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6-5. 海事産業
 ソロモン諸島では、造船やボート建造には鉄鋼や木材、及びファイバーグラス(grp)が使用され、船の大きさは長さ30mから小型のカヌーにまで及ぶ。また、長さ50mまでの鉄鋼バージが過去に建造された。しかし、経済の崩壊によって国内の造船やボートの建造が劇的に減少した。
 
 長さ約6mの屋根のないファイバーグラス製カヌーを生産している企業が数社ある。これらの企業は成型、販売された数多くのファイバーグラス製ボートの中のごく1部を製造しているにすぎず、ボート製造業者として数えることはできない。
 
 ソロモン諸島を本拠として積極的に鋼船の建造を行っていた唯一の造船企業は、ホニアラのR&R・エンジニアリング社(R&R Engineering)である。国内の造船発注が少なく、同社は一般的なエンジニアリングや請負業務へと事業を多角化させた。
 
 R&Rエンジニアリング社は、アルミニウム取り扱い技術を向上させ、材料加工と同様、効率的に一連の小型モーターボートの建造を行ってきた。1997年から1998年にかけて、同社は引船や上陸用舟艇、及びバージを納入した。
 
 ソロモン諸島における木製ボートの建造は、主にマライタ州近くのランガランガで行われている。これらのボート建造業者は高い品質を評価されているが、この業界は投機的な面があり、建造が終わった船はほとんど全てが購入者を待ち受けることになる。同国が問題を抱える中、過去3年間にボートはほとんど売却されなかった。
 
 船舶修繕と船舶輸送に関与している3つの施設がある。ササペ・マリナは国有の施設であり、現在その稼動状況は生産能力をはるかに下回っている。他の運航業者、タロアニアラ社(Taroaniara)とアビアビ社(Avi Avi)は、依然として稼働率が落ちたままである。これらの施設では最大300t、最長45mの船を取扱うことができる。
 
 これら3つの中で最大のササペ・マリナはSIGによって売却される可能性があり、既にいくつかの地方組織がこの買収に関心を示している。
 
 3つの施設によって扱われる船の数に関する最新情報はないが、過去の取扱量から造船台に上げられた場合のターンアラウンドタイムは通常約5日間であることがわかる(大規模な水面下の船体修理が含まれない場合)。
 
表5. 年間の船の入渠数
施設 1996年 1997年 1998年(6カ月)
ササペ 情報なし 情報なし 30
タロアニアラ 27 34 11
アビアビ - 30 14
 
 2000年以前には、ソロモン諸島の領海でプロのダイバーを乗せたダイビングボートが数隻航行していた。大型ボートはすべて撤退したため、現在も同国を訪れる少数のダイバーは小型ボートによる日帰りツアーを利用している。現在、ソロモン諸島ではクルーズ客船は運航していない。
 
6-6. 港湾設備
 ホニアラの主要な国際船用の波止場は、1990年代前半に長さ120m、水深9.2mまで拡張され、長さ200mまでの船を入港させることができる。1996年には、長さ42m、水深2.5mの国内船の乗客用桟橋と、長さ18mのバージ導板と波打ち際の防備が完成した。さらに、海岸線に沿って主要な国際船用の波止場の東側には、島間を結ぶ船舶用の6つの小型桟橋がある。
 
 ノロ港はニュージョージア島に位置し、西部ソロモン諸島コプラの仕入れ及び輸出センターであり、多くの漁業インフラが整備されている。ソロタイ社の漁船運航のための石油製品もまたノロ港から輸入されている。ノロの深海バースは長さが62m、着岸時の喫水が14mである。
 
 ヤンディナの港はラッセル諸島に位置しており、以前はレベールのパシフィック・プランテーションズ社(Pacific Plantations Pty Ltd)用のコプラとココナツ油の輸出センターであった。既存の波止場は長さ53m、着岸時の喫水が6.4mである。波止場の状態は悪く、CEMAは改修及び拡張の必要が高い場所と指定している。
 
