(2)フィールド
フィールドは、有効文字列あるいは適切な区切り文字にはさまれた文字のない部分(ヌルフィールド)から成る。
(A)アドレスフィールド
アドレスフィールドはセンテンスの最初のフィールドであり、“$”で始まる。0から9の数字と大文字に限定されている。ヌルフィールドであってはならない。アドレスフィールドの文章の型は次の3種類のみである。
(a)承認されたアドレスフィールド
定義された5文字から成る。最初の2文字はトーカの識別で、これによってデータの種類がわかる。次の3文字はデータの型とフォーマットを定義している。それぞれ表6・4および表6・5に示す。
最初の2文字について述べれば、複数のソースからのデータを送信できる装置は、適切なトーカ識別を示す識別記号を送信すべきである。例えばGPS受信機とロランC受信機を持つデバイスは、GPSによるデータを送る場合はGP、ロランCの場合はLCである。GPSとロランCの両方のデータを複合して船位を決定している場合は、統合航法(Integrated Navigation)としてINを用いる。
(b)質問アドレスフィールド
質問アドレスフィールドは識別されたトーカから、特別なセンテンスの送信を要求する目的で用いられ、5文字からなっている。
最初の2文字はデータを要求しているデバイスのトーカ識別子、次の2文字は要求されているデバイスのトーカ識別子、最後の一文字は質問文字“Q”を用いる。
(c)専有アドレスフィールド
専有アドレスフィールドは、専有文字“P”と、製造メーカを表す3文字のコードから成り、特有なセンテンスを発するトーカを識別するためのものである。追加文字があることもある。有効な製造メーカのコードはNMEAから得られる。((3)センテンス項の(C) 参照)
表6・4 トーカの識別符号
トーカとなる機器 |
識別符号 |
船首方位/航路保持装置(自動操舵装置)一般 |
*AG |
〃 磁気 |
AP |
船舶自動識別装置(AIS) |
AI |
通信機器 ディジタル選択呼出し(DSC) |
*CD |
〃 データ受信器 |
CR |
〃 衛星 |
*CS |
〃 無線電話(MF/HF) |
*CT |
〃 無線電話(VHF) |
*CV |
〃 スキャニング受信器 |
*CX |
デッカ |
DE |
無線方位測定機 |
*DF |
電子海図システム(ECS) |
EC |
電子海図情報表示装置(ECDIS) |
EI |
非常用位置指示無線標識装置(EPIRB) |
*EP |
機関室監視システム |
ER |
衛星航法装置(GPS) |
GP |
GLONASS受信器 |
GL |
全地球型航法衛星システム(GNSS) |
GN |
船首方位・センサ コンパス、磁気 |
*HC |
〃 ジャイロ、指北 |
*HE |
〃 ジャイロ、指北しない |
HN |
統合された機器 |
II |
統合された航法装置 |
IN |
ロラン ロランC |
LC |
占有コード |
P |
レーダーとレーダープロッティング装置(両方とも、あるいはどちらか) |
*RA |
測深機(水深) |
*SD |
その他の電子測位装置または電子測位装置全般 |
SN |
測深機(スキャニング) |
SS |
回頭角速度表示装置 |
*TI |
速力センサ その他のドップラ方式又はドップラ方式全般 |
*VD |
〃 磁気方式のログ、対水速力 |
VM |
〃 機械式のログ、対水速力 |
VW |
航海情報記録装置(VDR) |
VR |
トランスデューサ |
YX |
タイムキーパ(時刻あるいは日付) 原子時計 |
ZA |
〃 クロノメータ |
ZC |
〃 クォーツ |
ZQ |
〃 無線更新 |
ZV |
天候計測器 |
WI |
|
*IMO航海電子機器としての使用に関して、本標準において指示される。 これはSOLAS条約(1974年改定)でIMOによって要求された機器に対する最小限の要求事項である。
表6・5 承認された文章の形式
形式 |
意味 |
AAM |
変針点到達アラーム |
ACK |
承認アラーム |
ALM |
GPSのアルマナック・データ |
ALR |
セットしたアラームの状態 |
APB |
船首方位あるいは航路保持装置(自動操舵装置)のセンテンスB |
BEC |
出発点から変針点までの方位と距離(推測航法) |
BOD |
目的地への方位 |
