日本財団 図書館


(3)環境リサイクル特区事例(姫路市)
(1)事業内容
・姫路市の新日鐵・広畑製鉄所では、鉄くずを溶解し、製鉄原料としている。その際、コスト削減のため、副原料である微粉炭の一部を、廃タイヤで代替していた。
 
(2)問題点
・廃タイヤの収集は、市場価値から考えると、逆有償(処理費用を徴収)でも可能である。しかし、逆有償にすると廃棄物と見なされ、広畑製鉄所では廃棄物処理業の許可、廃棄物処理施設の設置許可等が必要となる。
・廃棄物を取り扱うとなると、ちょっとした施設の変更をするにも多くの手続きが必要となる。継続的に設備の改善を行う必要のある製鉄業では、対応が難しい。そのため、コスト削減効果は小さくなるが、有償で廃タイヤを入手していた。
 
(3)特区による再生利用認定制度の規制緩和
・廃棄物処理法には、再生利用認定制度という特例制度がある。これは、廃タイヤなどの特定の廃棄物を再利用する場合、一定の基準に適合していると環境大臣から認定を受ければ、その事業者は廃棄物処理業と廃棄物処理施設の許可が不用となる制度である。
・ただし再生利用認定制度では、廃タイヤはセメント原料とする場合にのみ認定されるなど、対象範囲が非常に狭かった。
・リサイクル関連業者の中では規制緩和の声が高まっており、平成14年の構造改革特区による規制緩和の中に、再生利用認定の対象拡大が盛り込まれた。
 
(4)特区申請
・広畑製鉄所では、姫路市とともに特区計画を申請、平成15年4月に「環境・リサイクル特区」として認定された。
・今後は、処理費を徴収できるようになるため、収益性が高まることになる。
 
(4)採用されなかった規制緩和内容
・採用されなかった規制緩和内容のうち、提案が多かった内容、収集運搬に関する内容について示す。
 
表−参5.3 採用されなかった規制緩和内容(1)
提案主体 規制の特例事項 規制緩和内容 環境省の意向
秋田県、
秋田県
小坂町、
栃木県、
室蘭市
リサイクル推進のため、リサイクル等の対象物を廃棄物処理法の廃棄物から除外 発生源が明らかである特定のリサイクル可能な廃棄物について、特定の事業者に限って一定の代替措置を講じることにより、不適正処理を回避することが可能と考えられることから、リサイクル産業振興及び促進のために、一定の区域内において、特定の廃棄物について廃棄物処理法の廃棄物から除外することを要望する。 ・リサイクル目的の廃棄物を廃棄物処理法の対象から除外するという要望については、当該廃棄物について、
(1)廃棄物による環境汚染や長期にわたる保管が行われないようにするための廃棄物の処理基準、
(2)不適正な廃棄物の取扱いを行った者に対する是正・改善の命令、
(3) 不適正な廃棄物の取扱いにより環境汚染が生ずるおそれがある場合などに排出者を含めた責任者に対する原状回復や環境汚染防止措置の命令、
(4)違反行為に対する罰則
などが一切適用されなくなるものであり、責任ある処理を法的に確保する措置がなくなるため、不適当と申し上げているもの。
・なお、代替措置として挙げられている、特区地方公共団体による認定、許可やマニフェスト管理は、結局、廃棄物処理法の許可、マニフェスト等と同じものであり、地方公共団体が法の許可基準・手続きに沿って、迅速に事務処理をすることで足りるものと考える。
・御要望の趣旨は、いずれも、廃棄物をリサイクルする際の事業化を容易にしようとするものであると考えられるが、多数の地方公共団体において要綱等により、廃棄物処理法によらない規制(許可申請前に事業者に対して事前協議を求めるなど)が行われており、むしろこうした規制が円滑な事業実施を困難としていると考えられるため、地方公共団体の判断で行われている法律によらない規制の見直しについてまず検討していただくことが必要である。
・また、現行でも施行規則第2条第2号、第2条の3第2号、第9条第2号及び第10条の3第2号に基づき地方公共団体の判断でリサイクルを行う事業者の事業許可を不要とすることができる。
・また、現行では再生利用認定制度により、事業・施設許可を不要とする制度が用意されているので、具体的な廃棄物の性状等に照らし、現行制度で対応可能なものについては特区において実験的に対象とすることが考えられるので具体的事項について御提案いただきたい。
・なお、廃棄物をリサイクルする上での課題は、天然資源、新材料、新製品の方が廃棄物を再生したものよりも安いこと、再生するよりも安価な処分をする方が安いことから、経済的にリサイクルが不利となっていることである。リサイクルされる廃棄物を廃棄物処理法の対象から除外することで、こうした課題が解決するものではなく、リサイクル推進のためには、リサイクルを義務付けることや、再生品の使用を協力に進めるという需要側での対応が必要である。
資料:首相官邸ホームページより作成。
 