 新しい国際貿易港はアウキの約20km南のマライタのビナ港に建設することが計画されていたが、このプロジェクトは全く実施されなかった。
 
 船が寄港していると報告されている場所が合計400箇所以上あるが、沿岸や島間を運行する船が定期的に寄航しているのは、約124の小型の波止場や桟橋、及び86の錨地である。通常、基盤設備開発省が、島間を運行する船用の波止場施設の初期調査や設計を行い、個々の州政府が工事や点検整備を受け持っている。
 
 しかし、中央政府と州政府のいずれが波止場や桟橋の整備点検に責任があるかという点において混乱が見られるようである。これは1970年代後半以降、波止場と桟橋に関する登録簿やこれらの状態に関する情報が収集されていないという事実にも反映されている。
 
 島間を結ぶ船専用の波止場と桟橋の大部分は、老朽化と劣化のために、状態が悪化している。整備点検は長年にわたってごくわずかしか行われておらず、大半の波止場や桟橋では貨物取扱いの効率が悪く、危険である。工事には一般的に岩石を詰めた堡籃が大量に使用されたが、これは鋼線メッシュの錆びにより時間がたつにつれてかなり劣化した。整備点検が実行されなかったため、中に詰められた石は徐々に紛失した。
 
 以下はEUによる港の基幹施設開発プロジェクトにおける優先地域である。コプラの取扱量の予測に基づき、新しい桟橋の建造を最優先すべきとされている場所が11箇所ある。
 
位置 現在の使用目的 着岸方法
ショアズール チロバンガ 寄港地(新規、1997年) 既存のコーズウエイ
ショアズール パンゴエ 寄港地 既存の木製桟橋
ショアズール ジオナ島 仕入れ地 投錨
ショアズール ジオランカナ 仕入れ地 投錨
トレジャリー ファラマイ   既存のコンクリート製及び木製の桟橋、悪化
ニュージョージア ノロ   国際貿易港の既存の桟橋、現在の港湾区域内のCEMA施設
ベラ イリキリア 仕入れ地 投錨
イサベル ススボナ 仕入れ地 既存の桟橋、ひどく悪化
マライタ マルウ 仕入れ地 投錨
マライタ ワイシス 寄港地 投錨
サンタクルス ナング 仕入れ地 既存の桟橋、利用不可
 
 また、1年あたりのコプラの取扱い量が300tを超過するという推定に基づき、優先的に改修や改良を必要とする既存の桟橋が5つある。これらの桟橋は以下の通り。
 
位置 現在の使用目的 着岸方法
ショアズール ショアズール湾 仕入れ地 既存のコンクリート製桟橋とコーズウエイ
パララ マドウ 寄港地(予定) 既存の桟橋
ニュージョージア パラダイス 仕入れ地 既存の桟橋
ラッセル ヤンディナ CEMA国際貿易港 1970年代に建造された既存のコンクリート製桟橋
マキラ カオナスグ 仕入れ地 19870年代に建造された既存のコンクリート製桟橋
 
6-7. 経済協力の現状
 ソロモンは歴史的に英国、豪州等英連邦諸国と緊密な関係を有しているが、かつて最大の援助国であった旧宗主国たる英国の援助が近年減少しているため、援助供与国の多角化を進めてきた。また国連、ESCAP、世界銀行、IMF、ADB等にも加盟し援助拡充を図っているほか、周辺国との連携を強め、協力関係を推進している。近年は南太平洋フォーラム(SPF)の枠組みを重視し、また、経済的つながりの強化のためアジア指向を強めている。しかし、2000年6月に政変が起こり、経済、財政が悪化した。2003年からは、ソロモン政府の依頼を受けたオーストラリアを中心とし、他ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニア、トンガの警察及び軍隊が派遣されている。
 
 二国間援助では、オーストラリア、ニュージーランド、日本が多い。日本は、政変発生までは無償資金協力を実施しており、海運関係では、ノロ地区港湾整備計画等がある。2001年以降は、援助を行っていない。また多国間援助では、ECが多く、2000〜2001年の平均援助額は3,800万ドルで、全体の64%を占める。
 
