに場所を移し、平成15年度総会をおこなった。総会には、顧問の青木栄一氏、小池滋氏、松澤正二氏、当財団の増田浩三常務理事をはじめ、全国11団体から24名、賛助会員7名、オブザーバー15名が出席した。まず、「鉄道ジャーナル社」の加盟を承認し、その後、平成14年度の事業・収支・監査の報告と平成15年度の事業計画・収支予算などの審議をおこなった。平成14年度事業では、真岡線SL運行協議会での総会の開催のほか、当協会の加盟団体紹介パンフレットの作製、JTB出版発行の「SL復活物語」出版への協力などを実施した。平成15年度の事業では当協会の組織強化のためのプロジェクトを発足させることとし、歴史的車両の静態保存をしている団体にも加盟を呼びかけ、会員の拡充をおこなうことが決まった。なお、次回の総会開催場所は候補地と調整することとした。
 総会後は、初めて分科会方式による意見交換会をおこなった。「歴史的車両の修復技術の伝承」と「歴史的車両の動態保存の社会性」の2つのテーマで、それぞれプレゼンターとコーディネーターが進行役をつとめた。「歴史的車両の修復技術の伝承」では、サッパボイラ取締役の颯波基一氏よりボイラー修理における技術の伝承の難しさや新しい技術を用いての修理方法などの話があり、また「歴史的車両の動態保存の社会性」では、加悦(かや)観光協会事務局長の篠崎隆氏より歴史的車両の動態保存を社会性のあるものにするためにはどうしたらいいかなどの話しがあった。それぞれに対して参加者は活発な意見を交換し、充実した会議となった。
 
梅小路蒸気機関車館の扇型庫前で
 
梅小路蒸気機関車館を見学
 
昔懐かしいプラットホーム −交通科学博物館内
 
総会での挨拶
 
分科会方式による意見交換会
 
 翌19日はまず、京都にある「梅小路蒸気機関車館」の見学をおこなった。日本の動態保存SLのメッカともいわれる「梅小路蒸気機関車館」には、転車台を取り囲む現存する最古(1914年)の鉄筋コンクリート造の大型扇形庫に、大正・昭和時代に活躍した歴史的な国鉄時代のSL18両が展示保存されている。普段は入れない庫内にも案内いただき、修理中の8630号機の動輪磨きなども見学をさせていただいた。その後、貸切りバスで亀岡市へ向かい、JR馬堀駅近くの「トロッコ亀山駅」から嵯峨野観光鉄道に乗車し、保津川沿いをトロッコ列車に揺られながら「トロッコ嵯峨野駅」までの約26分の短い旅を楽しんだ。最後に希望者で長浜市にある財団法人日本ナショナルトラストのヘリテイジセンター「長浜鉄道文化館・北陸線電化記念館」の視察もおこなった。今回は、JR西日本が保存する歴史的車両の静態及び動態保存の現場を多岐にわたり視察することができ、各団体において歴史的車両の保存のあり方を考える上で、大変、参考になる有意義な総会だった。
(事務局 松本)







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