6. ソロモン諸島
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6-1. 概要
ソロモン諸島はオーストラリアの北東、パプアニューギニアの東に浮かぶ6つの大きな島と約1,000に達する小島から成る群島国家で、南東にはバヌアツの島々が続いている。主要6島はいずれも幅が24〜56km、長さが92〜181kmで、北側にショアズール島、サンタ・イザベル島、マライタ島、南側にニュー・ジョージア島、ガダルカナル島、サン・クリストバル島が北東から南西に向けて並んでいる。土地面積は29,785平方kmで、四国の1.6倍程度の大きさである。主島のガダルカナルの面積は5,336平方kmで、これは愛知県や千葉県より少し大きい。排他的経済水域は南太平洋では3番目に大きい135万平方kmにもなる。行政上は9つの州に分かれている。中心はガダルカナル島で、首都ホニアラは島の北側中央やや西寄りにある。ホニアラには約5万人が生活しており、これは全人口417,000人の約12%にあたる。
ソロモン諸島は、1978年に英国より独立した英女王を元首とする立憲君主国家である。1997年8月の総選挙の結果、ウルファアル自由党党首を首相とする連合内閣が結成されたが、1998年末より首都ホニアラがあるガダルカナル島において先住民ガダルカナル人と移民マライタ人との間で部族対立が激しくなり、2000年6月、マライタ人武装勢力による同首相拘束事件が発生し、同首相は辞任に追い込まれた。7月にはソガワレ政権が発足し、10月には和平協定が結ばれた。同政権にとって国内平和の回復、破綻した経済・財政の再建が最大の課題であったが解決策が見いだせないまま事態は悪化した。
2001年12月、国際選挙監視団が監視する中行われた総選挙は、公正かつ民主的に実施され、ケマケザ政権が発足。同首相は、法秩序の回復と財政再建に取り組んだが、その後も事態は深刻化し、自力では解決できないと判断して、03年4月に豪州に支援を求めた。6月30日にシドニーにてPIF外相会合が開かれ、警察及び軍隊派遣を含む対ソロモン支援について合意した。その後、ソロモン政府より豪州政府に対して、正式にPIF数カ国による警察及び軍隊の派遣を依頼し、7月24日より豪州、NZ、フィジー、PNG、トンガの警察及び軍隊が派遣されている。
ソロモン経済は、魚、木材、コプラ、パーム油等の輸出に強く依存しているため、一次産品の国際価格下落の影響を受けており、国際収支の赤字が続いていた。1996年には輸出増で貿易収支が改善したが、その後アジア経済の不調の影響もあり、輸出は伸び悩んでいる。また、2000年の部族対立の影響により財政は大幅な赤字となっている。また、依然として地方農村部においては自給自足経済が営まれており、都市部と地方との生活水準には大きな格差があるほか、急激な人口増加への対応が重要な課題となっている。
最近の主な経済指標は以下の通り。
(1)1998年と2002年の間に経済は全体的に26%縮小
(2)同時期、米ドル建てにおけるGDPはほぼ半分に減少
(3)2002年の輸出は7%増加したが、これは1999年の約3分の1にすぎない
(4)2002年の公債はGDPの約110%
(5)2002年の外部負債はGDPの79%
(6)2002年のインフレーションは9%(通貨が大幅に下落していることを考えると、これは内需が脆弱であることを示す)
(7)総来訪者数は1998年の1万7,900人から2000年には2,400人まで減少(2000年以降この数字は改善したが、統計は発表されていない)
(8)国際準備の総額は、1.5ヵ月分の商品及びサービスの輸入費用しかまかなうことができない
財政統計は中央銀行が照合したものである。最新の統計は以下の通り。
表1. ソロモンの財政統計
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2003年4月 |
2002年4月 |
外貨準備(米ドル) |
1,930万ドル |
1,650万ドル |
為替
-US$1.00
-A$1.00
-Euro 1.00 |
7.52 4.66 8.28 |
6.35 3.41 5.72 |
貨幣供給量(SI$) |
41,800万ドル |
$37,600万ドル |
民間部門へのクレジット(SI$) |
16,900万ドル |
16,700万ドル |
国内の負債支払残金(SI$) |
11,200万ドル |
5,600万ドル |
政府の海外債務(SI$) |
110,100万ドル |
79,200万ドル |
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主要産業分野とその主な現状は以下の通り。
産業分野 |
状況 |
農業 |
農業は民族間の緊張によって悪影響を受けた。英国連邦開発公社(Commonwealth Development Corporation:
CDC)が所有する大規模なパーム油工場は閉鎖され、再開の兆しは見えない。最大の生産業者/輸出業者が分裂した結果、コプラの生産は減少しており,ココアも同様の状況にある。管理に過失のあった商品販売促進局は崩壊し、今後の取引は現地会社に委託された。 |
林業 |
丸太の輸出は継続され、環境が破壊された(丸太伐採企業は大半がアジア企業)。プランテーション用の丸太も輸出されているが、英国連邦開発公社が所有するコロンバンガラ林産物社(Kolombangara
Forest Products Limited: KFPL)の運営は苦戦している。 |
漁業 |
マグロの缶詰製造業を営むソロモンタイヨーから日本のパートナーが撤退し、この事業はインベストメントコーポレーション(Investment
