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第8章 海上輸送の促進方策の検討
 ここでは、これまでの検討を踏まえ、関東、九州離島から北九州への循環資源輸送のモデルを検討し、その課題を整理する。さらに循環資源の北九州への輸送の促進に関する基本的な考え方を整理した上で、海上輸送の促進方策を検討する。
8.1 モデル輸送の検討
 ここでは、主要な循環資源排出地である関東、九州離島・沖縄からの循環資源の海上輸送について、考えられるモデルケースを、これまでの調査結果を基に検討したものを整理する。
 
(1)関東圏からの輸送
(1)海上輸送
a ばら貨物/貨物船
項目 概要
対象 建設混合廃棄物
荷姿 ばら貨物
船舶 総トン数499トンの貨物船
利用バース 関東側港湾(横浜港・川崎港・千葉港)の公共岸壁、北九州港の公共岸壁(現時点では、関東・北九州ともプライベートバース)
積替え・保管 両方の港湾でトラックとの積替え・保管を行う。
排出所、リサイクル施設への輸送 トラック輸送
 
b コンテナ貨物/貨物船
項目 概要
対象 廃プラスチック等
荷姿 コンテナ貨物
船舶 総トン数499トンの貨物船
利用バース 関東側港湾(横浜港・川崎港・千葉港)の公共岸壁、北九州港の公共岸壁(現時点では、関東・北九州ともプライベートバース)
積替え・保管 両方の港湾でトラックとの積替え・保管を行う。
排出所、リサイクル施設への輸送 トラック輸送
 
c トレーラー積み/フェリー
項目 概要
対象 廃プラスチック等
荷姿 トレーラー積み
船舶 東京港−北九州港 フェリー
利用バース 東京港有明のフェリー埠頭、北九州港新門司フェリー埠頭
積替え・保管 なし
排出所、リサイクル施設への輸送 トラック輸送
 
(2)鉄道輸送
a コンテナ/JR貨物
項目 概要
対象 廃プラスチック等
荷姿 コンテナ貨物
利用貨物駅 関東側の貨物駅(東京貨物ターミナル駅、梶ケ谷貨物ターミナル駅等)
北九州貨物ターミナル駅
積替え・保管 なし
排出所、リサイクル施設への輸送 トラック輸送
 
(2)離島からの輸送
(1)海上輸送
a ばら貨物/貨物船
項目 概要
対象 使用済自動車
荷姿 ばら貨物
船舶 総トン数499トンの貨物船
利用バース 離島側港湾の公共岸壁、北九州港の公共岸壁
(現時点では、北九州港側はプライベートバース)
積替え・保管 両方の港湾でトラックとの積替え・保管を行う。
排出所、リサイクル施設への輸送 トラック輸送
 
b トレーラー積み/フェリー
項目 概要
対象 廃プラスチック等
荷姿 トレーラー積み
船舶 那覇港−博多港 フェリー
利用バース 那覇港那覇埠頭−博多港香椎パークポート
積替え・保管 なし
排出所、リサイクル施設への輸送 トラック輸送
 
8.2 循環資源等の北九州への海上輸送を行う際の課題の整理
 ここでは、1章から6章までの調査結果、検討調査結果を踏まえ、循環資源等の北九州への海上輸送を行う際の課題を整理する。
 
(1)循環資源の輸送に伴う採算性に関する課題
・適正な循環資源の輸送のためには、一定のコストを要するが、顧客の要求により、低コストの輸送方法を余儀なくされる。
・循環資源を関東などから、北九州に輸送しても、帰り荷を集荷する仕組みがないと、片荷輸送となり、非効率的かつ輸送コストが高くなる。
 
(2)循環資源を公共岸壁で円滑に取り扱えない
・北九州港の公共岸壁では、コンテナに密閉された安定型産業廃棄物の取り扱いしか認められておらず、ばら貨物の取り扱いはできない。また、循環資源の入ったコンテナを、直接岸壁に置くことはできない。
・他の港湾でも公共岸壁での循環資源の取り扱いを全く認めていない場合もあり、積出港の確保も難しい状況である。
・大量の循環資源を効率的に海上輸送するためには、積出港、荷揚港において、循環資源を積替え・保管することが必要であるが、そのための施設が確保されていない。
 
(3)コンテナ輸送による効率化が確保できていない
・大量輸送に適した海上輸送を行う場合でも、荷役・陸上輸送の効率化のためには、コンテナ容器の活用が重要であるが、容器の標準化、荷役・輸送のシステム化等が実現していない。
 
(4)循環資源の輸送に関する様々な規制
・自治体の中には、他地域から循環資源を搬入する場合、事前協議等、様々な規制を設けている所があり、循環資源の広域輸送に制限が加えられている状況である。
・公共埠頭における循環資源の積替え・保管機能、公共岸壁への循環資源の直置きは、廃棄物処理法、条例等により、難しい状況にある。
 
(5)北九州エコタウン、北九州リサイクルポートについての知名度、情報発信が少ない
・関東、九州離島等の遠隔地では、北九州エコタウンの知名度(取り扱うことのできる循環資源、リサイクル業者等)が低い。
・関東、九州離島等の遠隔地では、北九州まで輸送する信用できる輸送業者を求めているにもかかわらず、よくわからない状況にある。
・関東、九州離島等の排出企業は、輸送モード別の料金(見積)がわからず、コストの比較、検討ができない。
 
(6)北九州側のリサイクル・輸送を顧客側に提案・営業する機能が確立していない
・関東、九州離島等の顧客(排出業者、収集運搬業者)のニーズと北九州側のリサイクル及び輸送の結びつけを提案・営業する機能が現状では確立していない。
・廃棄物及び循環資源の場合、信頼性の確保が極めて重要であり、書面やサイト上の調整ではなく、人による取引先、対象貨物、輸送、処理方法等の確認、調整が必要である。
 
8.3 循環資源等の北九州への海上輸送の促進に関する基本的な考え方の整理 
 ここでは、これまでの調査結果を踏まえ、循環資源等の北九州への海上輸送を促進する際の基本的な考え方を整理する。
 
(1)リサイクルを目的とする循環資源を対象とする
・北九州市は、リサイクル産業の振興を推進しており、他地域から北九州への循環資源の輸送は、リサイクルを目的としたものとする。
・本調査では、リサイクルを目的とする循環資源の海上輸送を対象としており、埋立処分を目的とする他地域からの廃棄物の海上輸送は対象としない。
 
(2)マルチモーダルな輸送サービスの提供
・北九州エコタウンの特徴の一つに、循環資源を輸送する事業者に対し、海上輸送、鉄道輸送、トラック輸送を提供できることがあげられる。
・海上輸送については、全国で初の循環資源専用の公共岸壁が計画されている北九州港を利用できること、フェリー航路があること等、他の地域よりも選択肢が多くなっている。
・また、北九州貨物ターミナル駅が整備され、広域からの鉄道輸送の利便性が向上している。
・利用者が、最も条件の良い輸送機関を選択できるよう、マルチモーダルな輸送サービスの提示、提供を行っていく。
 
(3)信頼しうる質の高い輸送サービスの提供
・循環資源の輸送は、環境に配慮した適正な輸送が何よりも求められている。そのため、一般貨物以上の輸送品質の確保が必要である。
・輸送業者間においては低価格競争に陥りやすいが、一方で、廃棄物、循環資源の輸送においては高い信頼性を求めるニーズも大きく、低価格よりも信頼性を強く打ち出すことが重要である。
・また、定時性、必要情報の提供といった、より質の高い輸送サービスを提供することにより、差別化を図ることも重要である。
 
(4)積極的な情報の発信・提供
・北九州エコタウンに関する情報は、関東、九州離島といった遠隔地では行き届いていない場合が多い。
・北九州市におけるリサイクルに関連する情報、北九州市内の優良なリサイクル業者、収集運搬事業者に関する情報を、積極的に発信、提供する必要がある。
 
(5)積極的な提案・営業機能の確立、展開
・関東、九州離島等の顧客(排出業者、収集運搬業者)のニーズと北九州側のリサイクル及び輸送を結びつける提案・営業機能を果たす組織を設立し、信頼性を確保しながら、循環資源の輸送ニーズを捉えていく必要がある。
 
(6)先進エリアとしてパイオニアプロジェクトを展開する
・全国に先駆けて環境リサイクル産業を主要産業として育成を図る北九州市の取組は、循環資源輸送に支えられる必要がある。
・広域間における信頼性の高い海上輸送の確立のためには、様々な取り組みが必要であり、北九州港のパイオニアプロジェクトとして実施していくことが望ましい。







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