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(NOAAのPORTSプロジェクト)
 上記の水路関連情報プロジェクトの中で進捗が大きいのはNOAAのPORTSプロジェクトである。2004年度予算で認められているのはPORTSのみであり、2002年に可決された水路測量改善法に盛り込まれた新しい水路測量システムの設置、オペレーション及び保守には予算が付いていない。NOAAの2004年度予算は2003年度予算よりも$900万増の$1億2,800万となっている。ちなみにNOAAでは、「21世紀へ向けた新たな優先課題」の取纏という形で業務の再編を図っており、そこで掲げられた優先課題は以下の4つであり、PORTSはその第3及び第4目標に合致する重要業務となっている。
【第1目標】
 エコシステムに基づく管理を通じて沿岸及び海洋の資源の保護、再生、管理を行う
【第2目標】
 環境の多様性と変化を理解し、社会がこれに対して計画を立案し、対応する能力の拡大に資する
【第3目標】
 天候及び水に関する情報に対する社会の需要に応える
【第4目標】
 安全、効率的且つ環境に優しい交通のための情報提供を通じて商業に貢献する
 
 PORTSは、水位、海流、気象等のデータをリアルタイムに提供し、運航の安全と効率向上、レクリエーション用ボートへの支援を行うシステムであり、情報は電話またはインターネットにより得ることが出来る。2003年には人工知能を用いた新しい監視システムが導入され、従来に増してリアルタイム・データの有効性と正確性が保証されている。
 
(VTS整備における現状と課題)
 米国のVTSは、ロングビーチ港に1949年レーダーが設置されたことに始まり、1972年港湾水路安全法(Ports and Waterway Safety Act)が制定されたことを機に、ヒューストン/ガルベストン、ピュージェット・サウンド、サンフランシスコ等の諸港で運用が開始された。その後大型油タンカーエクソン・バルディス号のアラスカにおける油濁事故の発生を経て、1990年の油濁防止法において、USCGが米国内の港湾水路における油濁事故の発生度、先進的なVTSを設置した場合の事故減少度、連邦規模でVTSを先進的な装置に代替し、また必要な場所に追加設置する為の調査研究を実施すべきことが規定された。
 これを受けてUSCGは、VTS-2000と称するプロジェクトを立ち上げ、1993年に完了したが、その内容は17の港に総額$2億6,000−3億1,000万の費用で先進的なVTSを設置し、年間$4,200万の費用で運用しようというものであった。しかしながら多くの理由から議会はVTS-2000の実施に予算を付けていない。なお、VTSにはUSCGが運用するもののほか、民間や港湾が管理するものが12個所存在する。
 
 港湾や内陸水路の船舶航行技術については、国際航行協会(PIANC)が世界中の技術を取りまとめている。2002年3月、PIANC内陸航行委員会は、河川情報サービス(RIS)報告書を発表したが、この報告書には、RISのアーキテクチャー、世界中の代表的河川のRIS例、RISに対するガイドライン及び勧告等が盛り込まれている。表6-4は、世界17のRISとそのサービスを示した表であるが、この表の上から4つは米国の河川VTSである。表中のFairway Informationは水路の状態情報、Tactical traffic information and managementは船長が操船上知らねばならない狭水路の情報、そしてStrategic traffic information and managementは、例えば輸送計画立案に用いられる広い地区の情報サービスを示している。下部ミシシッピー川及びセントメリー川VTSはTactical及びStrategic情報の提供が可能であるが、他の2つはTactical情報のみである。下部ミシシッピー川VTSの交通管制センターはニューオリンズに在り、ミシシッピー川の河口からバトンルージュ迄をカバーし、川の主要ポイントに交通灯(2)、VHFステーション(4)、レーダー・センサー(5)、TVカメラ(1)が配置されている。通行船舶は1日24時間交通センター及び交通灯オペレーターと交信が可能である。
 
(水路関連情報システム構築に際しての課題)
 水路関連情報システム構築に関するMTS報告書の方針は、多くのことを示している。
 まず米国に港湾及び水路に関する情報を管理する政府機関が無いことである。港湾によってはリアルタイムの水位、潮流その他の情報を出しているところもあるが、責任を持って取りまとめている中央官庁は無い。また、MTS報告書の方針は、技術的には実現可能にもかかわらず、米国の港湾が海図から船舶交通マネージメント・システム(TMS)に至る迄欠陥を有していることを示している。近代的な船舶TMSが各港湾で開発されないとMTS ITSに組み込んでも意味が無い。VTSについても、前述の通り米国は必ずしも進んでいるとは言えず、課題を有している。
 
 このように水路関連情報システムの構築には多くの課題が存在するが、最大の問題は、次世代MTS構築に関する連邦政府の具体的な方針の欠如と、関係政府機関間の連携の不足であろう。現在米国で策定中の海洋政策においても指摘されていることであるが、MTS報告書において各所で「関係機関、関係者と協力して」という表現が出てくるように、多くの連邦機関、地方政府機関等の間で業務や責任が分散し、且つ、重複していることが、次世代MTS構築に関する推進力を欠く最大の理由であると考えられる。
 2004年に出される予定の連邦海洋政策委員会の報告書では、海洋関連の連邦政府の施策を統括する大統領直属の評議会の設置と海洋関連の研究開発予算の倍増が謳われる予定である。これらがまた新たな推進力となって、次世代MTS構築が促進されることを願ってやまない。
 
表6-3 USCG管理のVTS
Location Opened Average Daily Vessel Trasitsa Radar Sites Other Surveillance Communication Sites
Puget Sound, Washington 1972 (voluntary)
1974 (mandatory)
740 12 3 CCTV 13 VHF-FM
New York/New Jersey 1978-1980.
1985-1988.
1990-present
450 13 9 CCTV 3 VHF-FM
Houston/Galveston 1975 (voluntary)
1994 (mandatory)
460 2 8 CCTV 3 VHF-FM
San Francisco 1972 235 4 3 CCTV 4 VHF-FM
Prince William Sound, Alaska 1977. major upgrades in 1991 and after 16 2 AIS 8 VHF-FM
2 HF
Berwick Bay, Louisiana 1975 300 1 4 CCTV 1 VHF-FM
St. Mary's River, Michigan 1976 (automated)
1994 (mandatory)
130 0 4 CCTV 2 VHF-FM
Louisville, Kentucky 1973 (voluntary, ops. 60 days/yr.) 18 0 0 1 VHF-FM
資料提供:USCG
 
表6-4 世界のRISとそのサービス
*)France, Germany, Switzerland, the Netherlands
**)Austria, Belgium, France, Germany, Switzerland, the Netherlands
***)France, Germany, Luxembourg, Switzerland, the Netherlands
****)Applied in Austria, Belgium, France, Germany, Luxembourg, Switzerland, the Netherlands

資料提供:PIANC
 
表6-5 RISをサポートする技術システム
 
TECHNICAL SYSTEMS USED TO SUPPORT RIS
資料提供:PIANC







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