BWC |
変針点までの方位と距離 |
BWR |
変針点までの方位と距離(羅針方位) |
BWW |
変針点から変針点までの方位 |
DBT |
トランスデューサからの水深 |
DCN |
デッカの測位結果 |
DPT |
水深 |
DSC |
ディジタル選択呼出し情報 |
DSE |
拡張ディジタル選択呼出し |
DSI |
DSCのトランスポンダの初期化 |
DSR |
DSCのトランスポンダの応答 |
DTM |
参照データ |
FSI |
周波数設定の情報 |
GBS |
GNSS衛星の故障検出 |
GGA |
GPSの確定データ |
GLC |
地理的位置情報(ロランC) |
GLL |
地理的位置情報(緯度、経度) |
GNS |
GNSSの確定データ |
GRS |
GNSSの距離誤差 |
GSA |
GNSS DOPと稼動中の衛星 |
GST |
GNSSの擬似距離の誤差の統計 |
GSV |
視野範囲のGNSS衛星 |
HDG |
船首方位(偏差と変量) |
HDT |
船首方位(真方位) |
HMR |
船首方位モニタ−受信 |
HMS |
船首方位モニタ−設定 |
HSC |
船首方位操舵機へのコマンド |
HTC |
船首方位あるいは航路保持装置へのコマンド |
HTD |
船首方位あるいは航路保持装置のデータ |
LCD |
ロランC信号のデータ |
MLA |
GLONASSのアルマナック・データ |
MSK |
MSK受信器のインターフェース |
MSS |
MSK受信器の信号の状態 |
MTW |
水温 |
MWD |
風向と風速 |
MWV |
風速と角度 |
OSD |
自船情報 |
RMA |
推奨される最小限の特定のロランCデータ |
RMB |
推奨される最小限の航海情報 |
RMC |
推奨される最小限の特定のGNSSデータ |
ROT |
回頭率 |
RPM |
回転数 |
RSA |
舵センサの示す角度 |
RSD |
レーダーシステムのデータ |
RTE |
航路 |
SFI |
スキャニング周波数の情報 |
STN |
複数のデータのID |
TLB |
ターゲットのラベル |
TLL |
ターゲットの緯度・経度 |
TTM |
追跡されたターゲットのメッセージ |
TXT |
テキスト送信 |
VBW |
対地速力と対水速力 |
VDR |
設定とドリフト |
VHW |
対水速力と船首方位 |
VLW |
対水航海距離 |
VPW |
風向に対する速度 |
VTG |
対地針路と対地速力 |
WCV |
変針点を終える速力 |
WNC |
変針点から変針点までの距離 |
WPL |
変針点の位置 |
XDR |
トランスデューサの深さ |
XTE |
計測した航路誤差 |
XTR |
推測した航路誤差 |
ZDA |
時刻と日付 |
ZDL |
変針点までの時間と距離 |
ZFO |
世界協定時と出発点からの時間 |
ZTG |
世界協定時と目的地までの時間 |
|
(B)データフィールド
承認されたセンテンスのデータフィールドは、区切り記号“,”と有効文字(コード区切り記号“^”も可)がならぶ。(表6・6参照)
承認されたセンテンス以外の特有なデータフィールドは有効文字および区切り文字“,”と“^”のみから成るが、この規格には定義されていない。
データのあるデータフィールドとデータのないヌルフィールドが混在するため、センテンスのはじめから受け取った文字の総数を数えるより、区切り記号を数えることによってフィールドの位置を知ることがリスナにとっては必須である。
(a)長さの変わるフィールド
いくつかのデータフィールドは長さが一定だが、特定のデバイスの能力や要求性能によって精度の良し悪しで長さが変わること、あるいは情報を運ぶデバイスを幅広く許可できるように、データの長さが変化する場合が多い。
これは英数字あるいは数字のフィールドである。長さの変わる数値フィールドには小数点が含まれ、また、前の方にゼロが続いたり、後ろの方にゼロの列が続くこともある。
(b)データフイールドの型
データフィールドには英字、数字、英数字で、可変長のもの、固定長のもの、固定長と可変長の組み合わせたものがある。いくつかのフィールドは固定長である。許可されているフィールド型の概要を表6・6に示す。
(c)ヌルフィールド
ヌルはフィールドの長さがない、つまり送信する文字がないことで、値が信頼できない場合や無効のときに用いる。