表−参5.3 採用されなかった規制緩和内容(2)
提案主体 規制の特例事項 規制緩和内容 環境省の意向
広島県 廃棄物の収集・運搬に係る規制の緩和 再生利用認定制度にかかわらず、特区内での廃棄物の移動を自由化するため、収集運搬規制の緩和を要望する。 ・収集運搬業・処分業の許可については、地方公共団体が事前に廃棄物処理法に定められた最低限の許可要件の適格性を審査するものであり、これが確認されれば地方公共団体の許可は出すことになるはずであり、規制緩和の必要はないものと考える。
・また、廃棄物処理法施行規則第2条の3第2号及び第10条の3第2号に基づく指定の申請については地方公共団体の判断で許可を不要と判断することができる。このため、現行法においてさらなる規制緩和の措置をとる必要はないと考える。
資料:首相官邸ホームページより作成。
 
表−参5.3 採用されなかった規制緩和内容(3)
提案主体 規制の特例事項 規制緩和内容 環境省の意向
湧別町 再生利用を目的とした廃棄物の収集運搬許可の容認 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行細則」等により定められた再生利用等の場合、農業者等が再生利用できる場合が多いが、これらの者は運搬のための車両や余剰人員がいないため、運搬は委託せざるを得ない。しかし、このような再生利用の場合は、必ずしも産業廃棄物の収集運搬業でなくても適切に運搬が可能と考えられる場合が多いにもかかわらずこうした運搬料の高い、許可業者に委託しなければならない現状であり、運搬料コストが事業の効率性ならびに再生利用の拡大に支障を来しているといえる。 ・産業廃棄物については、多量発生性又は市町村における処理困難性を考慮し、いわゆる汚染者負担の原則も踏まえ、排出事業者自らの責任で処理することを義務付けているところ。
・御指摘の趣旨はつまるところ、市町村が処理責任を負う一般廃棄物と同様に産業廃棄物であるバイオマスを処理できるようにされたいものと考えられるところであるが、処分業の許可については、現行制度においても、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第14条に基づき個別に都道府県知事の許可を取得するか、または、廃棄物処理法施行規則第9条第2号及び第10条の3第2号に基づき都道府県知事の判断で、業の許可を不要とすることが可能である。
・なお、市町村がその事務として自ら産業廃棄物の処理を行うことは現行制度においても可能であり、かつ、その場合には、業許可は不要である。
資料:首相官邸ホームページより作成。
 
