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鳴き砂(鳴り砂)の浜の保全活動に関するアンケート結果
調査名:観光資源としての鳴き砂(鳴り砂)の浜の総合調査 2003年度調査
調査主体:(財)日本ナショナルトラスト 調査期間:2003年12月〜2004年1月
調査対象:鳴き砂(鳴り砂)の浜のある地域の行政、およびその保全団体
回収数:22/31団体 回収率:70.9%
 
鳴き砂(嶋り砂)の浜の保全活動
 今回アンケートの回答が得られたのは22の行政・団体、19地域であり、そのうち12地域が保全活動を行っている。一方、行っていない地域の理由は、現在鳴かなくなった所や山中にある特殊な地域を除くと、人との関係が希薄で保全の必要が低い場合や、既に汚染が進んでおり現状の体制では手に負えない状態となっている場合が見られる。
 保全活動の主な内容としては、年に2〜3回平均の砂浜の清掃、鳴き砂(鳴り砂)の浜の知識や情報等に関する講習会や環境学習、監視員による砂浜パトロールがあげられる。また看板の設置や行政の窓口を設置して保全への理解促進や保全活動の推進を行っている地域が多く見られた。
 
保全団体の現状
 保全活動を行う団体は、主に鳴き砂(鳴り砂)の浜の保全を目的とした地域住民によって構成されている。また活動資金に関しては、行政からの援助を得ている地域が半数以上あり、その他には会員の会費によって運営している場合が多く見られる。また清掃活動などは、行政の事業として行う以外では、無償ボランティアとして行われている場合が多い。
 今後新たに活動内容を広げていこうと考えている団体が半数近くの9団体あり、その内容としては清掃活動の拡大などが予定されているようである。
 
鳴き砂(鳴り砂)の浜の利用状況
 現在の鳴き砂(鳴り砂)の浜の利用状況は、海水浴や釣り、散策などレジャーの場としての利用が最も多く、他には白砂青松といった名勝として位置づけられている。また12地域で小・中学生や高校生を対象とした環境学習の場として活用されている。
 
保全活動を行う上での問題
 現在様々な保全活動が行われているが、活動を行っている上での問題意識としてあげられているものでは、主に漂着物の処理・除去、ゴミのポイ捨てがある。また保全団体の会員の高齢化が進み、活動の継続性が危ぶまれている地域もある。
 
鳴き砂(鳴り砂)と人の関わり
1. 様々な保全活動パターン
▽押し寄せる観光開発に対する砂浜の賢明な利用(京都府網野町琴引浜)
▽鉱物資源使用としての鳴き砂(山形県飯豊町遅谷)
▽科学調査の題材としての鳴き砂(宮城県気仙沼市十八鳴浜)
▽市民の憩いの場としての砂浜(北海道室蘭市イタンキ浜)
 
2. 保全活動の体験談
▽琴引浜(京都府網野町)
▽十八鳴浜(宮城県気仙沼市)
 
鳴き砂(鳴り砂)の浜のメカニズム
1. 鳴き砂(鳴り砂)の浜を取り囲む現状
○北部九州の海岸
○一時期、鳴らなくなった鳴き砂の浜 姉子の浜(福岡県二丈町)
○全国の鳴き砂(鳴り砂)の浜、自然海岸は大丈夫なのか?
 
「どうすれば守れるのか? どんな活用が出来るのか?」
 
2. 鳴き砂(鳴り砂)の浜のメカニズムを探る!
○十八鳴浜(宮城県気仙沼市大島)での仮説設定
▽十八鳴浜での取り組み
・1980年遊歩道設置、1981年漁港施設計画
・文化財天然記念物(1972年)との整合性は?→十八鳴浜研究会発足!
▽メカニズム-1 砂(石英質)の供給システム(仮説)
・後背地の砂岩からの供給
▽メカニズム-2 鳴き砂(鳴り砂)の研磨・洗浄システム(仮説)
・波で洗われ研磨される砂
○多様な砂(石英質)の供給システム
▽イタンキ浜(北海道室蘭市)→遠隔地からの砂の供給
▽琴引浜(京都府網野町)→砂で構成された地形(古砂丘)
▽太古の浜(山形県飯豊町遅谷)→1500万年前の海
 
3. まとめ
メカニズムの仮設設定から得られる効果
1. 鳴き砂(鳴り砂)の浜のキャパシティ(開発や活用の限界)を明らかにできること
2. 鳴き砂(鳴り砂)の浜の希少性を明確にできること
3. 定期的なモニタリングの項目設定へ反映できること
4. 本格的な科学調査へのきっかけをつくること
 
今後の取り組み
鳴き砂(鳴り砂)の浜を保全・活用する仕組みをつくるために
《様々な事例を調査する》
・砂(石英質)の供給システムを類型化する
・鳴かなくなった浜の原因を探る
・周知されていない鳴き砂(鳴り砂)の浜を発見する
・漂着物による影響を探る
 
助成 日本財団
主催 財団法人日本ナショナルトラスト
編集 九州大学西山研究室
 
 
別紙1
鳴き砂(鳴り砂)と人との関わり
松本 清
 
 鳴き砂(鳴り砂)の保全活動が各地で盛んに進められています。なぜ、今「鳴き砂(鳴り砂)」なのでしょうか。
 地元の人たちは昔から砂が音を発することは当たり前のことでした。そこに一科学者が登場し、それが「鳴き砂(鳴り砂)」であることと価値の高いことを啓発していくなかで、地元は認識を新たにしていきました。鳴き砂(鳴り砂)の正体が理解されてくるとその価値の深さを実感するようになります。
 その価値とは「学術的価値」「希少価値」「環境指標材としての価値」「環境・体験教材としての価値」「観光資源的価値」などさまざまありますが、何よりもロマンに満ちあふれ、「地域の人々の心をつなぐよりどころ」という価値があります。それは地域の財産、ひいては日本の財産でもあるのです。
 しかし、その鳴き砂も汚染によって鳴かなくなるという現実があります。煙草の灰が混じっただけで鳴かなくなるのです。鳴き砂を鳴き砂として維持することは自分たちの住む環境を担保することでもあります。こうして地元の人々を核にした保全活動が各地で展開されるようになってきたのです。
 活動は独り相撲では進められません。行政とのスムーズな連携、地域の理解と協力が必要です。鳴き砂を通じて人と人の輪が結ばれ、同じ思いが血液のように循環することが大切なのです。







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