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(9)CFDを用いたライザーの挙動解析に関する研究
伊藤和彰、増田光一、近藤典夫、居駒知樹(日本大学)、
林昌奎(東大生研)、前田久明(日本大学)
 
 ライザーの挙動の最大到達範囲に着目した、CFDを用いたライザーの挙動解析を行った。CFD計算と構造計算を連成させないため、ライザーの分割数を増加させても計算時間を極端に増加させずに最大到達範囲を推定でき、流体力算定では、移動メッシュを適用することにより、ライザーの動的影響を考慮できるような手法を開発した。実験結果の最大到達範囲と比較すると、移動メッシュを用いた流体力算定手法を用いたライザーの挙動解析手法が有効であり、3次元CFDと2次元CFDによる流体力を比較すると3次元CFDの流体力の方が低く算出されるが、既知の値と比較すると良く合っている。しかし、今回行った3次元CFDの計算は計算時間が非常に長く、現実的解析手法とは言いがたく、CFDを利用してライザーの挙動の最大到達範囲を解析するには移動メッシユを用いた流体力算定手法を用いたライザーの挙動算定手法が有効であるという結論を得た。
 
Maximum response、Inline、in Fixed
mesh and Moving mesh、Re=500
 
居駒知樹、増田光一、前田久明(日本大学)、
林昌奎(東大生研)
 
 本論文は、小規模で正方形エアクッション群によって支持される1,000m規模の弾性浮体の挙動特性について検討している。エアクッションは格子状に浮体底面全体に配置される。このとき、個々のエアクッション区画規模と入射波長との関係によって弾性変形の低減効果がどういった状況で見られるかについて、縦波中および斜波中について調べた。理論解析には圧力分布法を適用し、エアクッション内自由表面条件を考慮した。
 系統計算の結果、区画内に1波長となる場合や、入射波長が個々の区画の2倍になるときに顕著な応答低減効果が見られた。設定海域は水深100mである。
 
1,000m×200mの浮体に8秒程度の波が
入射したときの長手方向鉛直変位分布
(aircushion 1〜4はそれぞれ格子状に
25m、40m、50m、100mのエアクッションが並ぶ)
 
吉田基樹、鮑偉光、木下健(東京大学)
 
 従来の準定常法では長周期浮体運動の加速度比例項である波漂流付加質量を取扱うのは不可能であるので、それに替わる動的手法を用いた理論及び実験法を開発した。本報ではそのうちの波漂流付加質量の理論について論じる。波漂流付加質量は入射波と長周期浮体運動との相互作用の結果生じる非線形流体力であり、本報では、移動座標系を用いた上で、2つの微小パラメーターかつ2つの時間スケールにもとづいた摂動解析から直接に波漂流付加質量が導出される。即ち、全ポテンシャルは下式の通り摂動展開され、ポテンシャル境界値問題が解かれた後、物体表面上の圧力の積分により浮体に働く流体力が計算される。
 
速度ポテンシャルの摂動展開
 
吉田基樹、石橋和子、鮑偉光、木下健(東京大学)
 
 波漂流付加質量を測定するため、動的な実験手法を開発した。即ち、模型の線形応答運動を許し、比較的大きな1次波強制力を受流してその力を回避し、長周期運動振動数を模型システム固有振動数よりやや高めに設定することにより高次流体力を精度良く取出す工夫をした振り子式強制動揺実験である。この結果、波漂流付加質量を系統的に測定できるようになった。たとえば、下図のように、円柱列(4本円柱)模型では波漂流付加質量は波数に対しhump and hollowを持ち、全体的傾向として実験値と計算値(前報の理論による)はかなり良く一致することも確認された。更に、波漂流付加質量実験値は波振幅の2乗に比例し、模型喫水の影響を受けないことも示された。
 
波漂流付加質量の波数依存性(円柱列模型)
 
吉田基樹(東京大学)、一色浩(数理解析研)、
鮑偉光、木下健(東京大学)
 
 波漂流付加質量の計算には高次オーダー速度ポテンシャルを解く必要がある。本報では、流体域のポテンシャルが自由表面を含んだ面上の積分で表されるというGreenの公式を利用し、ポテンシャルに適当な無限遠条件を課して唯一解の存在を保証することにより自由表面上の積分の発散問題を解決し、高次各オーダー・ポテンシャルの解を得ることができた。この結果、波漂流付加質量の理論計算が可能となり、海底に接した一様鉛直円柱の場合の計算例は下図の通り示され、高次オーダー・ポテンシャルが加わる毎に波漂流付加質量の値が少しずつ動く様子が分る。
 
波漂流付加質量A211の理論解析解







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