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3.2 同等安全措置に関する評価と承認
3.2.1 SOLAS第II-2章・同等火災安全措置の評価と承認
 SOLAS新II-2章では、防火の基本要素に対応する具体的な防火要件は、Part B、C、D、E及びGの各規則及びFSSコードに示される。そこで、これらのPartの規則あるいはFSSコードに規定されている具体的な設備要件と同等の安全性能を実現し得る他の設備あるいは設計を用いようとする場合に、その性能の同等性を評価するため、新II-2章ではPart Fの17規則が用意された。その同等性の評価方法の内容は:
(1)Part B、C、D、E及びG並びにFSSコードの各規則に示される具体的な防火設備以外であって、これらの規則の冒頭に示された基本要件を満足する代替防火設備及び設計を用いることができる。
(2)そのような代替防火設備及び設計が、その対応する規則に示された防火要件を満足していること、あるいはその規則が要求する具体的な防火設備と同等の防火性能を持つことを証明する。この証明のために、防火性能解析を行う。その内容は、
a どの規則の具体的要件と同等の設備を考えるかを宣言する。
b その規則が要求する安全性能と安全レベルを抽出して示す。
c 考えている同等の防火設備及び設計の詳細を示す。また、その同等防火設備及び設計に起因する船舶の運航制限がある場合には、これを表明する。
d 考えている同等の防火設備及び設計が、(2)の安全性能と安全レベルを実現できることを証明する。
 以上の防火性能解析の具体的な方法を示すため、「SOLAS新II-2章に対する代替設計・設備の同等性能を証明するための指針:Guidelines for proving equivalence of alternative design and arrangement to SOLAS Chapter II-2」が作成され、MSC第74回会議で承認されてMSC/Circ.1002として回章された。
 この同等性評価指針に示される防火性能解析の道筋は以下の通りである。
 
(1)必要に応じて、代替防火設備・設計の設計者、その船舶の所有者あるいは運航者、製造者(造船所、機器製造者)、検査する側の代表者(旗国、寄港国)、船級代表者、火災安全の専門家からなる評価チームを形成し、そのチーム内での合意を得つつ、以下の作業を進める。
(2)考えている代替防火設備・設計の目的及び内容を示す。また、関係するSOLAS新II-2章の規則が要求する防火要件及び基準を抽出し、考えるべき火災状況及び危険状況を抽出する。
(3)考えている代替防火設備・設計が、関係するSOLAS新II-2章の規則が要求する防火要件及び基準を満足することを、考えるべき火災状況及び危険状況に沿って定量的に解析する。この解析の手法としては、
・ISO TR13387:2000 "Fire safety engineering"
・The SFPE Engineering Guide to Performance-Based Fire Protection Analysis and Design of Buildings, Society of Fire Protection Engineers and National Fire Protection Association, 1999
あるいは各主管庁が認めるその他の手法を用いることができる。
(4)(3)の解析結果及び判定結果を示し、主管庁が承認した報告書は、当該船舶に保管する。
 
3.2.2 SOLAS第II-1章及び第III章
 SOLAS第II-1章及び第III章の規定が仕様的すぎるために、新しい技術に基づく同等措置の導入が阻害されていることが、IMO DE46の大型旅客船に関する議論の中で指摘された。そこで、SOLAS第II-1章及び第III章においても、SOLAS第II-2章第17規則にあるような同等安全措置の評価・承認のための規則と、これを補足する指針の検討の必要性が指摘されている。
 SOLAS第II-2章の2000年改正案作成の過程においては、同等性火災安全措置を考えるためには各規則の目的及び基本要件を捉えてこれらを規則に明示することが必要であるという考えに基づいて、改正されたSOLAS第II-2章の各規則の冒頭に、その規則の目的と基本要件を掲げた。
 ここでは、現行のSOLASII-1章及びIII章の各規則の目的及び基本要件を抽出した。さらに、それらの規則に要求されているものと同等の安全措置を評価・承認する規則案を考えた。
 SOLAS第II-2章(防火)は、目的が比較的に明確であり、その組み立てが火災に対する防護と連携しているため、同等安全措置に関する評価の第17規則の草起も比較的容易であった。一方、SOLAS第II-1章はいくつかの要素(構造、復原性、電気設備など)から成っているため、その同等安全措置に関する評価の規則案を作成することは、SOLAS第II-2章17規則を模して草起するにしても、困難な面があった。
 SOLAS第II-1章では、損傷時復原性で確率論的手法が導入されており、一部ではすでに規定が性能基準となっているところもある。
 SOLAS第III章には、関連する救命設備に関する要件を示した救命設備コード(LSA Code)がある。球形艇などの救命設備の要件では、例えば救命艇の定員の上限、救命胴衣の浮揚性能など、仕様的規定が多く含まれている。一方大型旅客船では、乗員乗客の数が膨大となりつつあり、また船内の公室及び船室が多種多様となってきている。従来の救命艇などの救命設備が大型旅客船の設計における自由度を妨げているという指摘もあり、同等安全措置の承認をこのコードに示されている救命設備にも適用することが求められる。
 ここで検討した結果は、さらに整理をした上で、SOLAS第II-1章及び第III章を扱っているDE小委員会へ提供するべきであろう。また、SOLASなどの国際規則を性能要件化すべきという議論がMSC及びMEPCにおいて度々起こっているため、規則の性能要件化と同等安全措置の評価・承認の仕組みを根本的に検討して、そのような仕組みを確立することも将来は考える必要があろう。







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