表−参5.3 採用されなかった規制緩和内容(4)
提案主体 規制の特例事項 規制緩和内容 環境省の意向
千葉県 廃棄物運搬に係る広域再生利用指定制度の拡大及び指定基準の緩和 電子タグを備え付けたコンテナを海上静脈物流に導入することで、廃棄物(循環資源)の再資源化施設までの適正な搬送管理を確保することが期待される。こうした電子タグを活用した流通管理を行い、再資源化施設に確実に廃棄物の運搬を行う海上運送業者について、大臣指定による広域再生利用指定制度の対象を拡大し、併せて指定基準の緩和を希望する。 ・ご提案の内容については、いまだもって、ITリサイクルポートにおいて廃棄物がどのように運搬され、どのように再生利用するのかといったリサイクルの仕組みが不明であるため、電子タグの活用による厳重な廃棄物の管理を試みることで広域再生利用指定制度の緩和を図ることは、妥当ではない。
・ご提案のITリサイクルポートが企業誘致的側面を有した構想であるとするなら、産業廃棄物の収集、運搬及び処分にかかる業の許可の主体は千葉県であることから、千葉県の責任のもと適正な審査を経た上で許可を与え、ITリサイクルポート構想を推進していただくものであると考える。
資料:首相官邸ホームページより作成。
 
表−参5.3 採用されなかった規制緩和内容(5)
提案主体 規制の特例事項 規制緩和内容 環境省の意向
名瀬市、
大和村、
宇検村、
住用村、
龍郷町、
笠利町、
瀬戸内町
奄美大島リサイクル特区構想 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)では、指定引取場所まで輸送することとなっているが、これを島内処理できる部分は島内処理を行い、一部、処理できないものについてのみ減容して海上輸送を図る。 ・特定家庭用機器再商品化法は、従来は市町村が税財源により行っていた廃家電4品目の処理について、関係者の役割分担の下、民間活力を活用し、リサイクル費用を排出者が支払い、回収は小売業者が行い、再資源化等は製造業者等が行う体制に改めるべく制定したものであり、市町村による回収は、小売業者による回収が困難な場合に、これを補完するものとして例外的に位置付けられているものである。
・したがって、小売業者によって回収されたものを市町村の処理に戻すことは、制度構築の趣旨そのものを否定するものであるから、そのような取扱いを認めることは出来ない。
・なお、奄美大島においては、従来、他の地域に比べて収集運搬料金が高額であったが、平成14年6月、国及び鹿児島県の支援の下、鹿児島から商品を搬入している業者の帰便トラックを活用した収集運搬体制を整備した。この結果、従来の半額程度でほぼ本土並の収集運搬料金が実現している。
資料:首相官邸ホームページより作成。
 
 廃棄物処理法では、一般廃棄物処理業については市町村長の許可が必要であり、一般廃棄物処理施設・産業廃棄物処理業・産業廃棄物処理施設については都道府県知事の許可が必要である。
 これらの許可を不要とする特例制度として、「再生利用認定制度」「広域認定制度」がある。
 
(1)再生利用認定制度
(1)対象品目
・一般廃棄物
廃ゴムタイヤ(セメント原材料として再生利用する場合)
廃プラスチック類(製鉄還元剤として再生利用する場合)
廃肉骨粉(セメント原材料として再生利用する場合)
・産業廃棄物
廃ゴムタイヤ(セメント原材料として再生利用する場合)
廃プラスチック類(製鉄還元剤として再生利用する場合)
建設無機汚泥(スーパー堤防の築造材として再生利用する場合)
(2)特例措置
 廃棄物処理業(収集運搬業、処分業)、処理施設の許可の免除。
(3)認定を受けられる事業者
 セメント製造業、製鉄業など、再生利用を自ら行う事業者。
(4)その他
 収集運搬については、認定を受けた事業者が自ら収集運搬を行う場合、許可は不要となる。ただし、他の業者が輸送する場合は、その輸送業者は廃棄物収集運搬業の許可が必要。
 
(2)広域認定制度
(1)対象品目
一般廃棄物:廃パソコン、廃二次電池、廃スプリングマットレス
産業廃棄物:品目の限定はない。申請に基づく。
(2)特例措置
 廃棄物処理業(収集運搬業、処分業)の許可の免除。
(3)指定を受けられる業者
 廃棄物となった製品のメーカーとメーカーより委託された廃棄物処理業者。
(4)その他
 この特例は、平成15年12月1日の改正により定められた。それ以前は、「広域再生利用指定制度」として省令で定められていた。改正により、広域的なリサイクルを推進するため、法律に格上げされた。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION