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第7章 AIS及びVDRの入力信号機器
7・1 船内時計
 船内時計は水晶時計とも言い、水晶発信回路が安定度の高い高周波を発信できる性質を利用したもので、数メガヘルツの高周波信号を発生させ、それを数万分の一に分周して60Hzの信号を取り出し、その信号で同期モータを駆動させて秒針を1分間に1回転させ、これを基準に分針及び時計を回転させて時刻を表示するものである。
 この水晶時計の日差精度は±0.1秒以内であるため、クロノメータとして使用でき、また、親時計から船内各機器へ時計信号として分配することにより船内時刻の基準としての役目を担っている。
 船内時計の構成の一例を図7・1に示す。
 水晶時計から外部への信号出力は、以下の種類が接続できるようになっている。
 (いずれもDC24V、数十ミリアンペアのパルス)
(1)30秒有極信号
(2)逆転中信号
(3)調針中信号
 
図7・1 水晶時計の構成の一例
W1: TPYC-1.5
W2: MPYC-7
W3、W4: TPYC-1.5又はDPYC-1.5
W5、W6: DPYC-2.5
 
7・2 ロランC受信機
 ロランC受信機は、ロランC送信局からのパルス電波(100kHz)を受信し計算して、自船位置を表示する装置である。
 自船位置は、緯度経度やLOP値{受信点(自船)での、主局からと従局からのパルス電波の到達時間差}で表示される。
 ロランC受信機は、初期のものに比べ、CPUを搭載することにより、操作性及び性能が飛躍的に向上している。初期段階では、ロランCチャート上でLOP値による自船位置決定のみであった。現在では、LOP値から自船位置を計算し、表示器に緯度経度で表示できることに加え、自動チェーン選択、自動従局選択、自動電波捕捉及び追尾の機能も付加されている。自船位置の測定は、最初に送信局を指定するだけの簡便な操作により、自動的かつ連続的に安定して行われる。
 電気的特性としては、追尾局数は主局と従局5、捕捉完了時間は信号状態により異なるが約3分、最大追尾速度は80ノットであり、表示単位としては、時間差の場合0.1μs、緯度経度の場合0.01分、船速0.1ノットが標準的である。
 外部機器への位置情報出力は、NMEA型式が一般的である。
 ロランCシステムは、主局を中心にして、適当に配置された2〜4の従局で1チェーンが構成されている。そのサービスエリアは、主局から1,000〜1,500海里程度をカバーしており、測位精度は、30〜300m程度となっているが、電波が陸上を伝搬する際に生じる誤差を補正するASFを組込んだ受信機では、100m程度の精度を有するとされている。
 最近の測位システムはGPSへ移行しているが、現実には、ロランCシステムは、地上無線航法装置としての位置づけが確立しており、各国においても整備されている。
 ロランCシステムは、日本近海においても、国際協力チェーンの名の下に、再構築が行われている。日本と韓国の送信局が結ばれてネットワーク化が行われ、また、中国は3局のシステムを完成させている。ロシアも、ロランCに類似の「チャイカ(CHAYKA)」チェーンのネットワークが完成して運用中である。
 ロランC受信機の構成の一例を図7・2に示す。
 
図7・2 ロランC受信機の構成
W1: RG-10/UY(最大15m)
W2: DPYC-1.5
W3: FG-SVS-5
 
7・3 航海用レーダー
7・3・1 概要
 航海用レーダー(以下「レーダー」という。)はパルスのマイクロ波を指向性空中線から発射し、その電波が物標に当たり反射して戻ってくるまでの時間から物標までの距離を、また指向性空中線の方位から物標の方位を測定表示する装置である。
 物標は、平面位置表示器(PPI: Plan Position Indicator)に表示され、表示面の有効直径は7インチ(150mm以上)から、10インチ(180mm以上)、12インチ(250mm以上)、16インチ(340mm以上)の種類がある。
 最大距離範囲は24-48海里のものが普通で、120海里までのものもある。
 PPI表示には、アナログ式とデジタル式(ラスタースキャン)のブラウン管表示方式があるが、現在は多くの利点を有する後者が主流になっている。
 ラスタースキャン表示方式は、PPI走査で得られたレーダー映像の極座標位置(距離R、方位θ)を直交座標位置(X、Y)に変換しブラウン管に表示するものである。テレビのように高輝度表示のため、明るい場所で同時に複数の人がその映像を見ることができることが特徴である。







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