Corporation)と西部州が50%ずつ所有している。缶詰製造業はほぼ中止され、ソロタイ社が燻製干肉を日本に輸出している。新しいマネージメントチームは優秀なため、事業は生き残るであろう。他の漁業ベンチャーは、小規模な国内事業か同国に付加価値をもたらさない外国船のいずれかである。 |
鉱業 |
ゴールド・リッジ鉱山は、民族間で緊張が生じている間に閉鎖され、破壊された。その所有者、プレーサー・ドーム(Placer
Dome)は厳しい条件のもとで事業を再開することになろう。地元の地主は分割され、法と秩序が改善するまで新しい評議会を選出することはできない。ソロモン諸島では現在、鉱物の発掘は一切行われていない。 |
製造 |
製造業はかなり縮小した。現在も事業を継続している製造業者は国内市場が収縮したため、支援プロジェクトにますます依存している。主なものは基本食料品、家具,ファイバーグラス製品、及び建築材料の生産である。生産品はほとんど輸出されていない。 |
建設 |
この分野も落ち込みが激しい。政府契約は実際に中止され、比較的大規模なニュージーランドのフレッチャー社(Fletcher)でさえ保守点検契約に依存している。援助資金を供給されているインフラ整備プロジェクトが唯一有望な事業であるが、これらの大部分は地元における雇用機会の創出を目指しており、現地企業には大きなメリットは見込めない。 |
ホテル、観光業 |
観光業(決して大きくはなかった)は崩壊した。航空便の接続が安定していないことが大半の代理店の障害となり、渡航回避勧告が発表されたことで外国人旅行者が遠のいた。数人の大胆かつ特別な関心をもつ旅行者がまだソロモン諸島を訪問しているが、離島のほとんどの「リゾート」は経営難に陥っている。ホニアラのホテルは援助の為に訪れる宿泊者で賄っている一方、低価格の宿泊施設は首都で開催される会議やワークショップ(その大部分は援助資金供与者あるいはNGOによる資金援助を受けている)に出席する宿泊客で高い稼働率を上げている。 |
運輸 |
ソロモン航空は倒産しかけており、国内の運航は悪名が知れわたるほどに頼りない。重要な島間の貨物輸送及び旅客サービスは、主に州政府が所有する船によって提供されている。船の状態は悪く、燃料コストが急速に上昇しているため、生き残りの可能性も危ぶまれている。(多額のただ乗りの問題もある)。 |
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全体的に見て、ソロモン諸島の経済は非常に悪い状態にある。マクロ経済において同国は破産状態にあり、ミクロ経済においても状況は悪く、以下のような状況になっている。
(1)信用度が非常に低い。
(2)財政の回復は困難であり多額の資金を要する。
(3)流動性はほとんど喪失
(4)残存している企業の多くが直接あるいは間接的に資金援助プロジェクトに依存している。
(5)これまで「しがみついてきた」事業が生存のためのオプションを使い果たしたため、今後も企業倒産が相次ぐ可能性が高い。
一般事情 |
1. 面積 |
2万9,785km2 |
2. 人口 |
44万人(02年、世銀) |
3. 首都 |
ホニアラ(5万人、98年大蔵省推計) |
4. 人種 |
メラネシア系(約94%)が主で、その他ポリネシア系、ミクロネシア系、ヨーロッパ系、中国系 |
5. 言語 |
英語(公用語)、ビジン・英語(共通語) |
6. 宗教 |
人口の95%以上がキリスト教 |
政治体制・内政 |
1. 政体 |
立憲君主制 |
2. 元首 |
エリザベス二世女王(英国女王)、ジョン・ラプリ総督 (99年7月就任) |
3. 議会 |
一院制、50議席、任期4年 |
4. 政府 |
(1)首相 アラン・ケマケザ(Hon. Sir Allan Kemakeza)(01年12月就任) (2)外相ローリー・チャン(Lanrine
Hokst Chan)(02年12月就任) |
経済 |
1. 主要産業 |
第一次産業(コプラ、木材、魚)中心の経済 |
2. GDP |
253.8百万米ドル(02年、世銀) |
3. 一人当たりGDP |
572米ドル(02年、世銀) |
4. 経済成長率 |
1998年:1.1%、2001年:△10%、2002年:△4.0%(世銀) |
5. 物価上昇率 |
7.8%(99年、ソロモン中央銀行) |
6. 総貿易額 (97年推定、IMF) |
輸出 162.7百万米ドル 輸入 187.6百万米ドル |
7. 主要貿易品目 (97年、ソロモン統計局) |
(1)輸出 木材(58%)、魚類(22%)、パーム油(13%) (2)輸入 機械・輸送機器(37%)、工業製品(30%)、食糧(14%) |
8. 貿易相手国 (97年、ソロモン統計局) |
(1)輸出 日本(40%)、英国(30%)、韓国(13%) (2)輸入 豪州(47%)、日本(15%)、シンガポール(9%) |
9. 通貨 |
ソロモン・ドル(SI$) |
10. 為替レート |
1ソロモン・ドル=約0.13米ドル(03年7月) |
二国間関係 |
1. 政治関係 |
(1)78年7月7日、ソロモン独立と同時に同国の独立を承認。 (2)80年2月、在PNG大使館が在ソロモン諸島大使館を兼轄。 (3)80年11月、臨時代理大使がホニアラ常駐。 (4)89年9月、初代ソロモン大使(非常駐)信任状捧呈。 (5)90年3月、在京ソロモン名誉領事館を開設。 |
2. 経済関係 |
(1)対日貿易(99年、通関統計) (イ)貿易額 輸出 6,519百万円 輸入 1,977百万円 (ロ)主要貿易品目(%) 輸出 魚類(52)、木材(31) 輸入 自動車(29)、機械類(27) (2)我が国からの直接投資 19件 74億円(96年度までの累計) |
3. 在留邦人数 |
25名(02年10月現在) |
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