図11. ソロモン諸島への国際援助
Solomon Islands
 
Receipts 1999 2000 2001
Net ODA (USD million) 40 68 59
Bilateral share (gross ODA) 53% 33% 44%
Net ODA / GNI 13.5% 24.8% 22.2%
Net Private flows (USD million) -1 -15 -6
 
For reference 1999 2000 2001
Population (million) 0.42 0.42 0.43
GNI per capita (Atlas USD) 750 640 580
 
Top Ten Donors of gross ODA (2000-01 average) [USD m]
1 EC 38.0
2 AUSTRALIA 16.4
3 NEW ZEALAND 5.9
4 JAPAN 3.3
5 IDA 0.9
6 UNDP 0.8
7 UNTA 0.7
8 Arab Agencies 0.3
9 AS.D B SPECIAL FUNDS 0.2
10 UNITED STATES 0.2
 
Due to insufficient coverage, sectoral breakdown is not available for this country.
 
 
Sourves: OECD, WORLD Bank.
出所:OECDホームページ
 
6-8. 日本からの経済協力の現状
 ソロモンの200海里経済水域は日本の漁業にとり重要な漁場である。また、英・豪等伝統的援助供与国がその規模を削減する中、雇用や経済活性化の面からも我が国の経済協力に対する期待が高まっている。以上の観点から、水産分野や運輸インフラ整備を中心とする無償資金協力を実施するとともに、研修員受入れ、青年海外協力隊派遣、開発調査等を中心とする技術協力を行ってきた。
 
 無償資金協力については、「ヘンダーソン国際空港整備計画」に対して、増加する航空需要に対応するため、老朽化している国際線ターミナルビル、駐機場及び誘導路等の整備を96年度から2カ年にわたり実施した。また、98年度には、「ルンガ地区電力開発計画」を実施し、電力の安定供給のための施設の整備を行った。しかし、2000年に政変が発生してからは、地方自治体やNGOを支援する草の根無償協力のみとなっている。
 
 船舶関係では、1980年代には2回、貨客船の調達を無償援助で実施した。
 
図12. ソロモン諸島への援助額推移
出所:ODA白書
 
6-9. 日本の経済協力の可能性
 ソロモン諸島の海事産業には日本が協力できる分野がある。コプラや他の商品輸出の回復は有効な島間の海運やインフラ設備に依存しているため、海事産業への協力は、同国の経済にとって非常に重要である。
 
 前述のように、オーストラリア等の警察や軍隊が介入によって事態が収拾し、民間部門の発展のために必要な総合的な環境が整備されると思われるが、この過程でも日本の援助が望まれる。
 
 EUによる港のインフラ整備プロジェクトは、この地域における数多くの問題点に取り組むことになる。従って、日本が港や錨地改良プロジェクトに果たせる有効な役割はあまりないと思われる。
 
 州政府が船舶運行業者を運営していることは前述のとおりであるが、日本の援助が望まれる分野は、これらの州政府による船舶運行業者が所有する船舶の交換船の供与である。現在使用している船舶は、日本や韓国から購入した中古船であるが、船舶運行が現在、高いコストや貨物輸送と乗客輸送両方からの収入の減少に苦しんでいるため、整備も困難な状況である。
 
 質の高い貨物船や客船の供与先候補は、マライタ・シッピング・カンパニー社とテモツ・シッピング・ライン社である。両社とも経営状況は良く、経済が上向いた時には地元の州や国全体の経済発展に貢献できる、収益性の高い事業運営が可能と思われる。
 
 供与する船のタイプについては、各運航業者との話し合いが必要であるが、燃料消費が効率的で最大100人の乗客とばら積み貨物を運ぶことのできる船が必要になると思われる。
 
 付録6にはソロモン諸島政府が提案する船舶の運行に関する簡単な概要が解説されている。
 
 この他、乗組員の研修も有益な援助である。交換船を供与することになれば、既存の乗組員が交換船の効率的な運航について訓練を受けることが必要となるが、この研修は日本で行うことが可能である。また日程管理等の事業の運営に関する乗組員の技能向上も必要である。







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