例えば船首方位情報が有効でない場合に“000”を送信すると船首方位の値なのか、無データの意味なのか誤解してしまう。ヌルフィールドは“,,”あるいは“,*“となる。
ASCIIのヌル文字(HEX00)はヌルフィールドとして使わない。
表6・6 フィールドの型の概要
特別なフォーマットのフィールド
フィールドの型 |
記号 |
説明 |
状態 |
A |
単一文字フィールド
A=yes、データ有効、警告フラッグクリ
V=no、データ無効、警告フラッグ設定 |
緯度 |
llll.ll |
フィールドの長さは一定あるいは不定
度(2桁固定)、分(2桁固定)、分の小数点以下(桁数不定)。度と分が0であっても、桁数をそろえるために表示する。小数点と小数点以下は、高分解能を要求しなければ選択は自由である。 |
経度 |
yyyyy.yy |
フィールドの長さは一定あるいは不定
度(3桁固定)、分(2桁固定)、分の小数点以下(桁数不定)。度と分が0であっても、桁数をそろえるために表示する。小数点と小数点以下は、高分解能を要求しなければ選択は自由である。 |
時刻 |
hhmmss.ss |
フィールドの長さは一定あるいは不定
時(2桁固定)、分(2桁固定)、秒(2桁固定)、秒の小数点以下(桁数不定)。時、分、秒は0であっても、桁数をそろえるために表示する。小数点と小数点以下は、高分解能を要求しなければ選択は自由である。 |
定義されたフィールド |
|
いくつかのフィールドでは、予め定義された定数やアルファベット文字を含めることが明記されている。このようなフィールドは本規格では1文字以上の有効な文字で表される。
本規格内でフィールドの型を表示するために用いられる以下の文字は、使用が許可されている文字のリストから外れている。
“A”, “a”, “c”, “hh”, “hhmmss.ss”, “llll.ll”, “x”, “yyyyy.yy” |
|
数値フィールド
フィールドの型 |
記号 |
説明 |
変数 |
x.x |
長さ一定の整数と浮動小数点数のフィールド。
前方に0が続く、あるいは後方に0が続いてもよい。 完全な分解能を要求しない場合は、小数点及びそれに続く小数の使用は任意である。
(例:73.10=73.1=073.1=73) |
固定長16進数 フィールド |
hh- |
長さ一定の16進数のみ。左が上位ビット。 |
|
情報フィールド
フィールドの型 |
記号 |
説明 |
可変長テキストの フィールド |
c--c |
長さを特定しない有効文字のフィールド |
固定長の アルファベットの フィールド |
aa- |
長さ一定のアルファベット文字の列。
(大文字、小文字、記号など) |
固定長の数字 フィールド |
xx- |
長さ一定の数字の列 |
固定長のテキスト フィールド |
cc- |
長さ一定の有効文字の列 |
|
注意1 スペースは可変長のテキストフィールドでのみ用いられる。
注意2 マイナス記号(−:16進数の2D)は、数値がマイナスの場合、フィールドの先頭に置かれる。固定長のフィールドで使われる場合は、フィールドのサイズが1文字分増える。数値が正の場合は、この記号は省略される。
注意3 計測値を示すフィールドで使用する単位は、特別な単位が用いられる場合を除き、表6・3に掲げられている記号を用いる。
(C)チェックサムフィールド
チェックサムフィールドはすべてのセンテンスで使用され、最後のフィールドとして送信される。チェックサム区切り記号"*"に続く。チェックサムとはセンテンス内の全ての文字に対する8ビットEX-OR(スタートビット及びストップビットを除く。)である。センテンス内の“,”文字は含むが、“$”文字と“*”文字は除かれる。
(参考:EX-ORとはExclusive ORの略語、例えば入力として、入力信号Aと入力信号Bがあったとき、A=1又はB=1の時のみ、出力Cが1になる。それ以外のA、Bの両方が1の時等は全て0となる。)
結果の上位4ビットと下位4ビットの16進数の値を伝送のために2文字のASCII文字に変換する。上位4ビットが最初に送信される。
チェックサムフィールドの例、
$GPGLL,5057.970,N,00146.110,E,142451,A*27
$GPVTG,089.0,T,,,15.2,N,,*7F
|